抄録
世界の各地域を代表するイネ多数品種とその祖先種を用いて, 暗条件下の幼植物の節間の伸長特性を検討した. 玄米を消毒後, 0.8%寒天培地を含む試験管内に置床し, 30℃, 完全暗条件下で14日間無菌培養した. 1. 国際イネ研究所がコアコレクションとして推奨している260品種(Oryza sativa L.)に, 日本の水稲品種ササニシキとコシヒカリを加えた262品種を用いて, 幼植物の節間伸長特性(中茎長, 第1節間長, 第2節間長の相対的関係)からタイプ分けした結果, イネ品種群は大きく3つのタイプに集中した. このうち, 第2節間長が最大となるタイプ5とタイプ6が合わせて全調査品種の79.7%を占めた. 中茎のみが伸長するタイプ(MCタイプ)は全調査品種の14.4%を占めた. 2.MCタイプは, バングラデシュ, ブータン, ネパール, インド, イランを含めたインド亜大陸地域のヒマラヤ山間丘陵地帯に比較的高頻度で認められた. さらに, Oryza属の6種の近縁種の中で, MCタイプは栽培種O.sativaの祖先種O.rufipogonとO.nivaraにおいて栽培種に比べて極めて高い出現頻度で認められた. 3. パナマ産焼畑品種(6品種)と近代品種(3品種)の中で, 焼畑品種においてMCタイプが比較的高頻度で認められた. これより, MCタイプの出現と播種法に関連性があることが示唆された.