抄録
秋季におけるフルクタン蓄積量が異なるコムギ2品種(農林61号, ユキチャボ)を用いて, 低温処理下(2, 6℃)におけるフルクタン合成酵素(スクローススクロースフルクトシルトランスフェラーゼ; EC 2.4.1.99)と分解酵素(フルクタンエキソハイドロラーゼ; EC3.2.1.80)の変化を調査し, フルクタンの蓄積機構と品種間差の発現機構について検討した. フルクタン含有率は, 低温処理による合成酵素活性の増加と分解酵素活性の低下のもとで増加した. 特に処理温度の低い2℃条件下でフルクタン含有率が高く, このときに合成酵素活性も高いことから, 高濃度のフルクタンの蓄積には高い合成酵素活性が必要と考えられた. また, 6℃条件下において, フルクタン含有率の低い農林61号はユキチャボに比較して分解酵素活性が高く, また処理10日目以降のフルクタン含有率の低下と分解酵素活性の増加とが関連することから, 品種間差の発現には分解酵素が強く関与していると考えられた. さらに, フルクタンの蓄積と品種の生育特性との関連について論議した.