水稲の耐倒伏性と密接に関係している稈の断面係数および曲げ応力の異なる3品種 (コシヒカリ, 台中189号, 密陽23号) を用いて, 地上部の環境条件を変化させたとき, 倒伏程度, 倒伏指数と稈基部の葉鞘付挫折時モーメントに関係する断面係数, 曲げ応力, 稈の細胞壁構成成分などがどのように変化するのか, この要因が品種によって異なるかどうか検討した. 地上部の環境条件を変化させる処理として, 最高分げつ期に南側数列を刈り取ることによって, 個体群内部の水稲を個体群周辺部にさらす処理区 (周辺区), 最高分げつ期から出穂期まで遮光する処理区 (遮光区) を設けた. 3品種の倒伏程度, 倒伏指数は, 対照区に比べて周辺区で小さく遮光区で大きくなった. この変化には稈基部の葉鞘付挫折時モーメントの変化が密接に関係し, 葉鞘付挫折時モーメントの主要構成要素である稈の挫折時モーメントは, 対照区に比べて周辺区で大きく遮光区で小さかった. その変化の程度には品種間差異があり, 稈の挫折時モーメントの小さいコシヒカリは周辺区で変化が大きく, 稈の挫折時モーメントの大きい台中189号, 密陽23号は遮光区で変化が大きかった. さらに, 稈の挫折時モーメントを断面係数と曲げ応力と分けて検討した. その結果, 断面係数が変化したのは密陽23号の遮光区のみで, 密陽23号の周辺区およびコシヒカリ, 台中189号の両区の稈の挫折時モーメントは, 曲げ応力によって変化したことがわかった. 3品種とも, 曲げ応力は細胞壁を構成するグルコース, キシロース, リグニン密度と密接に関係したが, この関係は品種によって異なった. すなわち, 断面係数の大きい密陽23号に比べて台中189号, コシヒカリではキシロース, リグニン密度の増加に伴う曲げ応力の増加程度は大きく, 台中189号は最も曲げ応力の増加割合が大きかった.
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