日本作物学会紀事
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イネにおける個体当り穂重と積算水ストレスとの関係
津田 誠山根 祐治高見 晋一
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1993 年 62 巻 1 号 p. 60-65

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抄録
幼穂発育初期のイネに水ストレスを与えると個体当り穂重は, 積算水ストレス (水ストレスの強さと期間の総合評価値) に比例して低下する. 一方, 水ストレスによる減収量は, 水ストレスのない条件下での収量が大きいほど大である. 従って, 積算水ストレスに伴う個体当り穂重の低下も, 湛水条件下の個体当り穂重が大きいほど大であると考えられた. そこでこのことを確かめるために, 大きさの異なるポットに施肥量を変えて水稲 (コシヒカリ) および陸稲 (戦捷) を栽培し, ニ次枝梗分化期と出穂開花期に土壌水分ストレスを与えた. その結果, 乾燥経過の違いにも関わらず, 出穂開花期の水ストレスによる個体当り穂重の低下は, 幼穂発育初期と同様積算水ストレスに比例的であった. また, この比例係数は湛水区の個体当り穂重に依存することが見いだされた. すなわち, 水ストレスを与えた植物体の個体当り穂重G (g plant-1) と積算水ストレスCWS (MPa・day) との間には, 湛水条件下での個体当り穂重をG0 (g plant-1), 水ストレス感受性をK (MPa-1day-1) とすれば, 次の関係が成立することが分かった. G=G0 (1-K・CWS) Kは一般には栽培法と品種によって変わるとみられるが, 本実験の範囲では前者の影響が大きかった.
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