日本作物学会紀事
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カンショにおける個葉光合成速度の支配要因の解明 : 第3報 表皮剥離葉の炭酸ガス交換速度からの生体内ルビコス活性の推定
窪田 文武名田 和義軒 和一
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1994 年 63 巻 1 号 p. 89-95

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抄録
ルビスコ活性は, 炭酸固定反応開始時のガス交換速度(CER)の決定主要因であり, CERの初期勾配から葉内のルビスコ活性を推定できる. また, ルビスコ活性はルビスコの活性化状態と基質RuBP(リブロース1, 5ビスリン酸)量の二つの内的要因に制御される. ガス交換の及ぼす気孔の影響を取り除いた表皮剥離葉(カンショ品種コガネセンガン)を異なるCO2濃度条件(20, 60および350μmol mol-1)で光照射(前処理)し, 暗処理をはさんで, 光再照射(900μmol m-2 s-1)に対する剥離葉のCER (CERP1)の反応をCO2濃度350μmol mol-1条件下で測定した. CERP1反応に暗処理時間の影響が認められた. CERP1の初期勾配(IR-CERP1)から, ルビスコの光活性化状態は暗所で少なくとも5分間維持できるものと判断された. 暗処理を2.5分間とした場合のIR-CERP1には, 前処理におけるCO2濃度の差の影響は認められなかった. これは, 2Oおよび60μmol mol-1のような低いCO2濃度下においても葉内ルビスコの光活性化が可能であることを示すとともに, 反応開始時におけるルビスコ活性(IR-CERP1)は主にルビスコの活性化状態によって決定されており, RuBPの蓄積量の影響を受けないことを示す. IR-CERP1から生体内のルビスコの活性化状態, すなわち, RuBP供給に制限されない状態でのルビスコ活性を推定することが可能である.
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