抄録
栽植密度はバレイショの生育と収量を左右する重要な要因の一つであるが, 異なる栽植密度条件下での根の生長の差異については, 極めて知見が少ない. そこで本研究では, 栽培条件に対する適応性の異なると思われる晩生2品種 (農林1号とコナフブキ) について, 疎植 (23810株/ha), 中植 (47620株/ha), 密植 (95240株/ha) における根の生長の差異を明らかにし, これと葉および塊茎生長との相互関係を検討した. 根の調査は, 萌芽後30日目に深さ30cmまでをモノリス法で, また90日目に深さ1mまでをコアサンプリング法で行なった. また, 生育期間中数回, 葉面積と塊茎乾物重を測定した. 90日目の全根長は, 両品種とも栽植密度の増加にともないほぼ直線的に増加し, またいずれの栽植密度でもコナフブキに比べ農林1号の方が著しく大きな値を示した. 処理間, 品種間の差異は, 深さ30cmまでの耕土層で大きく, これ以下の心土層では密植区での増加が認められなかった. また, 根の生長の差異は30日目の調査でもほぼ同様に認められ, 比較的早い時期から現れることがわかった. さらに, 90日目の全根長は, 同時期の葉面積指数および60日目以降の塊茎乾物重の増加速度とそれぞれ高い正の相関関係 (r=0.929**およびr=0.913**) を示したことから, 生育後期における根長の差異は葉面積の維持および塊茎生長の差異と密接に関係しているものと考えた. また, 密植区では深い土層での根の生長が抑制されるため, 早魃の影響を受けやすいと推論した.