日本作物学会紀事
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穂切除がコムギとオオムギの乾物の生産と分配に及ぼす影響
小出 可能石原 邦
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1992 年 61 巻 4 号 p. 651-658

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抄録
シンクが制限された時に示す作物の反応を明かにするために, 穂切除が登熟期間中の乾物生産と乾物分配, および止葉中の非構造性炭水化物含量の変化に及ぼす影響を花序が異なるコムギとオオムギについて調べた. 穂切除処理後から収穫期まで, 両作物とも対照区と穂切除区の間の全乾物重に違いは無かった. しかし, 乾物分配には大きな違いが有り, 穂切除によって老化に伴う根重の減少が小さくなり, 葉身, 葉鞘, 稈と遅発生分げつ重が増加した. 穂切除区の稈+葉鞘重はコムギでは登熟後期まで減少しなかったのに対して, オオムギでは対照区と同様に減少した. 遅発生分げつ重の増加はコムギに比べてオオムギの方が大きかった. 葉身や葉鞘の乾物重の増加はコムギでは上位葉でより大きかったがオオムギではこうした葉位間差は無かった. 穂切除による止葉の乾物重の増加は両種とも主としてシュークロース含量の増加によるもので, コムギの方がオオムギよりも大きかった. 一方, グルコースやフルクトースの増加はオオムギの方がコムギよリも大きくその開始も早かった.
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