日本作物学会紀事
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葉の水ポテンシャルの低下に伴う光合成低下の要因の検討 : 赤外線CO2分析法と気相酸素電極法を用いて
若林 克拓平沢 正石原 邦
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1996 年 65 巻 4 号 p. 590-598

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抄録

水ストレスによる光合成の低下の要因には気孔閉鎖と葉肉組織の光合成活性の低下があるが, このどちらの要因によって光合成が低下し始めるかは必ずしも明らかではない. 本研究は, ヒマワリ, イネを用いて, 葉の水ポテンシャルの低下に伴う赤外線CO2分析法で測定したCO2交換速度の変化と, 気相酸素電極法で測定したO2放出速度の変化とを比較し, 光合成の低下し始める要因を検討したものである. 水ポテンシャルの低下した葉身では拡散伝導度が小さいので, 気相酸素電極法によるO2放出速度の測定は高いCO2濃度条件で行う必要がある. しかし, 高すぎると光合成が阻害される. そこでまず, 測定に用いる空気のCO2濃度を検討した. その結果, 短時間の測定であればヒマワリ, イネの両種ともにCO2濃度12O mLL-1で, CO2の阻害を受けることなく, O2放出速度を測定できることを認めた. さらに, 10-3 Mの±ABAを散布したヒマワリ葉身のO2放出速度を測定した結果, 拡散伝導度が0.09mol m-2s--1以上であれば気孔の影響を受けないでO2放出速度が測定できることがわかった. 次に種々の水ポテンシャルの葉身のCO2交換速度とO2発生速度を比較した結果, ヒマワリ, イネともに, CO2交換速度はO2放出速度より高い葉の水ポテンシャルで低下し始めることが明らかとなった. このことから両種ともに水ポテンシャルの低下による光合成の低下は最初は気孔の閉鎖によって, さらに葉の水ポテンシャルが低下すると葉肉組織の光合成活性の低下によっておこることがわかった.

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