日本作物学会紀事
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春播コムギの登熟機構の解明 : 第1報 器官生長からみた登熟相の分類
高橋 肇土橋 直之中世古 公男
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1993 年 62 巻 4 号 p. 560-564

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抄録
春播コムギの登熟機構を生理的・形態的に解析することを目的として, 解析の基礎となる登熟相の分類を試みた. 本試験では, 品種ハルユタカの群落について連日, 子実および稈の乾物重と糖含有率を測定して, これらの動向から登熟期間を以下に示す4つの登熟相に分類した. (1) 登熟初期 (開花期から稈伸長停止期まで) : 同化産物は主として稈の伸長に利用され, 子実重はゆるやかに増加する. (2) 登熟前期 (稈伸長停止期から乳熟期まで) : 稈の伸長が停止し, 同化産物は子実成長と稈での一時貯蔵とに利用される. (3) 登熟後期 (乳熟期から光合成停止期まで) : 同化産物はすべて子実生長に利用され, 稈の一時貯蔵物質も補足的に子実へと転流する. 登熟末期 (光合成停止期から成熟期まで) : 新たな同化産物が生産されず, 子実は稈からの転流物質によってのみ生長する. なお, 登熟前期および登熟後期では, 稈の貯蔵養分の増加速度と日射量との間に正の相関関係が認められ, 子実重は日射量の変動にかかわらず開花後日数の経過にともない直線的に増加した.
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