日本作物学会紀事
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早期栽培地帯における水稲障害冷害に関する研究 : 第3報 倒伏軽減剤による危険期深水灌漑湛水深の低下
渡部 富男
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1993 年 62 巻 1 号 p. 53-59

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抄録

深水灌漑法の必要湛水深を浅くし, その実用性を高めるため, 倒伏軽減剤 (イナベンフィド, パクロブトラゾール, ウニコナゾール) 及びいもち病防除剤IBP処理が幼穂地上高に与える影響を検討すると共に, 障害不稔に及ぼす影響を検討した. 1. 冷温感受性期の幼穂地上高はいずれの薬剤処理でも短縮され, その短縮程度はイナベンフィド粒剤>パクロブトラゾール粒剤>IBP粒剤>ウニコナゾール粒剤の順であった. このような幼穂地上高の短縮は, いずれも穂首節間とその直下の節間長の短縮によった. 2. 幼穂地上高の短縮により, 稚苗移植の初星は, 冷温感受性期にあたる穎花の80%を深水灌漑法で保温するのに必要な湛水深は, 無処理区の22.5cmに比べ, 最も短縮の大きいイナベンフィド粒剤で約6cm, パクロブトラゾール粒剤で約4.5cm, IBP粒剤で約3.5cm, ウニコナゾール粒剤で約3cm浅くすることが可能であった. 3. ポット栽培したイネを用いての15℃一定, 4日間冷温処理による障害不稔発生に与える影響はIBP粒剤を除き認められなかった.

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