日本作物学会紀事
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植物の刺激応答反応系におけるアセチルコリン : 第1報 熱ストレス下のトウモロコシ芽生えにおけるCa2+の関与
桃木 芳枝桃木 徳博WHALLON Joanne H.
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1996 年 65 巻 2 号 p. 260-268

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抄録
種々の環境ストレスは, 植物における水, イオン, ホルモンなどの物質輸送に影響を与える. もし, 植物細胞間の接合部で, 動物と同様, 刺激が起こす生体電気の伝達に起因するアセチルコリン(ACh)が, 物質の輸送を制御するイオンチャネルの開閉に関与するならば, 刺激を与えた植物の器官部位でアセチルコリン分解酵素(AChE)活性およびAChを細胞内に遊離させるCa2+の分布に変化が認められるはずである. 本報では, 暗条件で生育させたトウモロコシ芽生えに熱ストレスを与え, AChE活性とCa2+分布に及ぼす影響をおもに組織化学的に検討した. AChE活性は, 子葉鞘節が最も高く, 他の器官の3-7倍であった. また, 熱ストレス後, AChE活性は, この節で約20%増加した. AChEの組織化学的反応は, 無処理の植物では, この節の維管束の周囲の皮層細胞のみに認められたが, 熱ス卜レス後, 子葉鞘節におけるAChE活性は, 著しく変化し, 中心柱と皮層の間に存在する内皮細胞全体に維管束系に沿って円周状に検出された. さらに, 共焦点走査型レーザー生物顕微鏡を用いて, 子葉鞘節における蛍光標識Ca2+を検出すると, 維管束周辺の皮層, 表皮および皮層外周部に認められた. 熱処理後, Ca2+は, 皮層細胞での増加と共に, 新たに内皮細胞全体に検出された. これらの結果から, 熱ストレス後, 内皮細胞に検出されたAChEとCa2+は, イオンチャネルを制御するACh作用に関与すると考えられる.
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