抄録
本研究は,美術鑑賞学習における美的判断ジレンマの題材開発を行い,高校3 年生13名を対象に授業を実施した。授業では,生徒は贋作だと判明した絵画を引き続き展示するか,真実を公開するかの決断に直面する。実話に基づく架空のシナリオを用いて,生徒は異なる立場から作品の価値変化を美的/歴史的/経済的な側面から判断し,どの選択肢を選んでも他方に不都合が生じてしまうような葛藤状況の中で,どう決断すれば良いのかについて理由と問題点を含めて考える。質的分析を通して生徒のワークシートを整理した結果,生徒は作品の価値,美術館の役割と責任や来館者の気持ちなどの側面から,美術作品を取り巻く文化的環境を複眼的に考えることができた。そして,シナリオやジレンマの設計,視点や立場への理解などの側面から授業設計の留意点を検討した。