日本作物学会紀事
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一番茶生長期の成木茶園の光合成・物質生産構造
岡野 邦夫松尾 喜義広瀬 大介巽 二郎
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1996 年 65 巻 1 号 p. 108-113

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抄録
一番茶枝条の生長に対する越冬葉の役割を明らかにする目的で, 春期の成木茶園の光合成・物質生産構造の解析を行った. 一番茶萌芽後は, 秋整枝面上に着生する越冬葉は急速に伸長する一番茶枝条に覆われて受光量は次第に減少し, それにともない越冬葉は陰葉的な光合成特性を示し始めた. 一方, 一番茶枝条に着生する新葉の光合成活性は速やかに高まり, 摘採期頃には越冬葉の活性と等しくなった. 茶株全体への13CO2同化実験の結果は, 摘採期頃には群落光合成の約90%は生長中の新芽層で行われており, 越冬葉層の寄与率は10%に過ぎないことを示した. これらの結果から, 一番茶萌芽期頃の群落光合成は全て越冬葉層で行われているが, 新芽の生長につれてその寄与率は次第に低下し, 摘採期頃には群落光合成の大部分は新芽層によって行われていることが明らかとなった. 従って, 機械摘採茶園における一番茶枝条の生長は, 秋冬期の貯蔵炭水化物や越冬葉の光合成だけでなく, 新芽自身の光合成にも大きく依存しているものと思われる.
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