抄録
水稲の幼穂形成期から登熟期にかけて茎基部からの出液を採取し, 出液中のアンモニア態窒素, 珪酸ぉよびカルシウムを定量して, それらと根の呼吸速度との関係を検討した. 処理区として, 堆肥, 生ワラなどの有機物を施用した区, 多窒素区および75%遮光区などの合計11区を設けた. 出液中のアンモニア態窒素濃度は, 遮光区が登熟期平均で8.3ppmと他の処理区平均0.6ppmより高い値を示した. 遮光区の根は, 全糖含有率が0.2%と極端に低下(対照区1.0%)しており, 根の全糖含有率が低下すると出液中のアンモニア態窒素濃度が上昇する傾向が認められた. 出液中の珪酸濃度は, 幼穂形成期に高く, その後登熟の進行とともに漸次低下した. これは根の呼吸速度の変化と同様の傾向であった. 出液中のカルシウム濃度は生育期間を通して, 概ね一定濃度で推移した. 根の呼吸速度と出液中の珪酸濃度および出液中の珪酸含有量とは, 高い正の相関関係があった. また, 根の呼吸速度と出液中の珪酸:カルシウム比との間には, 正の相関があり, 根の呼吸速度が高い場合には, 珪酸:カルシウム比が高いことを認めた. したがって, 呼吸速度の高い根を有する水稲では, 葉身中の珪酸含有率が高くなる可能性が示唆された.