日本作物学会紀事
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水稲水利用効率の地域・年度間比較 : 第1報 気象および植物体要因を組み入れた群落蒸散量の推定
足立 文彦小葉田 亨有本 雅幸今木 正
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1995 年 64 巻 3 号 p. 509-515

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抄録
圃場条件下での蒸散量の連続測定は極めて困難である. そこで, 気象要因と定期的に測定したいくつかの植物体側要因の測定値を用いて, 水稲の蒸散量を正確に予測することを試みた. 水稲品種日本晴を水田栽培し, イネの全生育期間について小型ライシメーターを用いて蒸散量(T), 蒸発散量(ET=T+E, E:水面蒸発量)を測定した. 同時に, 気象要因から算出するPenman法, さらに群落構造を加味したVan Bavel法, 気象要因, 群落構造, 気孔伝導度(gs)を加味したPenman-Monteith法を用いて推定蒸発散量(Ec)を計算し, ET(実測値)と比較した. その結果, 3種の方法の中でPenman-Monteith法が実測値とのずれが一番少なかった. ただし, この方法には植被抵抗(rc)の計算に, 上位葉のgs測定値のみを用いるという問題があった. そのため, さらにPenman-Monteith法のrcを直達日射受光率によって重みづけて適用する方法を試みた. この方法でETを求めると, 実測値との適合性がさらに高まった. さらに, TはETと葉面積指数(LAI)を変数とする式によって精度よく推定できた. その結果, Penman-Monteith法を用いた上述の修正Ec値から推定Eを除いて求めたTの推定値は, 実測値と極めてよく一致した. 以上から, イネの全生育期間にわたる群落蒸散量は連続して蒸散量を実測しなくとも, Penman-Monteith法に, 直達日射受光率から求めた修正rcとLAIで推定したT/ET比を組み合わせることにより, 十分精度よく推定できることが明らかとなった.
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