日本作物学会紀事
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コムギ品種の幼植物の根の伸長角度と圃場における根の垂直分布との関係
小柳 敦史中元 朋実和田 道宏
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1993 年 62 巻 4 号 p. 565-570

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抄録
土壌中の根の分布は作物の環境ストレス耐性に影響を与える要因の一つであると考えられる. そこで, コムギの根の垂直分布に関する品種特性を種子根の伸長角度を用いて簡易に評価できるかどうか調べた. 日本のコムギ品種には根の伸長角度に関して育成地による地理的変異がみられることがわかっている. そこで, 南北日本で育成された計12品種の秋播きコムギを用いてポットおよび圃場試験を行った. 1/5,000aのワグネルポットにバスケットを入れ, 土をつめて播種し, 20℃で7日間生育させて種子根の伸長角度 (根軸が水平面となす角度) を調べた. つぎに, 同じ品種を畑に栽培し, 節間伸長期にあたる4月にモノリス法で深さ30cmまでの根を採取して5cmごとの土層に分けて根を洗い出し, 各土層内の根長をルートスキャナーを用いて測定した. その結果, 上層10cmに存在する根の割合は, ポットで調べた幼植物の根の伸長角度と負の相関関係にあり, 深さ10cm以下の下層に存在する根の割合は伸長角度と正の相関関係にあった. さらに, 根の平均的な深さを示すRDI (根の深さ指数) を算出したところ, 伸長角度と1%水準で有意な正の相関関係にあった. これらのことから, 種子根の伸長角度は根の垂直分布に関する品種特性を推定するための一つの指標として用いることができると考えられた.
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