日本作物学会紀事
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穂切除が登熱期におけるコムギの止葉の光合成に及ぼす影響
小出 可能石原 邦
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1992 年 61 巻 4 号 p. 659-667

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抄録
シンクが制限された時に示す作物の反応を明かにするために, 登熟期のコムギを用いて穂切除が止葉の光合成に及ぼす影響を調べた. 穂切除11日後までは対照区と穂切除区の間のCO2交換速度に有意差は無かったが, 11日以後は穂切除区のCO2交換速度は対照区より高かった. 両区の間のCO2交換速度に違いが無かった穂切除11日後までの拡散伝導度, 見かけの量子収量, 見かけのCO2固定効率とクロロフィル含量には両区の間に違いが無かった. このことから, この時期には両区の間に気孔開度, 光化学系と炭酸固定系の活性に違いが無いことが推察された. 一方, 穂切除区のCO2交換速度が高かった11日以後の両区の間の拡散伝導度, 見かけの量子収量とクロロフィル含量には違いが無かったが, 見かけのCO2固定効率とリブロース-1 / 5-ニリン酸カルボキシラーゼ含量は穂切除区が対照区より高かった. このことから, この時期の穂切除区のCO2交換速度が高かったのは炭酸固定系の活性が高かったためで, 穂切除によって止葉の老化が遅れたことがわかった.
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