日本作物学会紀事
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63 巻, 1 号
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  • 白岩 立彦, 橋川 潮, 高 進吾, 酒井 綾子
    1994 年 63 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 1994/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ダイズ品種の乾物生産力を, 個体群の補捉日射エネルギー(PAR)当たりの乾物生産量(EPAR)で評価し, それに関連する要因を解析した. 1989年にダイズ11品種を, 1990年に27品種を滋賀県立短期大学農業部畑圃場で栽培した. 個体群補捉日射量の推移, 地上部全乾物重の推移, 群落吸光係数(KPAR), 葉面積当たり窒素濃度(SLN)および地上部全窒素含量(1990年のみ)を測定した. EPARの全品種平均値は両年とも2.48gMJ-1であった. 変動係数でみると品種間には±9%(1989年)あるいは±17%(1990年)の変異がみられ, 全体に新しい品種が旧品種よりも勝っていた. EPARはSLNとの間に正の相関関係を示した(1989年r=0.548, 1990年r=0.651)が, KPARとの間には相関関係がみられなかった. SLNが比葉重(SLW)と密接な関係(1989年r=0.954, 1990年r=0.710)を示したことから, EPARにみられる新旧品種間差異は, 主として葉身の形態特性の改善による個葉光合成能力の増大によるものと推察された. SLNはさらに, 地上部全窒素含量と正の相関を示し(1990年, r=0.736), 個体全体の窒素蓄積量の制限を受けるようであった.
  • 松崎 守夫, 橋本 知義, 昆 忠男, 豊田 政一
    1994 年 63 巻 1 号 p. 9-14
    発行日: 1994/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    十勝中央部の3土壌型(各120 ha)において8年間作付調査を行った. 8年間の作付順序が単一になるように作付図を区分し, 区分した区画の作付順序・面積などによリデータベースを構築した. 作付順序の共通要素を抽出するためにデータベースを用い, 連続する二つの作物結合単位である3年間の作付順序(3年作付)の出現面積比率を年度ごとに集計した. 6反復存在する3年作付の出現面積比率からその平均値, 変動係数, 及び3年作付の出現頻度を計算した. 出現面積比率の変動係数を用い, 調査地点を代表する3年作付(主要な3年作付)を抽出した. 主要な3年作付は出現頻度・出現面積比率が高く, 普通畑作物のみによって構成される3年作付であった. これらは各土壌型において10~l2通りしか存在しなかったが, 調査面積の21~53%を占めていた. 主要な3年作付A→B→C, B→C→Aが抽出された時, 作物結合単位B→Cを連結することにより, 作付順序A→B→C→Aが存在すると考えることができる. この過程を繰り返し, 多数の作物からなる作付順序を再構成することにより, 調査地点を代表する作付順序・輪作体系を確認することができる.
  • 松崎 守夫, 橋本 知義, 昆 忠男, 豊田 政一
    1994 年 63 巻 1 号 p. 15-20
    発行日: 1994/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    前報において主要な3年作付の抽出を行った. この報告では主要な3年作付を連結することにより, 輪作体系の確認, 及びその出現面積比率の計算を行なった. 淡色黒ボク士では3通りの輪作体系(1)テンサイ→バレイショ→コムギ(出現面積比率11.4%), (2)テンサイ→バレイショ→スイートコーン→コムギ(24.0%), (3)テンサイ→バレイショ→コムギ→コムギ(11.6%)を, 黒ボク士では2通りの輪作体系(4)テンサイ→バレイショ→コムギ→コムギ(23.6%), (5)テンサイ→バレイショ→スイートコーン→コムギ→コムギ(7.5%)を輪作体系とみなすことができた. 調査地点における主要作物の作付間隔は確認した輪作体系とほぼ一致したため, 本手法を用いて輪作体系を数量的に評価することができると考えられた. また, 輪作体系は作付比率と秋播コムギの作期に規制されていると考えられた.
  • 星野 次汪, 伊藤 誠治, 谷口 義則, 佐藤 暁子
    1994 年 63 巻 1 号 p. 21-25
    発行日: 1994/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    粒大と品質との関係を明らかにするため, 1989/1990年, 1990/1991年に栽培したコユキコムギを用いて, 原粒を縦目篩を用いて大きさ別に分け, 原粒及び粒大別に製粉された60%粉の粗タンパク含有率, 灰分含有率及びコムギ粉生地の物性などについて試験を行った. 粒大が大きいほど千粒重は大きく, 3.0mmの粒は1.8mmの粒の約3倍の重さであった. 粗タンパク含有率は1989/1990では粒大が大きいほで高くなったが, 1990/1991ではいずれの粒大でもほぼ一定の値であった. 灰分含有率は1989/1990では2.4mm, 1990/1991では2.6mmの粒が最も低く, それより粒大が大きくなるかあるいは小さくなるにしたがって高くなった. 製粉歩留は, 粒大が大きいほど高くなり, 粒大間に1%水準の有意差が認められた. 粉の比表面積(cm2/g)は粒大が大きいほど小さかった. 粉の白さ(R455), 明るさ(R554)は粒大が大きいほどその値は大きかったが, 胚乳の色づき(logR 554/R 455)は逆に小さかった. ファリノグラムの特性値(Ab, DT, Stab., V. V, Wk)及びアミログラム最高粘度は粒大間で有意差が認められなかったが, エキステンソグラムの各特性値のうち, 面積は1.8mmの粒を除けば粒大が小さいほど大きく, 伸長抵抗は粒大の大きいもの及び小さいものが小さかった. これらのことから, 大粒は, 灰分含有率が低く, 製粉歩留が高く, 粉色相が優れているが, ブラベンダー特性はやや小粒の方が優れていた.
  • 廣瀬 大介, 巽 二郎, 津川 兵衛, 西川 欣一
    1994 年 63 巻 1 号 p. 26-33
    発行日: 1994/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    施肥Nの化合形態の違いがアルファルファの実生の生育とNの吸収・分配に及ぼす影響を15Nを用いて調べた. 栽培は1万分の1アールポットにつめた水田土壌を用いて行った. 基肥または追肥として施用したいずれの場合でも, 硝酸態N施肥区と比較して, アンモニア態N施肥区におけるアルファルファの個体乾物重, 全N含有量, 15N回収率が優れていた. 基肥および追肥施用の両方において, 硝酸区では根の施肥由来N割合が葉・茎と比較して低く, アンモニア区では根の施肥由来N割合が茎と同等かやや高かった. 一方, 根の伸長がアンモニア区で優れていたことから, アンモニア態N施用によるアルファルファの生長促進は, 根の良好な発達を通じた施肥Nの利用効率の上昇と関連していると推察した.
  • 寺島 一男, 尾形 武文, 秋田 重誠
    1994 年 63 巻 1 号 p. 34-41
    発行日: 1994/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    耐ころび型倒伏性の弱い日本の品種(日本品種)とこれの強いアメリカ合衆国の品種(アメリカ品種)および穂重型の半倭性インド型品種(半倭性インド型品種)を用い, 耐ころび型倒伏性に関連する, 物質生産, 各部位への乾物分配, 根の発達などの生育特性を比較した. アメリカ品種の単位土地面積当り乾物生産量(乾物生産量)は日本品種と同じかやや劣る傾向であったが, 根への乾物分配比率が高く, 単位土地面積当り根重(根重)も日本品種より重い傾向を示した. 半矮性インド型品種では, 乾物分配比率については日本品種との間に明瞭な違いがみられなかったが, 幼穂形成期以降の乾物生産量がより高く, これに伴って根重も重くなる傾向が認められた. さらに, アメリカ品種と半矮性インド型品種は, いずれも日本品種にくらべて心土層や作土のより深い層に根を多く分布させる傾向を示した. 各品種の押し倒し抵抗値は, 心土層中や株直下方向の層中の根重との間に正の相関関係を示した. しかし, 冠根数や冠根の株当り総断面積と押し倒し抵抗との間には明瞭な関係は認められなかった. 以上から耐ころび型倒伏性の強い品種に共通した特性は根重が重く, 土壌のより深い層へ根を分布させる点にあると判断された.
  • 中谷 誠, 川島 茂人
    1994 年 63 巻 1 号 p. 42-47
    発行日: 1994/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    家庭用8ミリビデオカメラと汎用のパーソナルコンピュータを用いて麦類の葉のクロロフィル量の推定を試み, 低コストで非破壊, 非接触的に作物の葉色を判定するシステムの可能性を検討した. 最初に屋外で水稲葉色板を様々な方向から撮影し, 画像のR(赤), G(緑), B(青)信号の変動を調査したところ, 晴天時には曇天時に比べて各信号の撮影方向による変動が極めて大きく, 晴天時の画像によって葉色を判定することはかなり困難と判断された. そこで, 曇天時の画像によるクロロフィル量の推定の可能性を検討することとした. 1993年4月から6月にかけて, 5回の曇天日にコムギ, オオムギ, ライムギの画像を採取し, 葉緑素計にて測定した単位葉面積当たりのクロロフィル量と画像からの信号との関係を検討した. 各調査日別に, クロロフィル量との相関を見ると, R-BないしG-Bが相関係数-0.84~-0.96で最も相関が高かったが, 全結果をまとめると, 最も高い相関が認められたのは(R-B)/(R+B)で相関係数は-0.81であった. また, この(R-B)/(R+B)に関しては, 調査日や麦種が異なっても, ほぼ同じ回帰直線が得られた. 以上の結果から, 撮影時の気象条件等の限定はあるものの, ビデオ画像による葉色判定の可能性が示された.
  • 後藤 雄佐, 斎藤 満保, 長谷部 幹, 中村 聡, 大江 真道, 星川 清親
    1994 年 63 巻 1 号 p. 48-54
    発行日: 1994/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    分げつ期初期の水稲に短期間の9℃処理をし, 常温に戻した後に現れる影響を, 葉の長さと分げつ性とに着目して調べた. 1ポット当たリ3個体で育てた水稲ササニシキを, 第7葉が半分ほど抽出した時(H区), 第7葉の抽出し終わる直前(W区)に, 9℃のファイトトロンに入れた. H, W区それぞれに処理期間1, 2, 4, 8日間の4区を設けた. 9℃処理期間中に外観上の生長は認められなかった. 処理後, すぐに生長を再開したが, 8日間処理区では約30%の個体が枯死するほどの傷みを受けた. 葉身・葉鞘の急伸長期に9℃処理をするとそれらの長さは無処理区に比べ短くなったが, 処理時期により反応は異なった. すなわち, 急伸長期の初期から中期までの処理では, 処理期間中一時的に伸長が止まり, 処理後に再び伸長するが, 伸びる長さは処理期間が長いほど短かった. それに対し, 急伸長期後期の9℃処埋では処理後再伸長せず, 処理期間による最終長への影響は認められなかった. 一方, 処理後に急伸長期にはいる葉身・葉鞘は9℃処理により長くなり, 処理期間が長いほど最終長は長くなる傾向があった. 各処埋区における, 処理後に出現した分げつ位ごとの分げつ出現率から, 特定の分化・発育過程にある分げつだけが低温(9℃)の影響を受けやすいとは言えなかった. むしろ, 処理後に出現するはずの分げつ位の全体的な出現率が低温の影響を表していた. すなわち, 9℃処理が長期間になり, 個体としての傷みが大きくなると, 枯死を免れた場合でも全体的な分げつ出現率が低くなり, また, 出現した分げつの生長速度も無処理区よりも遅くなった.
  • 楠田 宰
    1994 年 63 巻 1 号 p. 55-62
    発行日: 1994/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水稲の葉面積は, 生育診断や生育予測にとって, また乾物生産特性を明らかにするためにも重要な調査形質である. しかし, その調査には多くの時間と労力を必要とし, 十分な精度を保った調査の実施は困難となってきている. このため, 一定水準以上の信頼性を確保した, 簡便で効率的な葉面積の調査法が必要となっている. 各農業試験研究機関においても, 調査の省力化が図られているが, 調査精度について十分な統計的検証を行った例はほとんど見られない. 本報では, 葉面積の推定の一部に重複抽出による比推定法を組み込んだときの標本数, 精度, 所要時間を調査・解析して, その有効性を精度の確保と省力化の両面から検討した. 葉面積だけを調査対象とする場合には, 生体重を補助量とした重複抽出による比推定法で推定した葉身乾物重とSLA(葉身乾物重1g当たりの葉面積)から葉面積を推定する方法は, 調査の効率化に有効と判断された. この場合, 目標精度を満たす推定値を得るための所要時間は, 標本調査の原則である単純推定法のそれに比べて最高分げつ期では44%に, 穂揃期では63%にそれぞれ短縮された. さらに, 葉面積に加えて乾物重も調査対象とする場合には, 生体重を補助量とした重複抽出による比推定法で推定した乾物重と葉身重割合とSLAから葉面積を推定する方法は, 調査の効率化に有効と判断された. この場合, 目標精度を満たす推定値を得るための所要時間は, 単純推定法のそれに比べて最高分げつ期では30%に, 穂揃期では75%にそれぞれ短縮された.
  • 田中 典幸, 三原 実, 有馬 進, 原田 二郎
    1994 年 63 巻 1 号 p. 63-67
    発行日: 1994/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ダイズの根系構造のパイプモデル適合性とその範囲について, 異なる地下水位(35, 80, 60と80 cm 変動)あるいは作土の深さ(5, 10, 20, 40, 60, 90 cm)下で生育させたダイズの根系を対象として検討した. その結果, ダイズ根系の形態, 分布および量は様々に変化した. しかし, 細根重の積算値と太い根の根重は, 層位や処理の種類にかかわらず直線関係を示し, また, 直径約0.25mm以上の根では直径階級と直径階級別根長は負の直線関係を示した. したがって, 根系はパイプモデルにほぼ一致する構造であることが確認された. 一方, "仮想パイプ"を考案して詳細に検討した結果, ダイズの根系のパイプモデルへの適合限界は, 直径階級約1mm以上の太い根までであり, 約1mm未満の細根はモデルから予想される量より著しく多いことが明らかになった.
  • 斎藤 邦行, 稲村 隆治, 石原 邦
    1994 年 63 巻 1 号 p. 68-74
    発行日: 1994/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    著者らは, ダイズ個体群において複葉の活発な運動現象を認め, その運動パターンは個々の小葉が単独で動くのではなく, 複葉を単位として向日的に運動することを観察した. そこで, 複葉を単位とした運動の測定方法を確立し, ポットならびに圃場で栽培を行ったダイズ複葉の昼夜における運動を測定した. ダイズ複葉の運動を定量化するため, 3小葉先端を結ぶ三角形(ΔT)の面積と左右小葉間の距離(A)を測定し, それぞれ1日の最大値を100とした相対値を求めた. また, 3複葉の内最も活発に運動する頂小葉中央葉脈の方位角度(α)と傾斜角度(β)の経時変化を測定した. 早朝にはすでに3小葉は上側に傾斜角度を大きくし, ΔTは午前10時頃上側に最小となり, 夕刻になるにしたがって3小葉は徐々に水平に近くなり, ΔTは最大となった. 日没とともに3小葉は急速に垂れ下がり, ΔTは下側に小さくなったが, 午前0時以降徐々に水平から上側に傾斜角度を大きくし, 日の出前の午前4時にはΔTは上側に小さくなった. 頂小葉は太陽の運行方向に同調して, 東側から西側に旋回したことから, 頂小葉は日中向日的に運動することがわかった. 以上の結果, ダイズ複葉のΔTの変化を測定することにより, 昼間の向日運動, 夜間の就眠運動を定量化することが可能となり, ΔTは単に運動量の大小を示すのみならず, 個体群下層へ光を透過する程度を示す質的指標となることが推察された.
  • 高橋 肇, 土橋 直之, 中世古 公男
    1994 年 63 巻 1 号 p. 75-80
    発行日: 1994/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    春播コムギの登熟機構を生理的・形態的に解明することを目的として, 登熟期間におけるコムギの子実, 穂, 稈および葉身の乾物重および糖分含有量(WSC)の推移を, 圃場条件下で栽培した品種ハルユタカの群落において, 連日の早朝と夕方に調査した. 前報で分類した4つの登熟相;(1)登熟初期, (2)登熟前期, (3)登熟後期および(4)登熟末期において, 調査した器宮乾物重の多くが直線的に増加あるいは減少したことから, その速度を開花後日数に対する乾物重の直線回帰式の係数で表し, 登熟相の違い, さらに日中と夜間との違いについて検討した. その結果, 全乾物重の増加速度は登熟相の進行にともない低下し, 光合成の停止する登熟末期ではほぼ0を示した. 子実重の増加速度は登熟後期で最も高い値を示し(60 mg pl-1 day-1), 稈の可溶性糖分は登熟初期(22 mg pl-1 day-1)および前期(11 mg pl-1 day-1)で増加し, 後期(-15 mg pl-1 day-1)および末期(-19 mg pl-1 day-1)で減少することが数値により示された. さらに, 子実重は登熟初期, 前期および末期では, 日中と夜間ともに同じ速度で増加するのに対して, 登熟後期では日中の増加速度が夜間の3倍になることが明かとなった(日中:45mg pl-1 day-1, 夜間:16mg pl-1 day-1). 一方, 稈のWSCは登熟前期において日中に増加して稈に蓄積するものの, 夜間は減少して子実へと転流することが明かとなった(日中:18 mg pl-1 day-1, 夜間:-8 mg pl-1 day-1).
  • 高橋 肇, 中世古 公男
    1994 年 63 巻 1 号 p. 81-88
    発行日: 1994/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    出葉速度と気温との関係を明らかにすることを目的に, 春播コムギの早生品種ハルユタカと晩生品種Selpekを圃場条件で栽培した. 播種は3月17日(S1)から9月13日(S14)まで2週間間隔で14回行い, 連日, 出葉展開度(Haun's scale)を測定するとともに生長点の観察から幼穂分化期を決定した. 最終的な葉数(止葉まで葉数)は, 播種期の違いが3月(S1)から7月(S9)まで4力月にも及ぶのに対してわずか1葉の違いしかみられなかった. この間, 早生品種ハルユタカは晩生品種Selpekに比べ常にほぼ1葉少ないことから, 最終的な葉数が品種の早晩性と密接に関係していることが推察された. 積算気温に対する出葉速度は, 同播種期では幼穂分化期前で高く, それ以降で低く, 幼穂分化前では播種期の遅れにともない低下した. 幼穂分化期での葉数は播種期の違いによる差が小さく, 出葉展開度と生理的齢はほぼ同調しているものと思われた. 一方, 幼穂分化期を境にその前後について出葉展開度と積期の違いに対して標準偏差が大きかったことから幼穂分化期前で回帰式の傾きが異なることが明らかとなった. 出葉速度は, 幼穂分化期前では気温に対して相乗的に, 幼穂分化期後では気温に対して直線的に反応することが示唆された.
  • 窪田 文武, 名田 和義, 軒 和一
    1994 年 63 巻 1 号 p. 89-95
    発行日: 1994/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ルビスコ活性は, 炭酸固定反応開始時のガス交換速度(CER)の決定主要因であり, CERの初期勾配から葉内のルビスコ活性を推定できる. また, ルビスコ活性はルビスコの活性化状態と基質RuBP(リブロース1, 5ビスリン酸)量の二つの内的要因に制御される. ガス交換の及ぼす気孔の影響を取り除いた表皮剥離葉(カンショ品種コガネセンガン)を異なるCO2濃度条件(20, 60および350μmol mol-1)で光照射(前処理)し, 暗処理をはさんで, 光再照射(900μmol m-2 s-1)に対する剥離葉のCER (CERP1)の反応をCO2濃度350μmol mol-1条件下で測定した. CERP1反応に暗処理時間の影響が認められた. CERP1の初期勾配(IR-CERP1)から, ルビスコの光活性化状態は暗所で少なくとも5分間維持できるものと判断された. 暗処理を2.5分間とした場合のIR-CERP1には, 前処理におけるCO2濃度の差の影響は認められなかった. これは, 2Oおよび60μmol mol-1のような低いCO2濃度下においても葉内ルビスコの光活性化が可能であることを示すとともに, 反応開始時におけるルビスコ活性(IR-CERP1)は主にルビスコの活性化状態によって決定されており, RuBPの蓄積量の影響を受けないことを示す. IR-CERP1から生体内のルビスコの活性化状態, すなわち, RuBP供給に制限されない状態でのルビスコ活性を推定することが可能である.
  • 角 明夫, 片山 忠夫
    1994 年 63 巻 1 号 p. 96-104
    発行日: 1994/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    西アフリカで収集した栽培稲O. glaberrimaとO. sativaの中から選んだ6系統ずつを供試し, 両栽培稲の生育, 収量性および水消費を比較した. O. glaberrimaは, O. sativaより有意に出穂期の葉面積が大きかった. また, O. glaberrimaの中には施肥によって栄養生長期間が顕著に延長されるいくつかの系統が認められた. 本実験に供試した系統の範囲内において, O. glaberrimaは穂数が多く, 一籾重が小さい傾向にあった. この差異は供試したO. sativa系統の中に長稈少げつの系統が多かったこと, またその全系統が大粒のジャワ型であったことに関係した結果である. 一穂籾数と登熟歩合には種間差異は認められなかった. 収量はO.sativaよりむしろO. glaberrimaで大きい傾向にあった. その一方で, O. glaberrima水利用効率が低く, より多水分消費型の種である傾向が認められた.
  • 角 明夫, 片山 忠夫, 縣 和一
    1994 年 63 巻 1 号 p. 105-110
    発行日: 1994/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    西アフリカで収集した栽培稲Oryza glaberrimaとOryza sativaの中から選んだ6系統ずつに日本晴(O. sativa)を加えた計13系統をポット栽培し, 両栽培稲の乾物増加と水消費の経過を比較検討した. O. glaberrimaの各系統の乾物増加は出穂期前後に高い反面登熟完了後急激に停止したが, O. sativaの各系統は緩やかであるがより後期まで乾物増加が継続した. O. sativaは, 出穂後の葉面積減少がO. glaberrimaより緩やかであり, また根/地上部重比が登熟完了後再度微増した. このような差異は, O. glaberrimaの直接祖先種が一年生であるのに対して, O. sativaはその祖先種であるO. perennisの多年生形質を多分に残していることを反映していると推察した. 水利用効率(WUE)は, O. glaberrimaよりO. sativaのほうで高く, またWUEは供試した全系統とも生育経過に伴って低下した. このWUEの低下は生育に伴う葉面積比(LAR)の低下と密接に関連していた. O. glaberrimaの特性である旺盛な葉面積生長は, 消費水量の増大をもたらす一方で, この種の特性である低い光合成/蒸散比を幾分か高く維持することに寄与していると考えられた. O. glaberrimaは穂重/全乾物重比が高く, 結果として穂重/蒸散比には差異は認められなかった.
  • 白岩 立彦, SINCLAIR Thomas R., 橋川 潮
    1994 年 63 巻 1 号 p. 111-117
    発行日: 1994/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ダイズ個体群の窒素固定活性における品種間差異を圃場条件のもとで検討した. 1989年と1991年にそれぞれ4および15のダイズ品種ならびに根粒非着生品種T 201を栽培した. 生育期間中3ないし4回にわたって地上部全乾物重, 地上部全窒素含量および根粒重(1991年のみ)を測定した. 窒素固定量は差し引き法によって求めた. 1989年には堆肥を連用した畑圃場を用いたが, その土壌窒素供給は, 1991年に用いた堆肥施用前歴のない水田転換畑と比べて大きかった. 1日当たり窒素固定速度(DNF)は両年とも, 地上部全乾物重との間に密接な直線関係を示しながら, およそR5(子実肥大始)まで増加した. 直線の傾き(dDNF/dTOPDW)を全品種こみで計算した結果は, 1989年が1.62mg day-1g-1 (r=0.91), 1991年が1.69mg day-1g-1(r2=0.92)であった. また一方, R5までのdDNF/dTOPDWを各品種ごとに計算したところ, 1991年Harosoyの1.29mgday-1g-1(r2=0.47)から1991年房成の2.23mgday-1g-1(r2=0.93)まで実質的な品種間差異がみられた. 栄養生長期間を通じ, 根粒重の地上部全乾物重に対する比(NDW/TOPDW, g g-1, 1991年のみ)は全品種で低下したが, 根粒重当たりのDNF(DNF/NDW, mg day-1g-1)は増加した. R5頃におけるDNFの最大値には, 品種によっておよそ0.3gm-2day-1から0.5gm-2day-1の変異が認められた. 子実肥大期では一般にDNFが低下したが, 特に4つの旧品種が, 新しい品種と比較して, 早くから急速にDNFを低下させた.
  • 姜 始龍, 森田 茂紀, 山崎 耕宇
    1994 年 63 巻 1 号 p. 118-124
    発行日: 1994/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    東京大学農学部附属多摩農場の水田で栽培した日印交雑稲(密陽23号, 水原264号)および日本型稲(日本晴, コシヒカリ)の根系の形成について検討した. 幼穂分化期, 出穂期および登熟期に, 株下(登熟期は株下および隣接する4株の中央部である株条間の両者から)直径15cmの土壌モノリスを採取した. 土壌表面から0-5, 5-10, 10-15および15-25cmの各土層別に, 根を丁寧に洗いだし, 根の長さと乾物重を測定した後, それぞれの土壌体積で割って根長密度(RLD)および根重密度(RWD)を算出した. 幼穂分化期頃は株下0-25 cmにおけるRLDとRWDには品種間差は認められなかった. それ以降, いずれの品種においてもRLDとRWDがともに増加したが, とくに日印交雑稲において増加が著しかった. 登熟期には株下および株条間の両者において, 日本型稲より日印交雑稲の根量が有意に多かったが, これはとくに株下第1層において顕著であった. 各品種のRLDは株下第1層において, またRWDは第2層においてそれぞれ最高値をとった. そこでspecific root length(単位根重当たりの根長)を算出したところ, 株下第2層において最も小さい値を示したのに対し, 株下の他の層や株条間では大きな値を示した. このことは, 株下第2層中に株の基部が位置し, ここには相対的に直径が大きく分枝があまり発達していない冠根の基部が多く分布するのに対して, 他の土層中には冠根の直径が細く, 分枝が比較的発達した部分が多く分布するためと考えられた.
  • 岡野 邦夫, 小牧 晋哉, 松尾 喜義
    1994 年 63 巻 1 号 p. 125-130
    発行日: 1994/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    窒素吸収能力の季節変化あるいは新芽窒素の起源を明らかにする目的で, 一番茶生長期の幼茶樹における15N標識窒素の吸収, 分配および再分配を調べた. 個体当り窒素吸収量は萌芽前の2月と3月は比較的少なかったが, 新芽の萌芽・伸長が始まった4月以降は約50%増加した. 萌芽前に吸収された窒素の多くは一度根や茎に分布し, 萌芽後新芽に再転流した. 一方, 萌芽後に吸収された窒素の75%以上は新芽に集中した. 窒素収支法および同位体希釈法で推定した結果, 萌芽後に新たに吸収された窒素は新芽窒素の約30%にすぎず, 残りの約70%は樹体内からの再転流窒素に由来することが判明した. この再転流窒素は, 一番茶新芽の生長に対して量的あるいは質的に重要な役割を果たしていると思われる.
  • 津田 誠, 藤川 哲哉, 池田 勝彦
    1994 年 63 巻 1 号 p. 131-136
    発行日: 1994/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    イネの穂ばらみ期に止葉葉鞘に包まれた幼穂の表面には水滴が付着する. この幼穂の付着水は, 蒸散と根圧がかかわる水移動に対応して変化するのではないかと推定した. そこで, 水稲(品種アケノホシ, うこん錦)を水田に栽培し, 幼穂の付着水と稈切断面からの出液を測定した. 土壌乾燥条件下でも同様の測定を行なった. 幼穂の付着水は, 蒸発散能の変化に追随して夜間に増加し, 日中低下した. また, 稈切断面からの出液速度も夜間に増加し, 日中低下した. 付着水の増加量は, 日没後の出液量に比例的であった. 土壌乾燥条件下では幼穂の付着水および出液は殆ど認められなかった. これらの結果より幼穂の付着水は, 夜間には根圧による水移動にともない増大し, 日中には蒸散の影響を受けて失われ, 変動すると結論した.
  • 矢野 勝也, 大門 弘幸, 三本 弘乗
    1994 年 63 巻 1 号 p. 137-143
    発行日: 1994/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    夏作マメ科作物のサンヘンプ(品種:コブトリソウ)およびラッカセイ(品種:千葉半立)を緑肥としてすき込み, 後作コムギ(品種:農林61号)の生長ならびに窒素吸収について比較検討した. すき込み時における緑肥作物の乾物生産量は, サンヘンプがラッカセイよりも優った. 一方, 全窒素含有量はラッカセイがサンヘンプよりも優った. すき込み時のC-N率はラッカセイにおいて約20であったのに対してサンヘンプでは約40と高く, 全乾物重に占める茎の割合が著しく高かった. 両マメ科作物の固定窒素量を根粒非着生ラッカセイ(品種:タラポト)を対照作物とした差引法によって算出した結果, ラッカセイで高く, 18gm-2であった. 全吸収窒素に対する固定窒素の割合は何れのマメ科作物ともに60-70%であった. 後作コムギの収量ならびに窒素吸収量は, ラッカセイ区がサンヘンプ区よりも優った. 各々のマメ科作物が後作コムギの吸収窒素に寄与した割合は, サンヘンプ区で9.4%, ラッカセイ区で11.2%であった. ガラス繊維濾紙法を用いて評価した分解速度においてC-N率の高いサンヘンプの分解が遅いことが示された. 以上のように, 両マメ科作物を緑肥としてすき込んだ場合, 後作コムギへの窒素供給作物としてはラッカセイがサンヘンプよりも優った.
  • NAKAMURA Tiemi, 谷口 武, 前田 英三
    1994 年 63 巻 1 号 p. 144-157
    発行日: 1994/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    コーヒーの体細胞胚発生を, 光学顕微鏡と透過型電子顕微鏡を用いて研究した. 受精胚との比較も行った. 体細胞胚の基部と胚柄の細胞には, ポリフェノールを含む顆粒が多く見られた. 子葉状胚では, この顆粒は小型となった. 受精胚細胞にも, この種の顆粒が存在した. 体細胞胚と受精胚でともに, クチクラ層の不連続性が, ヨード銀染色法で認められた. ポリフェノール顆粒内にも, 微細な銀粒子の沈着が見られた. カルス表層・体細胞胚の胚柄表面・受精胚表面およびカルス細胞間と体細胞胚の胚柄細胞間に粘液質物質が認められた. 以上の結果から, 体細胞胚と受精胚との間に, 同様な微細構造の存在することが明かとなった.
  • 中谷 誠
    1994 年 63 巻 1 号 p. 158-159
    発行日: 1994/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
  • 渡辺 好昭, 竹中 重仁
    1994 年 63 巻 1 号 p. 160-161
    発行日: 1994/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
  • 広瀬 竜郎, 池田 理夫, 伊豆田 猛, 三宅 博, 戸塚 績
    1994 年 63 巻 1 号 p. 162-163
    発行日: 1994/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
  • 冨久 保男
    1994 年 63 巻 1 号 p. 164-168
    発行日: 1994/03/05
    公開日: 2008/02/14
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