日本作物学会紀事
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64 巻, 1 号
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  • 吉田 智彦, 穂園 咲子
    1995 年64 巻1 号 p. 1-6
    発行日: 1995/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    早期水稲収穫後の刈り株から発生する分げつ(ヒコバエ)の収量, 収量構成要素, 葉数の変動を検討した. 品種はコシヒカリとキヌヒカリを供試した. ヒコバエの収量はコシヒカリは177 gm-2, キヌヒカリは158 gm-2で, ともに1期作の約30%であった. 高ヒコバエ発生率は, 主稈4~7葉からの2次分げつや, 10, 11葉からの1次分げつによるものであった. 1期作収穫後の施肥によってヒコバエの収量はコシヒカリは32 gm-2, キヌヒカリは87 gm-2増加した. これは主に2次分げつでの有効茎の増加によるものであった. ヒコバエの葉は理論葉数より増加しており, その半数以上は松葉による葉数誤差をも越えていた. 1期作の主稈の各生育段階にヒコバエとなる分げつ芽を観察したところ, 大半の分げつ芽では1期作成熟期前に既に幼穂の分化がみられ, ヒコバエで増加した葉の分化は, 主稈の幼穂分化期から成熟期であり1期作の収穫後ではなかった.
  • 由田 宏一, 佐藤 久泰, 佐藤 導謙
    1995 年64 巻1 号 p. 7-13
    発行日: 1995/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    1987年から1989年に北海道内4支庁 (地域) から生産者単位で収集した品種エリモショウズ (総計544点) について, 一部他の品種およびダイズを供試し, 27℃の浸水条件下で吸水性と硬実性を調査・比較した. アズキ種子の吸水率は, 浸水初期にきわめて低く4時間後で約5% (ダイズでは85%) にすぎず, その後12時間まで急増し, 24時間を過ぎて再び緩慢になるS字形の推移を示した. 浸水12時間後の吸水率は小粒品種ほど高く, 同一品種でも年次によって異なったが, 24時間後で差はほとんど消失した. また, 吸水率に地域間差異はほとんどみられなかった. 種子の大きさ (粒大), 水分, 比重と浸漬12時間後の吸水率との間には, 年次あるいは地域によっては負の有意な相関が認められたが, 全体としていずれの形質も吸水率に与える影響は小さいと考えられた. 浸水36時間後の未吸水粒を硬実とみなすと, 13%の高率を示す試料もあったが, 地域間の差は比較的小さく (0.35~0.74%), 年次による差が大きかった (0.06~1.21%). 硬実は小粒で発生しやすい傾向がみられ, 水分, 種皮率, 比重, 収穫後の乾燥・調整期間とはほとんど関係なかった. また, 登熟期間中の平均気温や雨量と硬実率との関係は明かでなかった.
  • 森田 茂紀, 奥田 浩之
    1995 年64 巻1 号 p. 14-18
    発行日: 1995/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    東京大学農学部構内の圃場において慣行栽培したコムギ品種農林61号の種子根および節根の生育の様相を, 分枝根の形成にも着目しながら定量的に検討した. 1991年11月5日に条間30cm, 200粒/m2の密度で播種し, 1992年5月27日の刈取りまでの約200日間に約2週間おきに合計14回, 改良モノリス法により, 土壌表面から深さ30cmまでの部分に分布する根系を, 茎葉部とともに採取した. このようにして採取した材料を個体ごとに分離したのち, 平均的な生育を示した3個体を選び出した. この3個体のすべての種子根および節根を出現位置別に同定し, 根数を記録したのち, それぞれの根軸長および分枝根を含む総根長を測定した. 種子根の総根長は播種後120日目ころ最大になり, それ以後減少したが, 節根の総根長はこの頃から増加が顕著となり, 登熟期間中もほとんど減少しなかった. また, 種子根, とくに初生種子根において分枝根の形成が盛んで, 分枝指数 (=総分枝根長/総根軸長)は播種後120日目ころ最高となり, それ以後低下した. 節根は上位の節から出根するものほど分枝指数が小さく, とくに分棄から出現した節根は, ほとんど分枝していなかった. 以上のことから, 今回対象とした土壌表層に分布する根に限ってではあるが, 種子根は本数は少ないが分枝根形成が盛んなため, 総根長に占める割合が比較的高く, とくに生育前・中期においては根系のかなりの部分を占めていること, また節根は, 分枝根形成よりむしろ根数の増加に伴って生育後期で相対的な割合が高くなることが明らかとなった.
  • 沈 益新, 伊藤 浩司, 石井 康之, 田中 重行, 田中 典幸
    1995 年64 巻1 号 p. 19-26
    発行日: 1995/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    オーチャードグラスの品種ナツミドリにおける施肥による生産性の一時的な調節が, その後の生産性に及ぼす影響を圃場実験及びポット実験により検討した. 圃場実験では, N施用量が1.8g/m2相当の有機質肥料の基肥を施用して10月31日に播種し, 翌年1月5日に化成肥料で窒素, 燐酸, 加里の3要素とも10g/2 (多肥区), 5g/m2 (中肥区), Og/m2 (少肥区)を施用した施肥処理区を設けた. その後, 4月15日に各区とも同量で中肥区相当を追肥し, その際, 刈り取り区として各区の半数を3cmの高さで刈り取り, その他は無刈り区として生長を継続させた. 1月5日から5月25日までにわたり, 乾物生長の変化を調査した. ポット実験の処理及び調査は圃場実験に準じた. 追肥までの期間は, 少肥区ほど葉面積の拡大が強く抑制されて地上部乾物収量 (DMY) が小さかった. しかし, 追肥後では, 刈り取り区及び無刈り区ともに, 追肥前の少肥による生長抑制に対する補償的生長が現れて, DMYの増加は少肥区ほど大きかった. これは, 主として, 追肥前に少肥の区ほど, 追肥後の葉面積指数 (LAI) の増大速度が大きいとともに, LAIの増大に伴う純同化率の低下が小さいことによった. 少肥によるDMYの減少に対する追肥後の補償は完全ではなかったが, 少肥によって生産を一時的に抑制しても, 適切な追肥を行えば,その後の生産が引続き抑制されることにはならないと推察された.
  • 伊藤 誠治, 佐藤 暁子, 星野 次江
    1995 年64 巻1 号 p. 27-32
    発行日: 1995/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    東北農試育成の30品種・系統と外国30品種のコムギを同一条件で栽培し, 製粉性について調査した. 粉の比表面積によって小と大の二つのグループに分けられた. 比表面積小のグループは粉の粒が粗く, 製粉性が高く, 比表面積大のグループは粉の粒が細かく, 製粉性が低く, それぞれ硬質コムギと軟質コムギと推察される. ブラベンダーテストミルのA粉割合によっても同じ2群に分けられ, A粉割合の高いグループは硬質コムギと, A粉割合の低いグループは軟質コムギと一致した. すなわち, A粉割合でコムギの硬軟質性が分類できることが明らかになった. 比表面積から製粉性3形質を求める回帰係数は, 軟質コムギが硬質コムギに比べ大きいことから, 比表面積による製粉性改善の効果は, 軟質コムギで大きいと推察される. 硬質コムギと軟質コムギの製粉性は非連続的に分布することから, 製粉性は質的に異なる遣伝的支配を受けていると考えられる. そのため, 品種の製粉性は, 硬質と軟質コムギに分けて比較する必要がある.
  • 中川 博視, 堀江 武
    1995 年64 巻1 号 p. 33-42
    発行日: 1995/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    日々の気温と日長の経過からイネの幼穂分化期, 出穂期およびその間の幼穂の発育ステージを動的に予測するモデルを導き, 水稲品種日本晴, コシヒカリおよびIR36の3品種に適用した. 出芽から出穂に到る発育過程を幼穂分化期の前後で環境反応が異なるとの仮定のもとにモデル化した. すなわち, 出芽時の発育指数 (DVI) を0, 幼穂分化時のそれを1, 出穂時のそれを2と定め, この制約条件の下で, 発育速度 (DVR) と気温および日長との関係を与える数式のパラメータを, 京都で行った3品種の作期移動試験の幼穂分化期および出穂期のデータを用いて, 各品種・各発育相別に決定した. 得られたパラメータ値から, 水稲発育の環境反応は幼穂分化期の前後の発育相で異なることが示唆された. モデルによる3品種の水稲の幼穂分化期および出穂期の推定精度は標準誤差でそれぞれ2.1~2.4日, 1.5~2.3日であったが, 幼穂分化期で発育相を分割しないで, 出芽から出穂までのDVRの環境反応を不変と仮定したモデルによる同データの出穂期推定の標準誤差は1.8~3.6日であった. これより, 発育相の分割によってモデルの推定精度が向上し, 生育予測・診断のための幼穂分化期および出穂期の予測を実用的精度で行うことが可能と考えられる. さらに, 以上のようにして求めたDVI値と幼穂の発育ステージとの間には, 品種や環境によらずほぼ一定の関係が認められたことから, モデルによって幼穂の発育ステージをも気象の経過のみから推定・予測可能であることが示唆された.
  • 中村 聡, 後藤 雄佐, 星川 清親
    1995 年64 巻1 号 p. 43-49
    発行日: 1995/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    バイオマス資源や飼料として利用されるスイートソルガムでは, 収穫物の中心となる器官は茎と葉である. これらは10~20個程度の伸長した節間と, それぞれの節に着生している葉鞘, 葉身から構成されている. 多収を目指した栽培上の間題点を解析するには, 収量と直接結びつく器官の生長過程を解明することが重要である. そのためには, これらの器官の生長を, 外観から推定できる必要がある. そこで, 外観で判断できる個体の齢 (葉位齢:葉身が前の葉の葉鞘から抽出し終わった時点ごとに, 抽出を完了したばかりの葉の葉位で表す齢) を用い, 各節位の葉身, 葉鞘, 伸長節間の伸長過程について解析した. また, それら器官の伸長過程の相互関係について検討した. 供試品種は晩生のシロップソルゴー2号 (S2)と中生のハイブリッドソルゴー (HS). タイムスケールに葉位齢を用いて, 葉身, 葉鞘, 節間の伸長様式を解析した結果, 次のようにまとめられた. すなわち, 第n葉葉身は葉位齢n-4からn-2の期間に急伸長し, 葉位齢n-1の頃にほぼ伸長が終わった. その葉位齢n-1の頃には, 第n葉葉鞘が最も急速に伸長しており, 最終長に達したのは葉位齢nからn+1にかけての時期であった. また, 葉位齢n+1の頃から第n節間が急激な伸長を始め, 葉位齢n+2の頃に最も増加速度が速く, 葉位齢n+3からn+4にかけての時期にほぼ最終長に達した. 以上から, 外観で測定できる葉位齢を記録することにより, その時点での個体内部で伸長している器宮の位置を推定することが可能となった.
  • 巽 二郎
    1995 年64 巻1 号 p. 50-57
    発行日: 1995/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    根系分布を定量的に評価する目的でフラクタル理論を応用した解析を行った. 根箱 (30×41×2 cm)を用いて施肥量を変えて栽培したダイズとエンドウの幼植物の根系を, 改良式ピンボード法で根系の配置を乱さずに2次元に展開して採取した. パソコンに接続したスキャナで根系の画像を取り込み, Box-counting法で根系のフラクタル次元 (D)を推定した. 根系の発達にともない根系全体のDが増加した. 根系を上位根系と下位根系にわけて調べると, 根系の下方への発達と下位根系のDの増加のパターンがよく対応していた. 総根長 (L), 根投影面積 (PA)とDとの関係を一次回帰で近似すると, それぞれの相関係数はダイズ, エンドウの多肥/少肥区ともにおおむね D~L<D~PA<L~PAの順で高かった.特にダイズの上位根系では D~L間の相関係数が 0.711~0.740とL~PA間のそれ (0.970~0.974)と比較して低かった. 以上のことから, 根パラメータとしてのDは, 根長や根面積の単純な反映ではなく, これらのパラメータでは示し得ない根系分布の複雑度, たとえば分枝密度や根径分布といった情報を含む指標であり, 根系構造の定量化のうえで有用であることが示された.
  • 森田 茂紀, 山田 章平:(現)ハウス食品, 阿部 淳
    1995 年64 巻1 号 p. 58-65
    発行日: 1995/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水稲の根系形態における品種間差異について検討し, 根系形態を解析する場合の視点を確立することを試みた. 材料として供試した品種は, すでに行なった予備的な解析の結果から特徴的な根系形態を有すると考えちれるコシヒカリ, 土橋1号, IR36, Lemontの4品種である. これら4品種を水田で慣行栽培し, 登熟期に株下と株間から根系を採取した. 土層別に根を洗い出して, 根長と根重を測定した. また, 別の個体について1次根数と伸長角度を測定した. これらのデータをもとに, 分布の指標として「根の深さ指数」と, 根量とを算出した. その結果, この両者を組合わせることによって, それぞれの品種の根系形態の特徴を定量的に捉えることができた. コシヒカリは根量が少なく浅根性, Lemontは根量が多く深根性, IR36は根量が多く浅根性, 土橋1号はこれら3品種の中間型であった. つぎに, この根量および分布の様相を個々の1次根の形態に着目して解析を進めた結果, 根量は1次根数および, 分枝根を含めた1次根1本当りの総根長である「平均根長」によって, また,「根の深さ指数」は1次根の平均伸長角度と「平均根長」によって, それぞれ規定されていることが分かった. その場合, どの形質が大きく寄与しているかは, 品種によって必ずしも同じではなく, 例えば, 同じように総根長が長い場合でも, IR36は1次根が多いことが, Lemontは「平均根長」が長いことが寄与しており, 土橋1号では「平均根長」が, Lemontでは平均伸長角度が分布を規定していることが分かった.
  • 高橋 清, 渡邊 肇, 星川 清親
    1995 年64 巻1 号 p. 66-72
    発行日: 1995/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    世界の各地域を代表するイネ多数品種を用いて, 暗条件下の幼植物の節間の伸長特性を検討した. 供試材料は, 国際イネ研究所がコアコレクションとして推奨している260品種 (Oryza sativa L.)に, 日本の水稲品種ササニシキとコシヒカリを加えた262品種である. 玄米を消毒後, 0.8%寒天培地を含む試験管内に置床し, 30℃, 完全暗条件下で14日間無菌培養した. 1. 各節間長は, 中茎長, 第1節間長ともによく似た頻度分布 (右裾広がり型)を示した. それに対し, 第2節間長は正規分布に近いものとなった. 各節間長の全品種の平均値は, 中茎12.3±0.8mm, 第1節間11.1±0.6mm, 第2節間35.1±1.0mm, 合計長 (中茎長, 第1節間長, 第2節間長の総和) 58.5±1.8mmであった. ただし第1節間が全く伸長しないものが, 22品種あった. 2. 各節間長の地理的分布は, 西・南アジア地域で最も変異が大きく, 東アジア地域で最も変異が小さかった. 3. 各節間長間の相関係数は, 中茎と第1節間間には有意な相関が認められなかったが, 他の場合はすべて有意な相関が認められた. また, 合計長との間に最も高い相関を示したのは, 第2節間で, 次いで中茎であった. 4. 第3節間は, 調査品種中88品種で伸長が認められ, 合計長の長い品種では第3節間の伸長個体が少ない傾向が得られた.
  • ABOAGYE Lawrence Misa, 礒田 昭弘, 野島 博, 高崎 康夫, 吉村 登雄, 石川 敏雄
    1995 年64 巻1 号 p. 73-77
    発行日: 1995/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ラッカセイ8品種, 千葉43号, 千葉半立 (Virginia タイプ), Valencia, Tarapoto, 飽託中粒 (Valenciaタイプ), 金時 (Spanishタイプ), タチマサリ, 関東56号 (タイプ間交雑種) の圃場条件下における葉群構造と受光態勢について検討した. Virginiaタイプ特に千葉43号は草高、小葉面積が小さいが, 小葉数が多く葉面積指数 (LAI)が大きい傾向であった. Spanish, Valenciaタイプは草高, 小葉面積が大きいが, 小葉数が少ないためLAIが小さかった. タイプ間交雑種は, 草高, 小葉面積はVirginiaタイプに近かったが, LAIは比較的小さかった. 単位葉面積当りの受光量は, Virginiaタイプ, タイプ間交雑種は小さく, Spanish, Valenciaタイプは大きくなり, 草高の大きい品種が小さい品種に比べ各層での平均受光量が大きい傾向を示した. 関東56号は例外的で, 草高, 小葉面積は小さかったが, 単位葉面積当りの受光量は大きな値を示した.
  • 平沢 正, 武居 理英, 石原 邦
    1995 年64 巻1 号 p. 78-85
    発行日: 1995/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    圃場に生育する作物の根系の発達程度を簡易に測定するために, ミニリゾトロン法にファイバースコープとカラービデオを採用し, ダイズを用いて測定精度の検討を行った. 圃場には外径60 mm, 内径54mmの透明アクリル管を30度の角度で埋設した. (1) 本装置によって管壁に現れたすべての主根, 分枝根の長さを約5%の精度で測定できた. (2) 圃場に埋設したアクリル管は根の伸長方向に著しく影響を及ぼすことはなかった. このことは, 根長は土壌が深くなるに伴ってある一定の傾向をもって変化し, 不規則に増減することがないことからも推察された. (3) 圃場に生育するダイズについて, コアサンプリング法で測定した根長密度と本装置で測定した根長を比較したところ, 両者には密接な直線関係が認められた. 両方法による測定値はほほ同じ程度に大きく変動した. このことは土壌中の根の分布がかなり不均一であることを示している. 以上の結果から, 本装置によって圃場に生育するダイズの根の生長パターンを推定することができ, さらに, コアサンプリング法と同程度に測定数を増せば, 従来の方法に比較して簡易に根系の発達程度を量的に測定することができると考えられた.
  • 岩間 和人, 高田 治, 大波 正寿, 中世古 公男
    1995 年64 巻1 号 p. 86-92
    発行日: 1995/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    バレイショにおける根の生長の品種間差異が, 根のみの遺伝的要因に起因するものか, また他の器官の生長に影響されて発現するものかを明らかにするため, 同一熟性で根量の異なる2品種 (コナフブキと農林1号) の地上部 (穂木) と地下部 (台木) を用いて, 萌芽後約10-15日目に4種類の接木個体 (同一品種間の接木個体と異品種間の接木個体) を作り, 接木の活着後, 根系調査用の特性ポット (直径25 cm, 深さ50cm) に移植し, 充分な灌水条件下で栽培した. 移植期, 第一花房終花期, 最終花房終花期の3時期に茎葉部 (葉, 茎およびストロン), 塊茎および根の乾物重と葉面積を測定し, 各器官の生長に及ぼす穂木と台木の影響を検討した. 実験は3年間行ない, 測定形質について年次を反復とした分散分析を行ない, 接木個体間の差異を解析した. 根重では, いずれの調査期でも接木個体間に有意な差異が認められ, 農林1号を台木とした個体はコナフブキを台木にした個体に比べ著しく大きな値を示した. 台木に比べ穂木の影響は小さかった. 塊茎重においても接木個体間に大きな差異が認められたが, 根重と塊茎重とはいずれの調査期でも負の相関関係を示した. 一方, 茎葉重と葉面積では接木個体間の差異が小さかった. 以上のことから, 供試した2品種間における根の生長の差異は, 塊茎の肥大開始直後における, 根と塊茎との間での乾物分配特性の品種間差異に主として起因するものと結論した.
  • 土屋 幹夫, 三宅 幸, ボニラ ピルバート, 熊野 誠一
    1995 年64 巻1 号 p. 93-101
    発行日: 1995/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    イネの節根 (切断根) に20 mmol-1 NaCl溶液を490 kPaで加圧した場合のイオン排除について, 切断面全体あるいは中心柱部分から出液を採取した場合, 表皮から厚壁細胞層までを貫く穴を開けた場合, 根の表面を部分的にエポキシ樹脂で被服した場合に得られる出液イオン濃度を測定するとともに, ソルガムおよびトウモロコシの根とのイオン排除率の比較を行った. また, 加圧する圧力, 根を取り巻く外液の温度, pH, 溶存気体量, イオン組成および代謝阻害剤の排除率に及ぼす影響を調べた. Na+とCl-の排除率は, イネ<ソルガム<トウモロコシの順に高く, どの植物でも中心柱部分からの出液で高かった. また, 排除率は根の基部でより高く, 表皮から厚壁細胞層を貫く穴を開けると低下した. 一方, 排除率は高圧下で高い値を示したが, 高温, 高pHでは根に外観的変性が認められて低下し, また脱気した場合にも徐々に低下した. イオン別に調べた排除率は, K+ < Cl- < Na+ < Ca2+ < Mg2+の順に高く, 水和半径に関係していることが窺われた. また, 0.5mmol l-1の2, 4-dinitrophenolあるいはNaN3で前処理した根では, Na+排除率の低下とともに出液速度の増大が認められ, 溶液流入の障壁部位が壊れた結果として, イオンの選択性が低下している可能性が推察された.
  • 土屋 幹夫, ボニラ ピルバート, 熊野 誠一
    1995 年64 巻1 号 p. 102-108
    発行日: 1995/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    本研究では, イネの根にNaCl溶液を加圧した場合のNa+排除率の品種間差異を調査した. 実験にはインド型品種, Hsieh-Tso 12, IR4595-4-1-13, Jyothi, Kala-Rata 1-24, Mangasa, Milyang 23, Pokkali および SEW 273-5-13と日本型品種, アケボノおよび朝日の計10品種を供試した. 8葉期の6~8cmの節根を試料とし, 20 mmol l-1 NaCl溶液を窒素ガスを用いて294あるいは686 kPaで加圧し, 出液のNa+濃度を測定した. その外液に対する相対値を用いてNa+排除率の指標とした. その結果, 低圧, 高圧いずれの条件下, いずれの品種の根でも Na+ および Cl- の排除が認められた. そして, 耐塩性品種Milyang 23, SEW 273-5-13および感受性品種Mangasaのように加圧によって排除率が高まる品種, Hsieh・Tso 12のように両圧力下で同様に高い排除率を示す品種, そして, Pokkaliおよび朝日のように両加圧下での排除率が同程度に低い品種が認められた. また, Na+, Cl- および K+の流出量は出液速度とともに増加したが, 同じ出液速度では高圧の場合に, 各イオンの流出量が小さいことが明確になった. また, 加圧下の排除率には, 根のリグニン含有率が高いほど高い傾向が認められた. これらの結果から, 蒸散あるいは浸透調節を駆動力とすると推察される高い引圧が根にかかる場合にはイオン排除率は高まることが推察された.
  • 徐 正君, 藤野 介延, 古谷 ちひろ, 喜久田 嘉郎
    1995 年64 巻1 号 p. 109-114
    発行日: 1995/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    長期間継代培養したイネカルスの再分化と蛋白質新生に及ぼすアブシジン酸の影響について検討した. その結果は下記に要約される. 1) ABAの添加によってカルスの見かけの生長量は低下したが, 乾物重の増加は著しい. 2) 乾物重当たりの可溶性蛋白質の量的増加が認められた. 3) ABAは 14, 18.5, 25, 45kDaの蛋白質を誘導するが, いずれの蛋白質分子も完熟種子胚に存在し, 発芽にともなって消失する. 4) ABA添加培地に生育するイネカルスの可溶性蛋白質の電気泳動像 (SDS・PAGE) は再分化カルスや, 発芽種子胚の可溶性蛋白質の電気泳動と極めて類似している. 5) 培地に10mgL-1ABAを添加して培養すると15日後には再分化細胞集塊が形成され極めて高い頻度で不定芽形成を観察した.
  • 大門 弘幸, 高田 聡志, 大江 真道, 三本 弘乗
    1995 年64 巻1 号 p. 115-120
    発行日: 1995/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    近年我が国において, 緑肥作物としての導入が試みられているクロタラリア (Crotalaria sp.) の乾物生産ならびに窒素吸収特性について, C.juncea, C.spectabilis, C.pallida の3種を供試して, 種間差異を調査した. 圃場試験に先立ち, 発芽率を調査したところ, C.juncea と C.spectabilis は高い発芽率を示したが, C.pallida には磨傷処理が必要であった. 圃場試験において, 播種後 40, 80, 120日目には, C.juncea が他の2種に比べて高い地上部乾物重および全窒素含有量を示したが, 播種後120日目から160日目にかけて著しい落葉が生じ, 全窒素含有量の減少が認められた. 一方, pallida は, 初期生育が他の2種に比べて遅かったが, 播種後120日目から160日目にかけて新葉の抽出が多く, 乾物重および全窒素含有量の著しい増大が認められ, この時期の窒素固定量が大きいことが推察された. 緑肥の分解速度の律速要因の一つであるC-N率は, 播種後160日目には, C.juncea (33)が最も高く, ついでC.spectabilis (27), C.pallida (21)の順であった. 根箱試験において, 生育初期における C.juncea の根系発達が他の2種に比べて優り, 根粒着生も早いことが示された.
  • BRISIBE Ebiamadon Andi, 西岡 大介, 三宅 博, 谷口 武, 前田 英三
    1995 年64 巻1 号 p. 121-130
    発行日: 1995/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    誘導後7日目および14日目のカルスと, 再分化培地に移植してから 3, 5, 7および10日目のカルスの組織を光学顕微鏡および電子顕微鏡で比較した. 培養初期にはいずれのカルスも, 周辺部にほぼ等直径の分裂組織細胞が観察されたが, 再分化培地のカルスでは内部に液胞化した大型の柔細胞が存在した. 分裂組織細胞には多数のオルガネラが観察されたが, 内部の柔細胞には周辺部にのみ細胞質が存在した. 培養日数が経過すると再分化過程の細胞は並層分裂を繰り返し, 放射状の細胞列からなる分裂組織を形成し, この中より茎葉が発生した. 再分化過程の分裂組織のプラスチドは一時的に多量のデンプンを蓄積した. またクリステの発達したミトコンドリアや, 液胞中での物質分解が観察された. 従って茎葉分化過程は高エネルギー要求過程と考えられ, デンプンその他の貯蔵物質の蓄積, 移動, 分解によってまかなわれると考えられた.
  • Nisyawati , 三宅 博, 谷口 武
    1995 年64 巻1 号 p. 131-138
    発行日: 1995/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ラッカセイ (Arachis hypogaea L. 品種 Lokal) 幼苗の葉肉細胞および電場処理した葉肉プロトプラストの葉緑体における微細構造の変化を研究した. 一般に, 葉肉細胞の葉緑体の外形は両凸形であり, 一方葉肉プロトプラストの葉緑体は卵形か球形で, 一部のものは分裂していた. プロトプラストを電場処理すると一部の葉緑体は対をなしていた. あるものは分裂により, 他のものは融合により生じたものと推定された. 電場処理によりプロトプラストの活性化が知られており, これに関連して葉緑体の分裂や融合が促進されたものと考えられた. 2種のタイプの分裂, 即ち, partition と fission が観察された. partition形の葉緑体の分裂の場合には, 通常葉緑体エンベロープの内膜の陥入が観察された. fission形の分裂の葉緑体はダンベル形で, その結合部に電子密度の高い物質が認められた. 一部の葉緑体は2つの葉緑体の融合によって生じだものと推定された. 理由は2つの葉緑体部分は共通のエンベロープを持ち, 融合部の両方のチラコイド系は互いに調和がとれていないことによる.
  • 菅 洋, 西沢 武明
    1995 年64 巻1 号 p. 139-143
    発行日: 1995/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    エチレンはソルガムの子葉鞘と中茎の生長を暗中で阻害した. さらにエチレンは暗中で中茎根の発育を阻害した. しかし, エチレンはある一定の範囲の濃度 (0.01-1 ppm) で中茎の生長を光中で促進した. 子葉鞘と第1葉の生長は同じ条件下で阻害した. 中茎の生長に対するエチレンの最適濃度は, ソルガム品種のタイプにより異なった. エチレンはまた光中で特に100 ppm以上の濃度で中茎の横方向への拡大を誘起した. したがって, 中茎の容積は供試したエチレンのどの濃度下においても, エチレンを除去したものに比べて増加した. 中茎根の発育は光中においては, エチレンによりむしろ促進された. 二酸化炭素は暗中において, 中茎と子葉鞘の生長にエチレンの作用に拮抗的に働いた. ソルガムの中茎はエチレンにより縦方向への生長と横方向への拡大が同じ器宮において同時に起こるユニークな器宮である.
  • 田中 実秋, 山内 章, 河野 恭廣
    1995 年64 巻1 号 p. 144-147
    発行日: 1995/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    作物の根長を容易に測定するための, パーソナルコンピューター, 市販のイメージスキャナーおよび無料で使用できるコンピュータープログラム (NIH Image, ver.1.44) を組み合わせた画像解析による方法を検討した. この方法をルートスキャナー法や直接肉眼で計測する方法 (直接法) と比較しつつ, その精度と実用性を検討した. 根の直径や側根の発生密度の異なるダイズ, トウモロコシ, イネの根を測定に供した. 画像解析法で計測するに当たり, 直径が異なり, あらかじめ長さのわかっているナイロン糸と針金を用いて精度の検討を行い, それらの直径にかかわらずほほ正確な値が得られることを確かめた. 続いて実際の根について計測した結果, トウモロコシ, ダイズでは, ルートスキャナーの計測値は, 直接法で得られた値のそれぞれ約81%と約89%であったが, 画像解析法は精度が高く, 直接法とほぼ等しい値が得られた. イネの場合, 画像解析法で得られた値は直接法よりも約7.5%低かった. これは, イネのように側根の発生密度が高く, 直径が小さい場合, 根の画像を取り込む材料を調節する際に生ずる根の重なり合いが, 完全には避けられないことに起因しでいると考えられる. 一方, ルートスキャナーの計測値は, 直接法による値の約25%であった. また, 画像解析法では, 根長測定にかかる時間も, 直接法に比べ約1/4から1/5に短縮できた.
  • 田中 実秋, 山内 章, 河野 恭廣
    1995 年64 巻1 号 p. 148-155
    発行日: 1995/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    作物の根系を構成する根は, 主軸根としての節根とそれらの根軸上に発生する側根に大別でき, さらにその側根には形態の異なる2つの型の側根が存在する. それらは, 長く, 太く, 高次の側根を発生させるもの (L型側根) と, 短く, 細く, 高次の側根を発生させないもの (S型側根) である. したがって, 根系の形態はこれらの3種類の根の発達程度によって規定することができる. そこで, 耐肥性の程度および生態型 (インド型と日本型) の異なるイネ4品種を用い, こうした観点からみた, 根系形態の品種間差異, および異なる窒素施用量条件下で生育させた時の根系形態の可塑性を評価しようとした. 根系採取は播種後14日目に行なった. その結果, これら4品種間で明確な根系形態の差異が存在することを見いだした. そしてその差異はまず総側根長が総根長に占める割合において認められ, 品種の生態型によって整理することができた. また, S型, L型側根の根数比においてさらに顕著な品種間差異を認め, これは品種の耐肥性によって整理できた. 根系を構成する各根の異なる窒素施用量に対する反応性 (可塑性) についてみると, 発生数における反応は3者間で明確に異なっていたが, 伸長反応では類似の傾向を示した. また, 根系全体でみると, 異なる窒素施用量に対する根系形態の可塑性は, 耐肥性の小さな1品種でとくに大きかった.
  • 井上 吉雄, 森永 慎介
    1995 年64 巻1 号 p. 156-158
    発行日: 1995/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
  • 島田 尚典, 冨田 謙一, 宗形 信也
    1995 年64 巻1 号 p. 159-165
    発行日: 1995/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
  • 小山田 善三
    1995 年64 巻1 号 p. 166-171
    発行日: 1995/03/05
    公開日: 2008/02/14
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