日本作物学会紀事
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山陰地域の冬期強風による茶樹の葉身被害の発生 : 第1報 圃場で観察される葉身水ポテンシャルの低下と被害発生との関係
福田 晟山谷 聡小葉田 亨今木 正
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1993 年 62 巻 2 号 p. 188-192

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抄録

冬期山陰地方の強風下で発生する葉枯れ, 落葉などの被害がどの様な理由で発生するのかを水分生理学的観点から明らかにしようとした. 冬期地上に少残雪, 強風が吹いた日 (気温0℃~-4.4℃, 風速4~7ms-1) は, 葉身水ポテンシャル (ΨL) が夜間から翌日の日中にかけて-1.2~-2.3MPaと著しく低下し, 翌日, 葉身の枯死が生じた. この気象条件は茶樹に凍害が生じるより気温が高い. 一方, 冬期被害が出ない日, あるいは夏期でもΨLは-1.0~-1.1MPaまでしか低下しなかった. 一方, 圃場と同齢の葉身を加圧して, 脱水圧と葉身の枯死との関係を見ると, 冬期の葉で-1.0MPa, 夏期の葉で-1.8MPaで枯れはじめ, 冬期の葉はわずかな脱水でも枯れやすいことがわかった. 以上から, 寒風により被害の発生する日は, 低温, 強風により茶樹の水分欠乏状態が著しくなること, さらに冬期の葉はわずかな脱水によっても枯れやすいために被害が促進されることが推定された.

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