抄録
出穂期がほぼ等しく分げつ性に優れる半矮性インド型稲のIR36と分げつ性の劣る穂重型日本型稲の黄金錦を供試し, 遮光と培地窒素濃度に対する分げつ反応の品種間差異について, 乾物生産特性の面から解析を行った. 1. 1/5000aワグネルポットを用いて遮光 [0(無遮光), 40, 77%] と窒素濃度 [10, 20(標準), 40ppm] を組み合わせた水耕栽培の結果, 両品種とも遮光程度が強く窒素濃度が低い区ほど分げつ数は減少したが, いずれの条件下でもIR36の最高分げつ数は黄金錦の2~2.5倍の値を示した. 対照 (無遮光・標準窒素濃度) 区に対する各処理区の分げつ発生割合をみても, IR36は黄金錦よりも高く, 環境要因の変動に対して安定した分げつ能力を示し, とくに強遮光条件下での差異が大きく認められる傾向にあった. 2. 両品種とも地上部乾物重の増加に伴って分げつ数は多くなっだが, 乾物重が同一水準での分げつ数はIR36が黄金錦に優った. これには分げつへの乾物分配率がIR36で優れていることが密接に関係しており, 黄金錦の無遮光区とIR36の強(77%)遮光区の割合がほぼ等しかった. 一方, 両品種の遮光および窒素濃度の変動に伴う分げつ数の多少は主に乾物生産量に支配された.