日本作物学会紀事
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リョクトウ( Vigna radiate (L.) Wilczek)子葉培養におけるカルス形成の組織学的観察
NARCISO Josefina O.服部 一三和田 富吉
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1996 年 65 巻 4 号 p. 663-671

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抄録

リョクトウ子葉培養におけるカルスの起源, 形成部位および発育を明らかにするため組織学的観察を行った その結果, リョクトウにおいてはカルス形成は以下のような3つの部位から生ずることが明らかとなった. すなわち, 1) 内部に形成されるカルスの起源と考えられる維管束前形成層の周縁部, 2) 外部に向かって形成される1次カルスが発達する子葉の切断端, および3) 1次カルスが出現する表皮の裂け目の部位からカルスが生じた. カルスの形成過程は各部位で異なっていた. 内部に形成されるカルスは前形成層の周縁の細胞の急速な分裂によるものであった. 子葉の切断端および表皮の裂け目から形成される1次カルスは, 主に葉肉柔細胞の肥大により生じた. これらの1次カルス細胞はすぐに液胞化が著しくなったが, これはカルス細胞塊の増加にはそれほど寄与していないものと思われた. 1次カルスの細胞は分裂活性が低いことから見て, 細胞質に富みかつ分裂活性の高いカルスの細胞は, 明らかに, もともと前形成層に由来する前形成層周辺部の小さなカルス細胞から発生したものと思われる. それ故, 子葉の前形成層内の細胞がリョクトウの子葉培養系でのカルスの主要な起源と考えられた.

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