抄録
コムギにおける分げつの生育過程は, 分げつの出現とその後の生育とに分けて取り扱う必要があるが, 本研究においては, 前者の分げつの出現に着目して検討した. 3実験区 (ビニールハウス内に無灌水のD区, 灌水のW区および露地のF区) で生育させたコムギ品種農林61号を経時的に採取し, 葉, 根の生育と関連づけながら分げつの出現を観察し, 相互の関係を解析した. 分げつの出現は節間伸長の開始とともに停止し, 環境条件は, 分げつの出現可能な期間の長さ, および高位・高次分げつの出現率に影響を及ぼした. 各シュートにおける葉齢の進行と1次根数の増加は直線的な関係を示した. ただし, 分げつは主茎より, 高位・高次の分げつは低位・低次の分げつより, 出根の開始はやや早かったが, 1葉齢当たりの出根数の増加は少なかった. 一方, 各実験区についてみると, 各シュートのレベルでは, 上述のように出根のタイミングと出根数に差異が認められたが, 個体のレベルでは, シュートのレベルで認められた差異が各実験区における分げつ数の差異によって相殺され, 実験区を通じて葉齢の増加と1次根数の増加が極めて一致した傾向を示した.