日本作物学会紀事
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Salicornia europaea L.の耐塩機構に関する研究 : 第3報 塩の蓄積とアセチルコリン作用
桃木 芳枝小栗 秀加藤 茂上村 英雄
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1996 年 65 巻 4 号 p. 693-699

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抄録

植物における耐塩機構を理解することは, 耐塩作物品種の利用に重要なことである. 本報では, アッケシソウにおける塩化ナトリウムの蓄積を器官レベルで測定した. さらに, Na+イオンおよびCl-イオンの器官間輸送とACh作用との関係を検討するために, AChE活性を化学的定量および組織化学的検出によって器官レベルで測定した. アッケシソウにおいて高い濃度の塩化ナトリウムは, 根と下位の茎に認められ, 発芽5カ月後の根では, 新鮮重100 g当たりNa+イオン160 nmol, およびC-イオン320 nmolがそれぞれ蓄積していた. アセチルコリン分解酵素(AChE)の活性は, 同様に根と下位の茎で高く, また, どの部位の節も節間より高い活性を示した. さらに, 組織化学的に検出されたAChE活性は, 根および茎で顕著に認められた. 根では, 維管束系を囲む内皮を含む皮層細胞と, 主根から側根の分岐部周辺に認められ, とくに, 側根周辺の内皮, 皮層および表皮細胞には強い反応が検出された. 茎では, 維管束に沿った内皮細胞と, 主茎の側枝を持った節部で極めて強い反応が現れた. これらの結果から, 主根からの側根の分岐部および主茎において側枝を持った節部でACh作用によるイオンの輸送が推定され, また, 過剰の塩化ナトリウムが根の表皮細胞から排出されることが示唆された.

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