抄録
水稲の根系形態における品種間差異について検討し, 根系形態を解析する場合の視点を確立することを試みた. 材料として供試した品種は, すでに行なった予備的な解析の結果から特徴的な根系形態を有すると考えちれるコシヒカリ, 土橋1号, IR36, Lemontの4品種である. これら4品種を水田で慣行栽培し, 登熟期に株下と株間から根系を採取した. 土層別に根を洗い出して, 根長と根重を測定した. また, 別の個体について1次根数と伸長角度を測定した. これらのデータをもとに, 分布の指標として「根の深さ指数」と, 根量とを算出した. その結果, この両者を組合わせることによって, それぞれの品種の根系形態の特徴を定量的に捉えることができた. コシヒカリは根量が少なく浅根性, Lemontは根量が多く深根性, IR36は根量が多く浅根性, 土橋1号はこれら3品種の中間型であった. つぎに, この根量および分布の様相を個々の1次根の形態に着目して解析を進めた結果, 根量は1次根数および, 分枝根を含めた1次根1本当りの総根長である「平均根長」によって, また,「根の深さ指数」は1次根の平均伸長角度と「平均根長」によって, それぞれ規定されていることが分かった. その場合, どの形質が大きく寄与しているかは, 品種によって必ずしも同じではなく, 例えば, 同じように総根長が長い場合でも, IR36は1次根が多いことが, Lemontは「平均根長」が長いことが寄与しており, 土橋1号では「平均根長」が, Lemontでは平均伸長角度が分布を規定していることが分かった.