日本助産学会誌
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原著
妊娠中期と産後の残尿と下部尿路症状の実態および関連因子の前方視的研究
佐藤 珠美後藤 智子ルルデス R. エレーラ C.大塚 亜沙子石川 哲
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2016 年 30 巻 1 号 p. 89-98

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抄録

目 的
 本研究の目的は,妊娠中期と産後の残尿と下部尿路症状の実態とそれに関連する因子を検討することである。
対象と方法
 対象は非妊娠時と妊娠中期に正常な膀胱機能を示した女性である。残尿は超音波診断装置で測定した。測定時期は妊娠中に1回(24週~27週),産後1日から5日まで1日1回,産後1か月とした。さらに下部尿路症状の自記式質問紙調査を行った。統計学的分析は対応のあるt検定,独立サンプルによるt検定,Pearsonのχ2検定を用いた。
結 果
 無症候性尿閉(CUR)の出現率は,産後1日が18.5%,3日が30.8%,4日が24.6%,5日が15.4%であった。産後1か月の残尿は全員が50ml未満であった。協力者が報告した産後1日の下部尿路症状(LUTS)は,尿意減弱(72.3%),排尿困難(55.4%),残尿感(29.2%),尿失禁(7.7%)であった。尿意減弱,排尿困難,残尿感は産後1か月までに10%程度に減少した(p<0.01)。しかし,尿失禁(7.7%)は産後4日に15.4%に増加し(p<0.05),産後1か月まで横ばいを示した。CURの関連因子は見出せなかったが,排尿困難に生下時体重が関連していた(p<0.01)。産後4日と産後1か月のLUTSとの間に有意な関連があった。産後4日のCUR群は正常群に比べて産後1か月の尿失禁の割合が有意に高かった(p<0.01)。
結 論
 産後4日のCURの出現率は24.6%あったが,産後1か月には全員が消失した。一方で尿意減弱,排尿困難,残尿感,尿失禁は残っていた。CURに関連する因子は見出せなかったが,排尿困難に生下時体重が有意に関連していた。さらに産後4日と産後1か月のLUTSの出現との間に有意な関連があった。産後4日のCURは産後1か月の尿失禁の出現に有意に関連していた。

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© 2016 日本助産学会
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