日本作物学会紀事
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イネにおける止葉節からの発根速度と穂ばらみ期耐冷性との関係
西村 実
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1993 年 62 巻 2 号 p. 236-241

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抄録
寒地の水稲育種における穂ばらみ期耐冷性簡易検定法を開発することを目的として, 圃場で栽培したイネの穂を止葉節をつけたまま抜きとり, 水道水を入れた容器中で培養し, 止葉節からの発根速度と穂ばらみ期耐冷性との関係に及ぼす諸条件ならびにその遺伝について検討した. 品種間差を明確にするためには培養水温は25ないし30℃程度が適当であり, 培養には生育時期の揃え易い出穂直後が適当と考えられた. 出穂前に稲体に冷水掛け流し処理を行い低温ストレスを与えると, 発根速度が明らかに低下した. 73の北海道品種・系統を用いて発根速度を調べたところ, 穂ばらみ期耐冷性の強さと発根のし易さとの間に明らかに正の相関が認められた. しかし, いくつかの品種ではこの関係が認められなかった. 穂ばらみ期耐冷性程度が異なる2品種の交雑後代を用いて発根速度と穂ばらみ期耐冷性との関係について検討した. 供試世代がF2, F3およびF4の初期世代であり, 固定度が低いため, 両者の関係は明瞭ではなかった. 以上のように止葉節からの発根速度は穂ばらみ期耐冷性と関係が深いことが示されたが, 今後は両者の関係について遺伝的および生理的研究を進める必要がある.
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