日本作物学会紀事
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64 巻, 3 号
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  • 山本 晴彦, 鈴木 義則, 岩野 正敬, 早川 誠而
    1995 年 64 巻 3 号 p. 467-474
    発行日: 1995/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    西南暖地におけるイネの主要病害である葉いもち病を対象に, 目視調査により求めた発病程度と赤外放射温度計を用いて得られた葉温との関係を定量的かつ経時的に解析した. 葉いもち病菌の接種4日前および接種時は, 罹病性品種ヒヨクモチと抵抗性品種レイホウとの間には葉温およびポロメータにより得られた蒸散速度の差異がきわめて小さかった. 接種後19日において, 可視写真からでは罹病性品種ヒヨクモチの個体群に症状を確認できなかった場合でも, 熱赤外画像では個体群の一部分に葉温が抵抗性品種レイホウより平均1.1℃高くなっている部分が明瞭に現れていた. 葉温分布は, 葉いもち病の調査基準により求めた発病度の結果とよく一致することが明らかになった. ヒヨクモチとレイホウの葉温差と発病度には2次関数的な関係が認められ, 発病度の低い段階での葉温勾配は大きい傾向にあった. 葉いもちの発病度(%)=10.56X2+0.582X-0.295(r=0.999***)ここで, Xはヒヨクモチとレイホウの葉温差(℃)である. 発病度の進行に応じて罹病性の相対蒸散率が低下したことから, 葉いもち病の発病により葉からの蒸散が強制的に低下し潜熱に使われる部分が減少したことが, 結果として葉に熱が蓄積し葉温が高くなったと推察できた.
  • 趙 東夏, 佐々木 治人, 石井 龍一
    1995 年 64 巻 3 号 p. 475-482
    発行日: 1995/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    韓国において, 収量の上で耐塩性が異なるとされている水稲品種, 6品種にNaCl処理を施し, 幼植物の相対生長率(RGR)の低下程度を比較した. RGRの低下が小さかった品種を耐塩性の高い品種, RGRの低下が大きかった品種を耐塩性の低い品種とした. RGRを葉面積比(LAR)と純同化率(NAR)とに分割し, 各々に対するNaCl処理の影響を調べたところ, NaCl処理によるLARの低下程度には耐塩性の低い品種と高い品種との間に大きな差はなかった. しかし, NARの低下程度には両品種群間に大きい差が認められ, 耐塩性の低い品種で, 低下程度が大きかった. そこで, NaCl処理をした植物体の単位葉面積当り光合成速度(LPS)を比較したところ, NARの傾向と同様, その低下程度は耐塩性の低い品種で大きい傾向を示した. このことから, イネの乾物生産速度に対するNaClの影響は, 主にLPSを通じて起こっていると考えられた. さらに, LPSにおける耐塩性の機構を知るために, 耐塩性の高い品種と低い品種を各1品種ずつ選び, NaCl処理をした植物体の葉身における炭酸固定酵素, Rubiscoの含量および葉身の浸透ポテンシャルの低下程度を調べた. 耐塩性の高い品種では, 低い品種に比べ, 吸収Na当リRubiscoの含量の低下程度は小さく, NaによるRubisco合成の阻害が小さいことが示唆された. また, 耐塩性の高い品種では, NaCl処理後の葉身の浸透ポテンシャルの低下がより早く進み, 浸透調節能力が勝っていると考えられた.
  • 津野 幸人, 山口 武視, 中野 淳一, 面地 理
    1995 年 64 巻 3 号 p. 483-491
    発行日: 1995/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水稲個葉における葉面積当たり窒素含有量(mgNdm-2)と純光合成速度(Pn)との関係で, 同じ窒素含有量でありながらもPnに違いの起こる原因を, 水ポテンシャル, 葉位, 葉の展開後日数を考慮して解析し, さらに根の呼吸速度で示される根の機能の関連性を議論した. 品種ヤマビコとオオチカラを鉢で育て, 幼穂形成期から登熟初期にかけて, 27℃に空調された室内で照度45~50Klx, 25℃の条件下で純光合成速度を測定した. その直後に, 同じ葉についてプレッシャーチェンバー法で葉身木部水ポテンシャル(Wp)を測定した. 両品種ともに第I葉(最上位完全展開葉)から第III葉までは, 全測定時期をとおしてmgNdm-2とPnとの間に高い正の相関関係があったが, 第IV葉ではそれが認められなかった. 葉のageが若くて(展開後日数15日以内), mgNdm-2の多い第I葉はWpと高い正の相関があった. この傾向は第II葉においてもmgNdm-2を一定範囲にとると同様に認められた. 第III葉では, 同じmgNdm-2の葉でもWpの低い葉で高いPnを示し, 上位葉とは逆の傾向にあることを認めた. 第IV葉のPnはmgNdm-2よりもWpの影響を強く受けて, Wpが-1.4MPaという低い側で高いPnを示した. 第III, IV葉のWpは, その個体の有する根の呼吸速度と高い負の相関関係が認められた. 根の老化した個体では, 水の通導抵抗が増大するため下位葉は気孔開度を減じて葉内水分を保つため, Wpは高まるがPnは低下すると考察した.
  • 津野 幸人, 面地 理, 山口 武視, 中野 淳一, 赤井田 里美
    1995 年 64 巻 3 号 p. 492-499
    発行日: 1995/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    鉢栽培した水稲(品種:ヤマビコ, オオチカラ, 荒木)の個葉を温度25℃, 照度45~50Klxの条件で, 同化箱により純光合成速度(Pn)を測りながら葉身基部を葉鞘から切離した. 同時に, 葉内水分の変化を非破壊的にβ線透過率(I/I0)で測定した. 処理前の純光合成速度(Pn*)の高い葉, および著しく老化が進んだ葉を除いて, 切離処理後1分間以内にPnは急激な一時的上昇を示し, 以後急速に低下した. そのPnの最大増加率は, 処理前のPnが低いほど大であった. また, 切離処理によるPnの増加量(ΔPn)は, I/I0で示される葉内水分の減量(ΔI/I0)の多いものほど大であった. これらの関係は次式で表現でき, 計算値は実測値とよく適合した. ΔPn=4.95exp(-0.06Pn*)・Δ(I/I0)(r=-0.965**) 葉内水分量と葉内空気量とは負の相関があることより, 水分過剰のときは葉肉拡散伝導度が抑制されると推論した. これは, 切離処理によるPnの増加は, 気孔開度には変化がなくて, 葉内CO2濃度が低下するという実験結果を根拠とした. 処理前の葉身に水分が多くてPn*が抑制されている葉ほど, 葉内水分の減少過程において一時的に大きなΔPnが得られることとなる. 葉内水分の過多によるPnの抑制は, 早朝および曇天時日中でも生じていることを野外実験で確かめた.
  • 渡邊 肇, 高橋 清
    1995 年 64 巻 3 号 p. 500-508
    発行日: 1995/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    世界の各地域を代表するイネ多数品種とその祖先種を用いて, 暗条件下の幼植物の節間の伸長特性を検討した. 玄米を消毒後, 0.8%寒天培地を含む試験管内に置床し, 30℃, 完全暗条件下で14日間無菌培養した. 1. 国際イネ研究所がコアコレクションとして推奨している260品種(Oryza sativa L.)に, 日本の水稲品種ササニシキとコシヒカリを加えた262品種を用いて, 幼植物の節間伸長特性(中茎長, 第1節間長, 第2節間長の相対的関係)からタイプ分けした結果, イネ品種群は大きく3つのタイプに集中した. このうち, 第2節間長が最大となるタイプ5とタイプ6が合わせて全調査品種の79.7%を占めた. 中茎のみが伸長するタイプ(MCタイプ)は全調査品種の14.4%を占めた. 2.MCタイプは, バングラデシュ, ブータン, ネパール, インド, イランを含めたインド亜大陸地域のヒマラヤ山間丘陵地帯に比較的高頻度で認められた. さらに, Oryza属の6種の近縁種の中で, MCタイプは栽培種O.sativaの祖先種O.rufipogonとO.nivaraにおいて栽培種に比べて極めて高い出現頻度で認められた. 3. パナマ産焼畑品種(6品種)と近代品種(3品種)の中で, 焼畑品種においてMCタイプが比較的高頻度で認められた. これより, MCタイプの出現と播種法に関連性があることが示唆された.
  • 足立 文彦, 小葉田 亨, 有本 雅幸, 今木 正
    1995 年 64 巻 3 号 p. 509-515
    発行日: 1995/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    圃場条件下での蒸散量の連続測定は極めて困難である. そこで, 気象要因と定期的に測定したいくつかの植物体側要因の測定値を用いて, 水稲の蒸散量を正確に予測することを試みた. 水稲品種日本晴を水田栽培し, イネの全生育期間について小型ライシメーターを用いて蒸散量(T), 蒸発散量(ET=T+E, E:水面蒸発量)を測定した. 同時に, 気象要因から算出するPenman法, さらに群落構造を加味したVan Bavel法, 気象要因, 群落構造, 気孔伝導度(gs)を加味したPenman-Monteith法を用いて推定蒸発散量(Ec)を計算し, ET(実測値)と比較した. その結果, 3種の方法の中でPenman-Monteith法が実測値とのずれが一番少なかった. ただし, この方法には植被抵抗(rc)の計算に, 上位葉のgs測定値のみを用いるという問題があった. そのため, さらにPenman-Monteith法のrcを直達日射受光率によって重みづけて適用する方法を試みた. この方法でETを求めると, 実測値との適合性がさらに高まった. さらに, TはETと葉面積指数(LAI)を変数とする式によって精度よく推定できた. その結果, Penman-Monteith法を用いた上述の修正Ec値から推定Eを除いて求めたTの推定値は, 実測値と極めてよく一致した. 以上から, イネの全生育期間にわたる群落蒸散量は連続して蒸散量を実測しなくとも, Penman-Monteith法に, 直達日射受光率から求めた修正rcとLAIで推定したT/ET比を組み合わせることにより, 十分精度よく推定できることが明らかとなった.
  • 橘 尚明, 吉川 重彦, 池田 勝彦
    1995 年 64 巻 3 号 p. 516-522
    発行日: 1995/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    三重県北部茶栽培地帯の茶園から150ha, 126筆を選び, 施肥量および土壌の理化学性, 根の分布状態を調査するとともに, 酸性化の要因を土壌溶液法により解析した. 年間10a当たり施肥量は, 窒素58~283kg(平均147kg), リン酸9~107kg(同57kg), カリウム10~81kg(同46kg)であり, 特に窒素量は200kgを越える超多肥茶園が11%を占めた. 施肥窒素量が140kg以上の茶園では, うね間の表面から深さ20cm程度までの第1層における根の分布は極端に少なく, 180kg以上ではこの土層内に健全根が全く見られなかった. 栄養診断基準となる一番茶開葉初期の越冬葉窒素含量は, 施肥窒素量200kg程度までの増施で増加傾向はみられたが, 必ずしも施肥量と対応しなかった. そして200kgを越えると越冬葉窒素含量は低下する傾向さえ認められた. 各茶園におけるうね間部の土壌pH(H2O)は, 2.9~5.9の範囲に分布したが, 第1層では74%の茶園が4.5以下の強酸性を示し, さらに地表から深さ20cm以上の第2層では, ほとんどの茶園が4.5以下であった. そして施肥窒素量が多いほど土壌pHは低い傾向がみられた. また, うね間部と株元部の土壌溶液濃度は著しく異なり, うね間では陽イオンに対して陰イオンが多く, 特にSO42-が多かった. 土壌溶液の強酸性の主要因は, NO3-やSO42-の高濃度によるもので, 陰イオンが陽イオンより多いときpHは4以下であった. この両イオンの差を土壌溶液中のAl2+が陽イオンとして補償している場合は, pHは3台であったが, さらに陰イオンが多くなるとpHは3以下の強酸性を示した. このように多肥栽培下にある茶園土壌の化学性は, 極めて異常な様相を呈し, 茶樹根の発達阻害や根腐をもたらしていることが明らかとなった.
  • 橘 尚明, 吉川 重彦, 池田 勝彦
    1995 年 64 巻 3 号 p. 523-528
    発行日: 1995/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    多肥栽培茶園土壌中の無機態窒素の動態, ならびに減肥過程における根の分布状況の変化および一番茶アミノ酸含量への減肥の影響について検討した. 10a当たり施肥窒素量が133kgから293kgまで種々異なる6茶園における土壌溶液中の無機態窒素量の年平均値は, 0.3から1.3eq/m3の変動が見られたが, 施肥量との間には高い相関が認められた. また, 土壌溶液中の窒素量は施肥量および調査時期によって異なったが, 特にうね間部での変動が大きく, その幅が1.0eq/m3以上に達したほ場もあった. 一方, 株元部では0.1eq/m3前後の低濃度で推移し, 年間変動は殆どみられなかった. また, 土壌溶液中の窒素濃度は8月初旬に高く, うね間部および雨落ち部では表層から深さ1m層までの平均濃度は495ppmであったが, 層位による差異は大であった. しかし株元部では100ppm以下で, 層位による差も僅かであった. そして土壌溶液窒素濃度280ppm以上の土層中には, 根の発達が認められなかったことから, この付近の窒素濃度によって根の分布域は規定されるものと推定した. 10a当たり年間施窒素量200kg以上から120kgレベルまで急激に減肥すると, 翌年の一番茶アミノ酸含量は低下したが, 減肥処理2年後に多肥慣行区と同程度にまで回復した. これは多肥栽培により制限されていたが根圏域が減肥により回復し, 窒素吸収効率が向上したためと推察された.
  • 山口 武視, 津野 幸人, 中野 淳一, 真野 玲子
    1995 年 64 巻 3 号 p. 529-536
    発行日: 1995/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水稲の幼穂形成期から登熟期にかけて茎基部からの出液を採取し, 出液中のアンモニア態窒素, 珪酸ぉよびカルシウムを定量して, それらと根の呼吸速度との関係を検討した. 処理区として, 堆肥, 生ワラなどの有機物を施用した区, 多窒素区および75%遮光区などの合計11区を設けた. 出液中のアンモニア態窒素濃度は, 遮光区が登熟期平均で8.3ppmと他の処理区平均0.6ppmより高い値を示した. 遮光区の根は, 全糖含有率が0.2%と極端に低下(対照区1.0%)しており, 根の全糖含有率が低下すると出液中のアンモニア態窒素濃度が上昇する傾向が認められた. 出液中の珪酸濃度は, 幼穂形成期に高く, その後登熟の進行とともに漸次低下した. これは根の呼吸速度の変化と同様の傾向であった. 出液中のカルシウム濃度は生育期間を通して, 概ね一定濃度で推移した. 根の呼吸速度と出液中の珪酸濃度および出液中の珪酸含有量とは, 高い正の相関関係があった. また, 根の呼吸速度と出液中の珪酸:カルシウム比との間には, 正の相関があり, 根の呼吸速度が高い場合には, 珪酸:カルシウム比が高いことを認めた. したがって, 呼吸速度の高い根を有する水稲では, 葉身中の珪酸含有率が高くなる可能性が示唆された.
  • 名越 時秀, 川島 栄
    1995 年 64 巻 3 号 p. 537-544
    発行日: 1995/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水稲の根の生長に対するトリアコンタノール(TRIA)の促進効果およびその発現時期を明らかにし, さらに, 根の発達と玄米重の関係を把握するため, 水稲コシヒカリを用いて根の発達を中心に調査・検討した. TRIA処理による根重の増大は, 散布後2週間程度で現れ, 成熟期まで持続することが分かった. 生育後期にTRIA処理区で根の絶対量が多く, しかも, 地上部重および葉面積に対する根重の割合(R/T比およびRW/LA比)が大きかった. 処理により, 根の全糖含有率および根の呼吸量が高められた. 玄米重は, 出穂期散布区(7%)と3期重複散布区(9%)でとくに増加効果が認められた. 遮光条件下では, TRIA処理による玄米重の増加効果はみられなかったが, 根の発達は促進された. 出穂期および成熟期の根重, R/T比およびRW/LA比は, それぞれ玄米重と正の相関を示した. 以上の結果から, TRIA処理された水稲では活力の高い根の発達が促進され, しかも, 成熟期まで持続することにより根の吸水能力が増大し, 気孔開度が大きくなり, 高い光合成能力を成熟期まで持続することが玄米重の増加に導くものと推察された.
  • 王 余龍, 山本 由徳, 新田 洋司
    1995 年 64 巻 3 号 p. 545-555
    発行日: 1995/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    中国江蘇省で育成された多収性(日本型)水稲もち系統9004(L9)と対照品種として出穂期がほぼ等しいうるち品種コガネマサリ(KM)を供試し, 穂肥の窒素施用量の多少とリン酸施用の有無を組み合わせて栽培し, L9の多収要因の解析を行った. 両品種とも精玄米収量は, 主に1穂籾数の差に基づく面積当たり籾数の差によってL9では675~820gm-2, KMでは568~641gm-2で, 多窒素・リン酸施用区で最も高くなった. 収量はもみわら比と, またもみわら比はシンク容量(m2当たり籾数×精籾1粒重)と高い正の相関関係を示した. 穂肥のリン酸施用により, 1穂籾数の増大とそれに伴う登熟歩合の低下抑制により増収したが, その程度はKMよりL9で, また少窒素区より多窒素区で顕著であった. リン酸施用は, 窒素単独施用区よりもさらに葉色値を向上させ, 純同化率を高め, 登熟期間の乾物生産量を向上した. 一方, 両品種の各処埋区のm2当りの平均収量はL9では735g, KMでは588gで約150gの差がみられたが, これは主に千粒重の差異(L9:27.7g, KM:23.8g)によってもたらされた. 両品種の籾殻重と登熟期間には差異は認められなかったが, L9では登熟期間前半の籾の乾物蓄積速度がKMに比べて速く, このことが両品種の千粒重の差異の主要因と考えられた. これにはL9の籾の水分含有率が高く推移し, シンク活性が高かったこと, 穂揃期の稈+葉鞘の貯蔵炭水化物が多く, さらに稈から穂にかけての維管束系の発達がKMに比べて優っていたことが関係したと推定された.
  • 山本 由徳, 池尻 明彦, 新田 洋司
    1995 年 64 巻 3 号 p. 556-564
    発行日: 1995/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    播種日を変えて同一条件下で育成した葉齢の0の出芽苗から葉齢7.2の成苗(不完全葉を第1葉とする)までの計11種の苗を同一日に移植して, 昼/夜温度が25/20℃と20/15℃の自然光型ファイトトロン内で生育させ, 葉齢を異にする苗の発根および出葉からみた活着特性, 初期生育並びに出穂期の差異について検討した. 1) 葉齢の進んだ苗ほど活着根となる冠根の発生節位が上位で新根発生数が多くなり, 移植後7日目の総新根長, 新根乾物重は優った. 一方, 葉齢が若い苗ほど移植後7日間に抽出した葉の平均葉身長が短いために葉齢増加量は優った. また, 移植に伴う植傷み(移植後3日間の出葉速度の低下)程度も葉齢の若い苗ほど小さい傾向がみられ, 葉齢0の出芽苗では植傷みは全く認められなかった. 2) 移植後7日目の新根数は, 葉齢増加量と非常に高い有意な負の相関関係を示したが, 抽出葉身長とは非常に高い有意な正の相関関係を示した. 3) 葉齢の進んだ苗ほど初期生育は優ったが, 葉齢の若い苗ほど移植後に生長速度が早く, 各生長形質の葉齢による差異は(1)草丈≒葉齢(2)分げつ数≒根数(3)乾物重の順に移植後日数の経過とともに小さくなる傾向がみられた. 4) 最終主稈葉数は, 15.6~16.5枚で大差なかったが, 葉齢の若い苗ほど主稈の止葉展開日並びに株当りの出穂期は遅延した.
  • 飛田 有支, 平沢 正, 石原 邦
    1995 年 64 巻 3 号 p. 565-572
    発行日: 1995/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    作物の水分欠乏は, 土壌深くまで水分が著しく減少する条件とともに, 水環境が湿潤から乾燥へと急激に大きく変化するような条件でもおこる. 土壌水分低下に対する反応の品種間差を検討し, 品種間差をもたらす生理, 生態, 形態的性質を明らかにすることは, 安定し高い収量をあげる品種を育成するために必要である. 本研究は, ダイズの低土壌水分に対する反応の品種間差を明らかにするため, まず, 降水量の多いわが国と比較的少ないアメリカ合衆国で栽培されている種々の品種を生育初期から土壌水分が減少する条件で生育させた. その結果, 土壌水分低下に伴う乾物重や子実重の減少程度は, アメリカ合衆国の品種がわが国の品種に比較してとくに小さい傾向はなかった. しかし, この減少程度は晩生の品種に比べて早生の品種で小さく, 生態型がほぼ等しい品種間でも, 明らかに異なった. そこで生態型がほぼ等しく, 減少程度が異なるエンレイとタチナガハ, HarosoyとBeeson, WayneとS-100の3組, 6品種を選び, 各組み合わせの品種が相互に隣接する条件で生育させた. その結果, タチナガハ, Beeson, S-100は, 低土壌水分条件でも, 日中の葉の木部の水ポテンシャルの低下が小さく, 葉面積の減少, 光合成速度の日中低下が抑制され乾物生産が高かった. これらの品種はいずれも夜明け前の葉の木部の水ポテンシャルが高いことから, 根系が良く発達していることが推察され, 品種間差をもたらした共通の要因として根系の発達の相違が考えられた.
  • 飛田 有支, 平沢 正, 石原 邦
    1995 年 64 巻 3 号 p. 573-580
    発行日: 1995/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    前報において, 生態型, 伸育型が等しくても品種によって土壌水分の低下に伴う乾物重や子実重の減少程度が異なり, この相違には根群の発達程度の相違が関係していることが推察された. この点をさらに詳しく検討するため, エンレイとタチナガハを土壌水分の減少する条件で個体群として生育させた. タチナガハはエンレイに比べて低土壌水分条件において登熟期間の日中の葉の木部の水ポテンシャルが高く, 拡散抵抗が低く維持され, その結果, 純同化率(NAR)の減少程度が小さいことによって, 乾物生産と子実重の減少程度が小さいという, 前報と同様の結果が個体群として生育させた時にも得られた. さらにタチナガハはエンレイに比べて, 登熟期の低土壌水分条件で葉の老化に伴う光合成速度の減少が小さく, これもタチナガハのNARの減少が小さいことに関係していた. 低土壌水分条件では, コアサンプリング法で測定した根長密度, ミニリゾトロン法で測定した根長のいずれもタチナガハはエンレイに比べて大きく, 両品種の差は土壌の深層で顕著であった. 土壌水分の減少量から推定した吸水量は土壌の深層でタチナガハで大きく, 土壌水分が減少するとタチナガハはエンレイに比べて根系が土壌深くに密に良く発達する性質をもつことが明らかとなった. 以上のことから, 低土壌水分条件で認められた地上部の生理的性質の両品種の相違は, このような根系の発達の相違によってもたらされたものと考えられた.
  • 渡邊 肇, 高橋 清
    1995 年 64 巻 3 号 p. 581-586
    発行日: 1995/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    イネ幼植物の生育型の一つであるMCタイプの意義を明らかにする目的で, その代表的な品種Basmati 217を用いて, 幼植物中のMC個体の外部形態および内部形態の特徴を調べた. 玄米を消毒後, 0.8%寒天培地を含む試験管に置床し, 30℃, 完全暗条件下で14日間無菌培養した. MC個体の鞘葉長およぴM/C比(中茎長/鞘葉長の比)の頻度分布をとると, それぞれ大小2つの山が認められた. この2つの山は, 鞘葉節冠根の有無によって分けることができる2つのグループが混在することによるものであった. そこで, 冠根非出現型MC個体(MCN)と冠根出現型MC個体(MCR)に分けると鞘葉長の平均値はそれぞれ, 8.3±0.5mm, 35.2±1.4mm, M/C比の平均値はそれぞれ, 16.6±0.9, 2.8±0.3となり明らかに異なっていた. MCRでは中茎長と鞘葉長との間に, 1%レベルで有意な負の相関(r=-0.537)が認められたが, MCNでは認められなかった(r=+0.032). MC個体は, 発芽時に比べて葉の分化は進んでいた. しかし, MCNはMCRに比べて, 分化葉数が0.6枚少なく, 葉の発育が遅延していた. 以上の結果をまとめると, 暗条件下におけるイネ芽生器官の伸長様式は鞘葉からの第1葉以降の葉の抽出, 鞘葉長, 鞘葉節冠根の有無により, 冠根非出現型MC個体, 冠根出現型MC個体, 非MC個体の3つに分けることが妥当であるとの結論を得た. なお, 深播き適応性について若干の考察を行った.
  • 崔 亨吉, 武岡 洋治, 和田 富吉
    1995 年 64 巻 3 号 p. 587-592
    発行日: 1995/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    イネの穂および小穂の形成に対する塩の影響を発育形態的に解明する目的で一連の研究を行った. 本報では, 穂および小穂形成と深く関わる幼穂形成期の茎葉と出穂の外部形態について塩処理による影響を調べた. 実験は1992年と1993年に2度実施し, 日本型水稲品種の日本晴, ジャワ型水稲のBlue bonnet, および土壌ストレス感受性の日本型品種孝之助をそれぞれ供試した. 幼穂形成期, および幼穂形成期から登熟期まで塩化ナトリウム液を処理し, 生育状況と塩害病状について観察調査した. 塩障害の現れ方は調査形質によって品種間で異なっていた. 幼穂形成期の塩処理により, 葉身先端部から緑葉が黄変し, 下位葉から枯れ上がった. 処理塩濃度と処理期間が長くなるにつれて, 緑葉数が減少し, 枯れ葉の葉数が増加した. 一層進んだ塩障害症状下では, 最上位の止葉枯れが下位葉の枯れより先行していた. 後期塩処理の影響として稈部の伸長抑制や, 高位節における弱小分げつ遅発が認められた. また出穂開始の遅れや, 出穂期間の延長が見られたが, これら出穂遅延の影響の現れ方は品種により異なっていた. 出穂障害としては, 転倒出穂や穂の出竦み現象が生じた. 以上の結果を既往の報告と比較することにより, 異なる不良環境条件下で生ずる外部形態的変異に共通性があることを見出し, その生理的背景について考察した.
  • 崔 亨吉, 武岡 洋治, 和田 富吉
    1995 年 64 巻 3 号 p. 593-600
    発行日: 1995/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    イネの塩に対する反応を発育形態学的見地から研究するため, イネの穂と小穂の形成への塩化ナトリウム処理の影響を調査した. 本報の実験材料と調製は前報と同様である. 処理塩濃度の増加に伴い, 枝梗と小穂の分化数が減少し, 分化した枝梗と小穂でも, 生長の減退したものが増加した. このため処理塩濃度が高くなるにつれて, 一穂当たりの一次および二次枝梗および籾の数がいずれも減少した. また塩濃度の上昇により稔実歩合も低下した. 塩処理により穂および小穂には, 形態的異常が多様に発生した. 例えば, 一次枝梗の輪生と双生, 穂最上位の一次枝梗の異常伸長, 止葉の糸状化, 無芒品種の芒生化, 外穎と内穎の畸形化, 小穂の半透明化および苞毛の脆弱化などが認められた. 品種により一つの穂内の退化一次枝梗と正常な一次枝梗の大きさの差が大きい事例やほとんど差のないものが見られた. 以上の結果をもとに, 塩の影響と他の不良環境による影響とを比較したところ, 不良環境要因が異なってもイネの穂および小穂の形態的変異には共通性のあることが認められた. これらの環境諸条件に反応する穂や小穂の形態形成過程について考察した.
  • 松江 勇次, 小田原 孝治, 比良松 道一
    1995 年 64 巻 3 号 p. 601-606
    発行日: 1995/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    1次枝梗粒と2次枝梗粒におけるアミロース含有率, アミログラム特性および貯蔵タンパク質の分画の差異について検討した. 食味が優れている1次枝梗粒のアミロース含有率は, 2次枝梗粒に比べて高かった. 1次枝梗粒のアミログラム特性値は, 2次枝梗粒に比べて最高粘度は高く, ブレークダウンは大きく, 糊化開始温度は低かった. したがって栽培条件が同じ場合の同一品種内ではアミロース含有率が高く, 最高粘度は高く, ブレークダウンは大きく, 糊化開始温度は低い粒の方が食味は優れることが判明した. 貯蔵タンパク質の分画についてみると, 1次枝梗粒は2次枝梗粒に比べて, プロラミン含有率とアルブミン+グロブリンの含有率の差は明らかでなかったが, 合計のタンパク質およびグルテリンの含有率は低かった. また, 貯蔵タンパク質の分画の構成比率には1次枝梗粒と2次枝梗粒間で差がなかった. 品種間で検討すると, 良食味品種コシヒカリは日本晴, レイホウに比べて, 1次枝梗粒, 2次枝梗粒ともに合計のタンパク質, グルテリンおよびプロラミン含有率は低かった. これらのことから, 米の食味にはグルテリンとプロラミンが重要な役割を果しており, 同一品種内ではグルテリンが, 品種間ではプロラミンが食味評価の指標として使用できることが考えられた.
  • 大場 伸哉, 鷲見 典子, 藤本 文弘, 安江 多輔
    1995 年 64 巻 3 号 p. 607-615
    発行日: 1995/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    イネの脱粒性は, 護穎基部に形成される離層組織と密接な関連がある. 本研究では, イネの代表的な脱粒性遺伝子であるsh-2について, その形質発現を調べた. 実験には, 脱粒難の日本水稲品種農林29号とその脱粒性準同質遺伝子系統SH-AJNT, indicaの脱粒性品種低脚烏尖を用いた. 脱粒性遺伝子sh-2が形態に及ぼす作用を明らかにする目的で, 農林29号とSH-AJNTの護穎基部のミクロトーム切片を作成し検鏡した. 脱粒性遺伝子を持つSH-AJNTでは離層組織の形成が期待されたが, 出穂19日前の穎花分化期には離層組織は認められなかった. また, 脱粒難の農林29号においても離層は形成されていなかった. しかし, 出穂17日前の生殖細胞形成期にはSH-AJNTに離層組織と思われる細胞層が観察された. その後, この組織は発達し出穂期には離層組織であることが確認できた. 一方, 農林29号では, 穂の発育全期間を通じ離層組織は観察されなかった. 出穂後の脱粒性程度の変化を調べる目的で, 3種類・系統の穂を3日毎に採取し護穎基部の抗張強度と抗曲強度を測定した. また, 胚乳の大きさと発芽率についても調べた. その結果, 同じ遺伝的背景を持つ農林29号とSH-AJNTとの間の脱粒性強度に出穂後19日までは差はなかったが, その後SH-AJNTでは強度が急激に低下し脱粒易となった. この傾向は, 脱粒性の低脚烏尖でも認められた. 一方, 開花・結実後の1000粒重と発芽率の変化を見ると, 脱粒開始時には両形質とも大きな値を示し, 種子の生長が完了しつつあることがわかった. このことから, 脱粒開始には籾の生長が関係していることが推察された.
  • 中嶋 直子, 遠山 益
    1995 年 64 巻 3 号 p. 616-621
    発行日: 1995/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    エピブラシノライド(EBR)処理はキュウリ上胚軸の伸長を促進した. その際, 上胚軸中の可溶性糖の蓄積が促進されていることが見い出された. 可溶性糖の蓄積は上胚軸の伸長の促進と時間的に一致し, 両者の関わりが示唆された. 更に可溶性糖の成分を調べたところ, EBR処理によって, スクロース量は影響されなかったが, グルコースの量は大きく増加していた. 14C-同化物の量と輸送を調べた結果, EBR処埋は, 光合成による14CO2同化量には影響しなかったが, 14C-光合成産物の上胚軸への輸送を促進した. 更に, 上胚軸へ輸送された14C-糖中のグルコース量が著しく増加した. EBR処理によって起こるこのような変化が, 上胚軸におけるグルコース蓄積の原因の一部であるように思われる.
  • 泉 泰弘, 河野 恭廣, 青島 孝則, 山内 章, 飯嶋 盛雄
    1995 年 64 巻 3 号 p. 622-628
    発行日: 1995/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    根端培養法は, 地上部の影響の除去が可能な点で, 根の生育における品種間の遺伝変異を検出するには優れた実験系である. しかし, 伸長速度の異なる種子根から採取したという前歴や生理的エイジの違いが, 根系発達に大きな影響を与えている可能性がある. そこで本研究では, 供試する根端の生理的・形態的特性が, その後の培養条件下での生育に及ぼす影響を調査した. インド型水稲品種, 台中在来1号と日本型水稲品種, ユーカラを用い, 播種後2~6日目まで根端(長さ1cm)を毎日採取し, 乾物重, 炭素・窒素含量の経日変化を追跡した. 併せて, 別に採取した種子根軸上の側根の出現と側根原基の形成も調査した. さらにそれらの根端を3週間培養した後の根系形態の定量的解析を行った. 両品種とも播種後日数が経過した根端, 伸長速度の小さい種子根から採取した根端ほど生育に劣る傾向を認めた. また種子根軸上に側根や側根原基が観察された3日目以降に根端を採取した場合, L型1次側根の発生は2日目に採取した場合に比べて極めて少なく, それがとくに総根数・総根長に劣る原因と考えられた. 切断時の根端の乾物重, C・N含量は日数経過とともに減少し, その後の根系発達と密接な相関関係を有することが示唆された. これらの結果から, 培養に供試する根端をできるだけ早い時期に採取することによって, 培養系での良好な種子根系の発達が得られると結論した.
  • 郭 康洙, 飯嶋 盛雄, 山内 章, 河野 恭廣
    1995 年 64 巻 3 号 p. 629-635
    発行日: 1995/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水稲芽生えの各器宮における炭素および窒素の分布パターンを経時的に測定し, とくに種子根の主根軸と側根のエイジングに伴う変化を比較検討した. 水稲品種・愛知旭の芽生えを, 根箱を用いて湛水条件下で播種後35日間生育させた. 炭素および窒素含有率は主根軸に比べて側根の方が高く, とくに窒素含有率で顕著であった. 同じエイジの種子根部位において, 炭素および窒素含有量は加齢するにつれて, 両器宮ともに減少する傾向にあったが, 新たな高次(2次)の側根が発根することにより, 側根における窒素含有量の減少パターンが緩和された. 主根軸と側根における炭素および窒素含有量と乾物重から長さへの転形効率は, 播種後21日目以降になると側根の方が主根軸に比べて, 炭素含有量と乾物重では約27倍, 窒素含有量では約12倍高かった. これらの結果は, 主根軸と側根とではエイジングのパターンが異なること, また主根軸より側根の方が, 全根系の代謝活性を制御する器宮として重要な役割を果していることを示唆した. さらに, 播種後12日目以降の主根軸における窒素含有量が増加することや, 側根数が実験終了時まで増加したことは, 水稲の種子根は少なくとも播種後35日目までは生存し, 代謝活性を維持していることを示すものであった.
  • 泉 泰弘, 河野 恭廣, 山内 章, 飯嶋 盛雄
    1995 年 64 巻 3 号 p. 636-643
    発行日: 1995/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    本研究では, 従来からの定法に従って水稲の種子根端を培養する場合における根系形態の特徴を把握するのに最適な培養期間を決定することを目的とした. 培養にはインド型水稲品種, 台中在来1号(TN-1)と日本型水稲品種, ユーカラを供試し, 根系の定量的解析とともにトポロジーおよびフラクタル解析によって根系発達を6週間にわたって追跡した. 量的形質のうち根数・根長はTN-1で4週目, ユーカラで3週目でほぼ一定の値に達した. 一方, 側根の発生・発達に関する形質のうち, L型・S型1次側根の発根密度およびS型1次側根の平均長を用いることによって, 3週目に各品種の根系が持つ形態的特徴を把握できることが明らかとなった. さらに根系の分枝パターンを示す指標となるトポロジー指数のうち, log a/log μ比においては3週目以降に両品種の差異が明確に認識された. 根系形態の複雑さの指標であるフラクタル次元(D)は, 全培養期間を通じて常にユーカラの方がTN-1よりも大きくなっており, この値によっても根系構造の特徴を把握できる可能性が示唆された. これらの結果を総合して, 本研究で採用した培養条件下では, 3週目に採取した水稲の培養種子根系において形態的特徴を調査するのが妥当であると結論した. またフラクタル解析・トポロジー解析がそのために有効な手法であることも明らかとなった.
  • 大段 秀記, 大門 弘幸, 三本 弘乗
    1995 年 64 巻 3 号 p. 644-649
    発行日: 1995/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    マメ科緑肥作物として導入が試みられているクロタラリア属植物(Crotalaria spp.) 6種の葉および茎の搾汁液が後作物としてのコムギの根系の初期生育に及ぼす影響をグロースポーチを用いた方法で調査した. 生葉10gを培養液中で摩砕して調整した搾汁液を施用したところ, 施用後21日目において, 総根長では, 各処理区が培養液のみを施用した対照区に比べて有意に短くなり, C.juncea区とC.pallida区では対照区の40%にまで抑制された. 最長根長においても有意な抑制が認められ, C.juncea区とC.spectabilis区で特に顕著であった. C.spectabilisの施用においては, 葉の搾汁液が茎の搾汁液よりも強い抑制を示し, 1Og区に比べて20g区が抑制程度が大きかった. 地上部および地下部乾物重においては, C.brevidens区, C.juncea区, C.lanceolata区, C.pallida区では明確な影響が認められなかったが, C.spectabilis区では地上部乾物重が対照区に比べて低い値を示した. コムギの根系構造のフラクタル次元は1.27から1.35の値を示し, 搾汁液の施用の影響は認められなかった. 以上のように, クロタラリア属植物の搾汁液はコムギの根の生長を抑制し, その程度に種間で差異が認められた. 本研究で用いたグロースポーチ法は, 根系を容易に観察できることから生育初期におけるアレロパシーの新しい評価法として期待できると思われる.
  • 大門 弘幸, 三位 正洋
    1995 年 64 巻 3 号 p. 650-655
    発行日: 1995/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    土壌中に生息する植物寄生性有害線虫の密度低減に効果があるとされるルドベキア(Rudbeckia hirta L.)において, Agrobacterium rhizogenesの野生菌株(A-5株)を感染させることによって毛状根を誘導した. 毛状根は, 無機塩濃度を1/2に減じた植物ホルモンを含まないMS寒天培地上で分岐を繰り返しながら旺盛に生育した. 誘導された毛状根の磨砕液を濾紙電気泳動にかけてオパインの検出を行ったところ, 供試菌株に特有のオパインであるミキモピンが検出され, これらの根が形質転換されたものであることが確認された. 毛状根をBAP(0.5または1.0mg/l)およびNAA(0.1mg/l)を添加した無機塩濃度を1/2に減じたMS寒天培地に移植したところ, 移植後30~50日目に毛状根の表面に形成されたカルス上に高頻度(47~73%)に不定芽が誘導された. 誘導された不定芽は植物ホルモンを含まないHYPONEX培地上で容易に発根した. 得られた再分化植物を温室内で生育させたところ, 毛状根由来植物に特徴的な形態である, 葉の波打ち, 花の小型化, 分岐根の旺盛な発達が認められた. 再分化植物の根において, 殺線虫物質チオフェンの一つであるα-ターテニールが検出された.
  • 小森 辰己
    1995 年 64 巻 3 号 p. 656-662
    発行日: 1995/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
  • 松江 勇次
    1995 年 64 巻 3 号 p. 663-667
    発行日: 1995/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
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