日本作物学会紀事
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水稲根系のエイジングに伴う内生アブシジン酸及びゼアチンリボシドの変化
郭 康沫飯嶋 盛雄山内 章河野 恭廣
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1996 年 65 巻 4 号 p. 686-692

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抄録

根系で生産される内生アブシジン酸(ABA)とゼアチンリボシド(ZR)は, エイジングに対して対照的な働きを示すことが知られている. エイジングに伴う根系各器官・部位における, これらの内生ホルモンの濃度変化を酸素免疫測定法で調べた. 供試材料は湛水条件下で根箱栽培した水稲品種・愛知旭を用い, その根系の中から主として種子根系を対象に, 根軸, その根端, 及び側根における両ホルモンの動態を経時的に追跡した. 種子根系のABA濃度は播種後10日に, ZR濃度は同21日に最大値に達した. これらのピークのパターンは, 既報で示した窒素の根系内の濃度変化と関連性をもつことを示唆した. すなわち, ABA濃度のピークは根軸上の側根の窒素含有率が最低に達する時期に, ZR濃度のピークは同側根の窒素濃度が再び増加のピークに達する時期に, それぞれ一致した. 播種後6日の根端のZR濃度の急激な上昇は, 側根におげる2次分枝の急速な開始, 第4葉の抽出・展開および第1節根の発根開始時期とほぼ時間的に一致し, 根端のZR濃度の動態が, めばえの初期発育の出葉・発根過程に重要な役割を果していることを示すものと推論した. 根軸と側根に分けて比較した結果, 根軸は側根に比べて明らかに高いZR濃度と低いABA/ZR濃度比をもつことを認めた. なお, 根端では, ABA/ZR濃度比は根軸と基本的に同様であった. 以上のように, ABA/ZR濃度比, 並びにABAとZR濃度の変化を基準として比較した時, 側根と根軸の器官としての特徴は大きく異なることを強く示唆した.

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