抄録
日本型品種むさしこがねとインド型品種IR36における穂軸の大維管束の走向と分化時期を比較した. 穂軸中の大維管束は, 主に1次枝梗由来の大維管束(Vp)と2次枝梗由来の大維管束(Vs)によって構成されていた. むさしこがねにおいては, いずれの1次枝梗からも1本のVpが穂軸に入り, 相互に合着することなく穂首節間まで下降していた. 通常, Vsは穂軸に入ることはなかった. その結果, 穂首節間大維管束数を1次枝梗数で割った値(維管束比)はほぼ1となった. これに対して, IR36においては, 上位の1次枝梗からは1本のVpが穂軸に入るが, 中~上位の1次枝梗からは1本のVpに加えて2本のVsが穂軸中に入る場合が多かった. また, Vsのいくつかは穂軸中で複雑に合着していた. その結果, 維管束比はほぼ2となった. 大維管束の分化時期をみると, いずれの品種においても, Vpが分化するのは2次枝梗分化初期であり, Vsが分化するのは穎花分化初~中期であった. 以上の結果から, むさしこがねと比較してIR36では穂軸の発育に対する1次枝梗の発育が相対的に進行している可能性が示唆された.