抄録
世界の各地域を代表するイネ多数品種を用いて, 暗条件下の幼植物の節間の伸長特性を検討した. 供試材料は, 国際イネ研究所がコアコレクションとして推奨している260品種 (Oryza sativa L.)に, 日本の水稲品種ササニシキとコシヒカリを加えた262品種である. 玄米を消毒後, 0.8%寒天培地を含む試験管内に置床し, 30℃, 完全暗条件下で14日間無菌培養した. 1. 各節間長は, 中茎長, 第1節間長ともによく似た頻度分布 (右裾広がり型)を示した. それに対し, 第2節間長は正規分布に近いものとなった. 各節間長の全品種の平均値は, 中茎12.3±0.8mm, 第1節間11.1±0.6mm, 第2節間35.1±1.0mm, 合計長 (中茎長, 第1節間長, 第2節間長の総和) 58.5±1.8mmであった. ただし第1節間が全く伸長しないものが, 22品種あった. 2. 各節間長の地理的分布は, 西・南アジア地域で最も変異が大きく, 東アジア地域で最も変異が小さかった. 3. 各節間長間の相関係数は, 中茎と第1節間間には有意な相関が認められなかったが, 他の場合はすべて有意な相関が認められた. また, 合計長との間に最も高い相関を示したのは, 第2節間で, 次いで中茎であった. 4. 第3節間は, 調査品種中88品種で伸長が認められ, 合計長の長い品種では第3節間の伸長個体が少ない傾向が得られた.