日本作物学会紀事
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62 巻, 4 号
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  • 山本 良孝, 川口 祐男, 高橋 渉
    1993 年62 巻4 号 p. 485-490
    発行日: 1993/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水稲「コシヒカリ」を供試し, 気温による水稲の発育段階予測法 (DVS方式) が作期及び栽培地域の異なる条件で, どのような適合性を示すかについて検討した. 4月20日から6月1日までの移植においてはDVS方式が良く適合し, この期間の標準誤差は幼穂形成期が1.21日, 出穂期が1.48日, 成熟期が1.45日であった. しかし, 6月15日の移植においては推定値が実測値より遅くなり, 生育が進むにつれて拡大した. この理由としては日長の影響が大きく, 短日条件が発育段階を早めたものと考えられた. 富山県内における入善町, 立山町, 砺波市の3カ所において, 近隣のアメダスの日平均気温をもとにDVS方式の適合性を検討したところ, 標準誤差は幼穂形成期が2.76日, 出穂期が2.33日, 成熟期が2.55日と高い適合性を示し, 県内においてもDVS方式により水稲の発育段階を予測することが可能と考えられた.
  • 寺井 謙次
    1993 年62 巻4 号 p. 491-495
    発行日: 1993/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    秋田県内37ケ所から収集したアズキ (Vigna angularis) の在来品種シロアズキを用いて, 分枝性の系統間変異と収量性および収量構成要素との関係を検討し, 次の結果を得た. 1) 個体当たり子実重, 総節数, 総莢数, 総粒数は系統間で有意な差を示し, その差は主茎よりも分枝の系統間差に強く依存した. 分枝数も系統間で有意な差を示した. 2) 個体当たり子実重と主茎・分枝別の収量構成要素との関係をみると, 節当り莢数と一莢粒数は主茎, 分枝ともに個体当り子実重と密接な関係を示したが, 百粒重は関係が小さかった. 3) 主茎・分枝別の収量構成要素と分枝数の関係において, 分枝の多い系統ほど主茎百粒重が小さくなる傾向がみられたが, 他の要素では相関関係がみられなかった. 4) 収量構成要素の値の分枝/主茎比と分枝数との関係では, 分枝の多い系統ほど百粒数での比の値が大きくなる傾向が示された. 5) 以上の結果から, シロアズキの在来系統群においては, 分枝性が収量構成要素に直接働きかけて増収効果をもたらす方向へ系統分化が進んでいるとは考えられないと推論した.
  • 馬淵 敏夫
    1993 年62 巻4 号 p. 496-501
    発行日: 1993/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    登熟期に湛水処理, 倒伏した二条オオムギ「アサヒ19号」,「成城17号」,「さつき二条」の種子を用い休眠覚醒を検討した. 湛水処理は, 登熟期に4回行い, 成熟期に刈取った. 倒伏の有無について, 対照区のなかで倒伏程度4以上のところから, 対照区の成熟期と同じ日に刈取った. 湛水処理, 倒伏した植物よりの休眠覚醒は, 種子の粒厚が (2.8mm以上)>(2.5≦~<2.6mm)>(2.2≦~2.4mm) の順に早かった. また, 一穂の着粒位置ごとの種子では, 休眠覚醒程度における発芽率は, 1000粒重と高い相関を示した. また, 湛水処理が芒の光合成におよぼす影響を,「さつき二条」と「四系8473」を用いオートラジオグラフィーによって調査した結果, 一穂の上部において光合成能力の低下を示していた. したがって, 湛水処理, 倒伏によって休眠覚醒の早い大粒種子が減少することにより, 間接的に休眠覚醒が遅れるものと思われる.
  • 鄭 紹輝, 陳 日斗, 井之上 準
    1993 年62 巻4 号 p. 502-508
    発行日: 1993/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    下胚軸伸長型のマメ科8種作物を供試して, 25℃暗黒条件下で芽ばえが長さ3cmに達した時に, 覆土を完全に除去し, 芽ばえの頂端部 (hookの頂部) から2mm間隔に墨で印を付け, 再び覆土した後, 一部の芽ばえには, その頂端部に軽く接触するように「ストッパー」で荷重をかけた. 荷重処理開始48時間後に, 芽ばえの伸長抑制および下胚軸肥大の程度を調査するとともに, 芽ばえの頂端部および最も肥大した部位の縦断および横断切片を作成し, 皮層, 維管束および髄組織の厚さ, および各組織の柔細胞の大きさを測定した. その結果, 無処理区に比較して, 芽ばえの伸長抑制の程度は作物によってやや異なったが, 頂端部から4mmまでの部位で伸長抑制が最も大きく, 基部に近い部位ほど小さかった. 一方, 伸長が抑制された部位では肥大が起こったが, 概して, その程度は伸長抑制の程度が大きい作物・部位ほど大きいようであった. なお, 縦断および横断切片についての調査結果から, 荷重処理によって引き起こされた芽ばえの伸長抑制および肥大は, 下胚軸を構成する皮層および髄組織の細胞分裂が影響を受けたことによるのではなく, 個々の細胞の伸長抑制および肥大によるものであった.
  • 斎藤 邦行, 下田 博之, 石原 邦
    1993 年62 巻4 号 p. 509-517
    発行日: 1993/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    これまで解析を行ってきた多収性品種の特性の比較の結果を参考にして, 今日広く栽培される新品種と大正・昭和20年代に栽培されていた旧品種の収量, 収穫指数, 乾物生産過程を比較した. 新品種の収量は561~606g/m2で, 旧品種の収量 (460~501g/m2) に比べ20~25%多く, この相違の要因は主として出穂期以降の乾物生産の違いにあり, その結果新品種の収穫指数 (41~51%) は, 旧品種 (36~45%) に比べ高かった. シンク容量は新・旧品種間で大きな相違はなく, 新品種で登熱後期に同化産物が稈に多く再蓄積されているということは, 新品種では登熟期の高い物質生産力に比べて, 相対的にシンク容量が不足していることを示している. 新・旧品種における出穂期以降の乾物生産の相違には, 主として登熟期間中の個体群吸光係数が小さいこと, および葉身の老化に伴う光合成速度の減少程度が新品種で小さいことが関係していた. これらの新・旧品種に比較して, 南京11号, 密陽23号はシンク容量が著しく大きく, 収量は新品種に比べ南京11号は2~6%, 密陽23号は12~18%多かった. 以上の結果, 新品種では高い乾物生産力に比較してシンク容量が小さく, 稈に同化産物が再蓄積することにより, 収穫指数は低下し始めていることが明らかになった. シンク容量の拡大と乾物生産力の強化を通じて収量・収穫指数はさらに高まることを推察した.
  • 李 建民, 山崎 耕宇
    1993 年62 巻4 号 p. 518-524
    発行日: 1993/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    多数の分げつを形成するコムギにおいては, 個体当たりの分げつ数が収量に大きく影響している. 本研究は, 個体, 主茎の形態と個体当たりの分げつ数との関係, およびこれに関わる環境条件の影響を検討した. 3実験区 (ビニールハウス内の無灌水区, 灌水区および露地区) で生育させたコムギ品種農林61号を登熟期に採取して, 分げつ数を調査するとともに穂, 茎, 出根節および1次根に関する11個の形態的な形質を測定し, 主成分分析法で個体, 主茎の形態を評価した. その結果, 個体の形態は「大きさ」の特徴で, 主茎の形態は「大きさ」,「地上部と地下部の関係」および「茎軸の形状」の3つの特徴で要約・代表された. また個体の「大きさ」は個体当たりの分げつ数によって一義的に規定され, 個体当たりの分げつ数は主茎の「大きさ」と関連していた. さらに, 環境条件は主茎の形態および分げつ形成の両者への関与を通じて個体当たりの分げつ数に影響を及ぼした.
  • 大川 泰一郎, 富所 康広, 石原 邦
    1993 年62 巻4 号 p. 525-533
    発行日: 1993/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水稲の耐倒伏性と密接に関係している稈の断面係数および曲げ応力の異なる3品種 (コシヒカリ, 台中189号, 密陽23号) を用いて, 地上部の環境条件を変化させたとき, 倒伏程度, 倒伏指数と稈基部の葉鞘付挫折時モーメントに関係する断面係数, 曲げ応力, 稈の細胞壁構成成分などがどのように変化するのか, この要因が品種によって異なるかどうか検討した. 地上部の環境条件を変化させる処理として, 最高分げつ期に南側数列を刈り取ることによって, 個体群内部の水稲を個体群周辺部にさらす処理区 (周辺区), 最高分げつ期から出穂期まで遮光する処理区 (遮光区) を設けた. 3品種の倒伏程度, 倒伏指数は, 対照区に比べて周辺区で小さく遮光区で大きくなった. この変化には稈基部の葉鞘付挫折時モーメントの変化が密接に関係し, 葉鞘付挫折時モーメントの主要構成要素である稈の挫折時モーメントは, 対照区に比べて周辺区で大きく遮光区で小さかった. その変化の程度には品種間差異があり, 稈の挫折時モーメントの小さいコシヒカリは周辺区で変化が大きく, 稈の挫折時モーメントの大きい台中189号, 密陽23号は遮光区で変化が大きかった. さらに, 稈の挫折時モーメントを断面係数と曲げ応力と分けて検討した. その結果, 断面係数が変化したのは密陽23号の遮光区のみで, 密陽23号の周辺区およびコシヒカリ, 台中189号の両区の稈の挫折時モーメントは, 曲げ応力によって変化したことがわかった. 3品種とも, 曲げ応力は細胞壁を構成するグルコース, キシロース, リグニン密度と密接に関係したが, この関係は品種によって異なった. すなわち, 断面係数の大きい密陽23号に比べて台中189号, コシヒカリではキシロース, リグニン密度の増加に伴う曲げ応力の増加程度は大きく, 台中189号は最も曲げ応力の増加割合が大きかった.
  • 李 建民, 原田 二郎, 山崎 耕宇
    1993 年62 巻4 号 p. 534-539
    発行日: 1993/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    コムギにおける分げつの生育過程は, 分げつの出現とその後の生育とに分けて取り扱う必要があるが, 本研究においては, 前者の分げつの出現に着目して検討した. 3実験区 (ビニールハウス内に無灌水のD区, 灌水のW区および露地のF区) で生育させたコムギ品種農林61号を経時的に採取し, 葉, 根の生育と関連づけながら分げつの出現を観察し, 相互の関係を解析した. 分げつの出現は節間伸長の開始とともに停止し, 環境条件は, 分げつの出現可能な期間の長さ, および高位・高次分げつの出現率に影響を及ぼした. 各シュートにおける葉齢の進行と1次根数の増加は直線的な関係を示した. ただし, 分げつは主茎より, 高位・高次の分げつは低位・低次の分げつより, 出根の開始はやや早かったが, 1葉齢当たりの出根数の増加は少なかった. 一方, 各実験区についてみると, 各シュートのレベルでは, 上述のように出根のタイミングと出根数に差異が認められたが, 個体のレベルでは, シュートのレベルで認められた差異が各実験区における分げつ数の差異によって相殺され, 実験区を通じて葉齢の増加と1次根数の増加が極めて一致した傾向を示した.
  • 玉置 雅彦, 田代 亨, 石川 雅士, 江幡 守衛
    1993 年62 巻4 号 p. 540-546
    発行日: 1993/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    短期および長期貯蔵が米の食味に及ぼす影響を調べた. 米飯のテクスチャーは, 90日間高温かつ高含水率で貯蔵すると硬く粘りが乏しくなった. 過乾燥条件下で貯蔵した米のテクスチャーは貯蔵初期においてのみ劣り, 通常の水分条件下で貯蔵した米よりも貯蔵にともない優れた. 6年間貯蔵した米の食味も分析した. テクスチャーの変化の大部分は最初の1, 2年以内に起こり, その後はほとんど変化しなかった. 難溶性タンパク質およびアミロース含有率には有意な変化は無かった. しかし結合脂質含有率は増加した. この結合脂質の増加が, 貯蔵中の米飯テクスチャーの低下と関係している要因かもしれない. 白米と米飯付着のグルタミン酸の割合の減少と同様に, 白米中のグルタミン酸含量も減少した. 炊飯液中のpHも低下した. これらは米の味の低下と関係しているようであった.
  • 和田 義春, 三浦 邦夫, 渡辺 和之
    1993 年62 巻4 号 p. 547-553
    発行日: 1993/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水稲コシヒカリを供試し, 開花期に葉身および枝梗の部分切除を行って実験的にソース/シンク比を変化させ, 登熟期の止葉の物質生産能力および老化に及ぼす影響を調査した. 1籾当りの開花期葉面積で評価したソース/シンク比は, 無処理区で0.75であり, 処理により0.24から1.53まで変化した. 開花後12日目の止葉の光合成速度には処理間で有意な差はみられなかった. 止葉のクロロフィル含量とリブロース1, 5-2リン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ (ルビスコ) 含量は, シンクを小とした区で高く保たれた. 開花後3週目の各処理区の止葉のクロロフィル含量およびルビスコ含量とソース/シンク比との間には正の相関関係 (P<0.01) がみられた. したがって, ソース/シンク比が小, すなわち相対的にシンクが大きいほど止葉の老化が促進されるものと判断された. 一方, 止葉中のショ糖合成に関与する酵素活性は, ソース/シンク比の違いにより有意な差を生じなかった. 登熟期のショ糖およびデンプン含量の消長は, 葉鞘+稈では処理の影響が大であったが, 止葉への影響は比較的小さかった. 一方, 止葉の窒素含量は, シンクが小の区ほど高く保たれた. 以上のことから, ソース/シンク比の違いによる止葉の老化の相違は, 炭水化物含量の変化に基づくものではなく, 窒素の動態の変化によるものと判断された. すなわち, 相対的にシンクを大とすると, ソースである葉身からシンクである穂への窒素の再移動が大となりクロロフィル含量, ルビスコ含量の低下が促進されると考えられた.
  • 高橋 肇, 中世古 公男
    1993 年62 巻4 号 p. 554-559
    発行日: 1993/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    一般に, 作物群落では, 小さく立ち型の葉をもち, 光合成有効放射 (PAR) を内部まで深く透過させるような構造をもつ草型が理想型であると考えられてきた. しかしながら, コムギにおいては必ずしもすべての多収品種がこのような草型をもつとは限らないようである. 本試験では, 育成地が異なり, 特に穂および止葉の形態が大きく異なる3品種 (九州で育成された半矮性・早生の農林61号, 北海道で育成された半矮性・早生のハルユタカおよびドイツで育成された長稈・晩生のSelpek) を供試し, 早播き (4月13日播種) および晩播き (5月10日播種) することで圃場条件において異なる6条件での群落構造およびPARの透過分布を調査した (400個体・m-2). 穂および下位葉の表面積は3品種とも早播区が晩播区に比べて大きく, 止葉の表面積はこれとは逆に晩播区が早播区に比べて大きかった. また, 穂の表面積は芒の長いハルユタカが芒の短い農林61号および芒のないSelpekに比べて大きく, 穂の下でのPAR透過率はハルユタカで低かった. 一方, 止葉の表面積はハルユタカとSelpekが農林61号に比べて大きく, 止葉の下でのPAR透過率はハルユタカとSelpekで低かったが, バイオマス生産はハルユタカとSelpekで高かった. 下位葉の下でのPAR透過率は晩播区で高く, 特に農林61号とSelpekで高かった. さらに穂, 止葉および下位葉の表面積とこれらの器官の位置する層でのPAR透過率との間には有意な負の相関関係が認められた. 回帰式による分析の結果, 表面積による遮光の効果は, 葉身がほぼ水平に傾いていた止葉が立ち型の下位葉よりも高かった. また, 稈の表面積による遮光は止葉の層で27%, 下位葉の層で51%であると推定した.
  • 高橋 肇, 土橋 直之, 中世古 公男
    1993 年62 巻4 号 p. 560-564
    発行日: 1993/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    春播コムギの登熟機構を生理的・形態的に解析することを目的として, 解析の基礎となる登熟相の分類を試みた. 本試験では, 品種ハルユタカの群落について連日, 子実および稈の乾物重と糖含有率を測定して, これらの動向から登熟期間を以下に示す4つの登熟相に分類した. (1) 登熟初期 (開花期から稈伸長停止期まで) : 同化産物は主として稈の伸長に利用され, 子実重はゆるやかに増加する. (2) 登熟前期 (稈伸長停止期から乳熟期まで) : 稈の伸長が停止し, 同化産物は子実成長と稈での一時貯蔵とに利用される. (3) 登熟後期 (乳熟期から光合成停止期まで) : 同化産物はすべて子実生長に利用され, 稈の一時貯蔵物質も補足的に子実へと転流する. 登熟末期 (光合成停止期から成熟期まで) : 新たな同化産物が生産されず, 子実は稈からの転流物質によってのみ生長する. なお, 登熟前期および登熟後期では, 稈の貯蔵養分の増加速度と日射量との間に正の相関関係が認められ, 子実重は日射量の変動にかかわらず開花後日数の経過にともない直線的に増加した.
  • 小柳 敦史, 中元 朋実, 和田 道宏
    1993 年62 巻4 号 p. 565-570
    発行日: 1993/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    土壌中の根の分布は作物の環境ストレス耐性に影響を与える要因の一つであると考えられる. そこで, コムギの根の垂直分布に関する品種特性を種子根の伸長角度を用いて簡易に評価できるかどうか調べた. 日本のコムギ品種には根の伸長角度に関して育成地による地理的変異がみられることがわかっている. そこで, 南北日本で育成された計12品種の秋播きコムギを用いてポットおよび圃場試験を行った. 1/5,000aのワグネルポットにバスケットを入れ, 土をつめて播種し, 20℃で7日間生育させて種子根の伸長角度 (根軸が水平面となす角度) を調べた. つぎに, 同じ品種を畑に栽培し, 節間伸長期にあたる4月にモノリス法で深さ30cmまでの根を採取して5cmごとの土層に分けて根を洗い出し, 各土層内の根長をルートスキャナーを用いて測定した. その結果, 上層10cmに存在する根の割合は, ポットで調べた幼植物の根の伸長角度と負の相関関係にあり, 深さ10cm以下の下層に存在する根の割合は伸長角度と正の相関関係にあった. さらに, 根の平均的な深さを示すRDI (根の深さ指数) を算出したところ, 伸長角度と1%水準で有意な正の相関関係にあった. これらのことから, 種子根の伸長角度は根の垂直分布に関する品種特性を推定するための一つの指標として用いることができると考えられた.
  • 桃木 芳枝, 桃木 徳博
    1993 年62 巻4 号 p. 571-576
    発行日: 1993/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    マメ科植物サイラトロ (Macroptilium atropurpureum) におけるアセチルコリン (ACh) およびアセチルコリン分解酵素 (AChE) の存在については, すでに報告した. 本報では, サイラトロの葉柄, 茎, 根そして第1葉枕, 第2葉枕におけるAChEの局在性を組織化学的方法によって証明した. AChEは, 葉柄, 茎および根には検出されず, 第1および第2葉枕のみに検出された. 葉枕でのAChEの反応は, 維管束の中心柱を囲む内皮細胞に現れ, とくに, 第1葉枕における硫化銅の暗褐色は強く呈色し, 中心柱を囲む内皮細胞全体に認められた. 一方, 第2葉枕では, 中心柱の周囲に存在する内皮細胞の一部に呈色反応を認めた. これらの結果は, 第1および第2葉枕の特定組織にAChおよびAChEの局在を明かにし, さらに, 第1葉枕が主としてAChの作用にかかわっていることを裏付けたものである.
  • 岡野 邦夫, 河野 恭広
    1993 年62 巻4 号 p. 577-584
    発行日: 1993/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    多数の穎果から構成される水稲の穂の登熟過程を解明するために, 水耕法を用いて生殖生長各時期に15N標識の硫安を与え, 完熟期における15Nの穂上分布と粒内分布を調べた. 出穂期前に与えた15Nは全ての穎果に均等に分布したが, 出穂期から乳熟期に与えた15Nは穂の上部に位置する発育の早い穎果に, 一方登熟後期に与えた15Nは穂の下部に位置する発育の遅い穎果に, 主として移行した. すなわち活発に窒素集積を行っている穎果の位置は, 登熟の進行につれて穂の上部から下部へと順次移動した. 籾殻への15Nの活発な取り込みは乳熟期まで続いた. 胚は胚乳に比べると登熟後期における15N取り込み活性の低下が早く, 胚の形成は胚乳に先行することを示した. 胚乳の内層部は外層部より15Nの取り込み活性が早く低下することから, 胚乳でのタンパク質の蓄積は中心部から始まり, 順次周辺部へ及ぶものと考えられた. 以上の結果に基づく考察から, 水稲の登熟向上にはソースシンク比の増大だけでは不十分であり, 弱勢果が物質集積を続けている登熟後期まで, 葉や根の生理活性を高く維持することが非常に重要であると結論された.
  • 鳥越 洋一, 井上 隆弘, 天野 哲郎, 小川 奎, 福原 道一
    1993 年62 巻4 号 p. 585-594
    発行日: 1993/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    本研究はコスモス衛星写真 (Sojuzkarta KFA 1000) を用いて黒ボク土の特性分類を行い, それを基にキャベツ根こぶ病発生の特徴を明らかにすることを目的とした. 対象地域は群馬県嬬恋村全域とした. 使用したフィルム (番号 : 25253) は1988年6月7日に撮影されたものであり, 赤 (570-680nm) と近赤外 (680-810nm) に感光する特徴をもつ. ドラムスキャナーを用いて, デジタル画像 (地上分解能約6m) を作成して解析に供試した. 対象地域に分布する5土壌統群は近赤外の反射強度によって明瞭に区分できた. このことは土色, 土壌有機物含有率, ならびに水分保持力等の違いによるものと考えられた. 単一の土壌統群において赤の反射強度に大きな変異が認められた. これは土壌水分状態の違いによるものと推察された. このようにして, 土壌統群と排水性の違いを把握することができた. 次に過去6年の発病記録を基に作成した発生地図と土壌特性との関係を検討したところ, 本病の発生は土壌統群間で異なり, 特に淡色黒ボク土ではほとんど発生を認めることができなかった. また本病の発生は排水性の悪いところで著しいことが明らかになった. また, 多雨年と平年との発生を比較したところ, 本病は多雨年に発生が多くなることを認めた. これらの発生特徴は既往の成果によく一致することから, コスモス衛星写真は黒ボク土の特性把握に有効であり, 根こぶ病の発生危険箇所の把握に有用であることが明らかにされた.
  • 菅 洋, 岩村 俶
    1993 年62 巻4 号 p. 595-600
    発行日: 1993/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    サイトカイニン (2iP) はオオムギの分げつ発生を促進し, アンチ・サイトカイニン (CCET) は分げつ発生を抑制した. 同様に, オーキシン (NAA) は分げつ発生を抑制し, アンチ・オーキシン (TIBA) は分げつ発生を促進した. TIBAや2iPによる分げつ発生の促進は, 主稈葉の展開と同調している, 各分げつの発生の平行関係が変わり, 第2次及び第3次分げつを含めて, 分げつ発生それ自身が促進される結果, 無処理の標準区でまだ発生していないような高次の分げつが, 発生することによっている. 一方, アンチ・サイトカイニンのCCETとオーキシンのNAAは, 無処理標準の植物の分げつ発生から考えて, 理論的に発生が予測される, 分げつの発生が抑制され, あるいは遅延した結果, 分げつ数が減少した.
  • 今井 勝, 川名 健雄, 島辺 清志, 院多本 華夫, 田中 健一
    1993 年62 巻4 号 p. 601-608
    発行日: 1993/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    日本の温帯気候下における食用カンナの生産力の基礎を明らかにしようとして3年間にわたって4月下旬から11月上・中旬に栽培を行った. 植物体地上部の生長は7月中旬から8月下旬にかけての高温天候下で急激に促進され, 最終的には草高2.7~2.8m, 主茎葉数20~22, 茎数9~19, 新根茎数29~35に達した. 食用カンナは8月下旬から11月上旬にかけて2カ月余りも高い葉面積指数 (約9以上, 最大値は11.5~12.7) を維持し, これが乾物生産に大きく寄与しているものと考えられた. 新たに形成された根茎への乾物の蓄積は8月中旬から始まり, 降霜のあった11月の最終サンプリングまで継続した. 収穫時の全乾物重は2578~3968gm-2あったが根茎乾物重は954~1644gm-2であったので, 収穫指数は0.37~0.43と低かった. 個体群生長速度の平均は12.7~19.3gm-2d-1であったが, 9月中旬から10月上旬に最大値35.3~43.6gm-2d-1が得られた (3年の内2年で). 以上の結果に基づき, 本作物の潜在生産力に関する論議を行った.
  • 萩原 素之, 井村 光夫
    1993 年62 巻4 号 p. 609-613
    発行日: 1993/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水稲の湛水土壌中直播において土壌還元は出芽・苗立ちを阻害することが知られているが, その原因は解明されていない. 出芽・苗立ちの阻害は湛水土壌における還元生成物の害作用によるものではないかと考え, 代表的な還元生成物 (硫化物, 酢酸, ニ価鉄) が出芽・苗立ちに与える影響を調査した. これらの還元生成物を湛水土壌に添加して水稲種子を土壌中に播種したところ, 添加量が多い時は, いずれの還元生成物も出芽・苗立ちに対して阻害的であることがわかった. したがって, 還元生成物は出芽・苗立ちの直接的阻害要因の1つと考えられた. 供試した還元生成物の中では二価鉄の阻害作用が比較的大きいようであった. しかし, 過酸化石灰による種子被覆は還元生成物による出芽・苗立ち阻害作用を緩和した.
  • 徐 正君, 藤野 介延, 喜久田 嘉郎
    1993 年62 巻4 号 p. 614-620
    発行日: 1993/12/05
    公開日: 2008/02/14
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    タイヌビエ (Echinochloa oryzicola Vasing) の完熟種子の果皮をとって2-20mgl-1の2, 4-Dを含むMS改良培地上に移植しカルスを誘導した. このカルス誘導は培地に4mgl-1のトリプトファンを添加することが効果的であった. 誘導されたカルスは6mgl-1の2, 4-Dを含むMS改良培地に継代培養できた. このカルスは2, 4-D及びサイトカイニンを含む培地に移植することにより, 再分化することができた. 再分化植物体の55%は正常であったが45%はアルビノを含む異常形態を示した. また, この再分化過程をパラフィンセクションにより観察した結果, 再分化には不定胚形成過程を経由する再生個体と不定芽形成過程を経過する再生個体とがあり, その比率は25:75であったが, 培地のホルモン条件によって再分化過程の比率を制御できなかった.
  • 西岡 大介, BRISIBE Ebiamadon Andi, 三宅 博, 谷口 武
    1993 年62 巻4 号 p. 621-627
    発行日: 1993/12/05
    公開日: 2008/02/14
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    NADP-ME型C4単子葉植物であるトウモロコシと, 同型のC4双子葉植物であるマツバボタンについて, グラナの重なり (スタッキング) に注目して葉緑体の発達過程を観察した. 両植物種において, 維管束鞘葉緑体では1グラナを形成するチラコイド数の平均値は, 葉緑体発達過程を通して3末満に抑えられていたのに対し, 葉肉葉緑体では発達にともない徐々に増大した. したがって, 系統発生的に異なる2種類のNADP-ME型C4植物において, 維管束鞘緑体ではグラナの発達は共に葉緑体発達初期から抑えられていると考えられた.
  • 岩間 和人, 福島 淑恵, 吉村 徹, 中世古 公男
    1993 年62 巻4 号 p. 628-635
    発行日: 1993/12/05
    公開日: 2008/02/14
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    栽植密度はバレイショの生育と収量を左右する重要な要因の一つであるが, 異なる栽植密度条件下での根の生長の差異については, 極めて知見が少ない. そこで本研究では, 栽培条件に対する適応性の異なると思われる晩生2品種 (農林1号とコナフブキ) について, 疎植 (23810株/ha), 中植 (47620株/ha), 密植 (95240株/ha) における根の生長の差異を明らかにし, これと葉および塊茎生長との相互関係を検討した. 根の調査は, 萌芽後30日目に深さ30cmまでをモノリス法で, また90日目に深さ1mまでをコアサンプリング法で行なった. また, 生育期間中数回, 葉面積と塊茎乾物重を測定した. 90日目の全根長は, 両品種とも栽植密度の増加にともないほぼ直線的に増加し, またいずれの栽植密度でもコナフブキに比べ農林1号の方が著しく大きな値を示した. 処理間, 品種間の差異は, 深さ30cmまでの耕土層で大きく, これ以下の心土層では密植区での増加が認められなかった. また, 根の生長の差異は30日目の調査でもほぼ同様に認められ, 比較的早い時期から現れることがわかった. さらに, 90日目の全根長は, 同時期の葉面積指数および60日目以降の塊茎乾物重の増加速度とそれぞれ高い正の相関関係 (r=0.929**およびr=0.913**) を示したことから, 生育後期における根長の差異は葉面積の維持および塊茎生長の差異と密接に関係しているものと考えた. また, 密植区では深い土層での根の生長が抑制されるため, 早魃の影響を受けやすいと推論した.
  • 加藤 恒雄, 武田 和義
    1993 年62 巻4 号 p. 636-637
    発行日: 1993/12/05
    公開日: 2008/02/14
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  • 井上 吉雄, 森永 慎介, 芝山 道郎
    1993 年62 巻4 号 p. 638-640
    発行日: 1993/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
  • 寺田 優
    1993 年62 巻4 号 p. 641-646
    発行日: 1993/12/05
    公開日: 2008/02/14
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