日本作物学会紀事
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イネの茎葉生育の規則性に関する発育形態学的研究 : 第7報 節間伸長の開始および伸長節間の規則的分布の制御機構
松葉 捷也
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1997 年 66 巻 1 号 p. 17-23

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抄録
伸長節間長の節位別変化の制御機構を解明する前段として, 日本型品種を用い, 1株1本植えにした個体の各有効茎で伸長節間の出現位置や個数の変異などを調べ, 以下の規則性を認めた. (1)同一試験区の主稈の生育型(体形)は, 主稈総葉数の1葉の変異に対応してN型または[N-1]型の二型に分かれ, 伸長節間数は通常それぞれ6または5となる. (2)N型と[N-1]型の主稈間で, 求頂的に双方の同位伸長節間の長さを比較すると, 常に前者が短い. (3)各分げつの最下位伸長節間の位置は, 主稈の生育型や分げつ次位に関係なく, 主稈の最下位伸長節間の位置に対して, 相対的に同じ位置かそれより1節位下に限定される. このとき, 分げつの伸長節間数は6または5となり, まれに4となった. (4)個休内の各有効茎の第1苞原基分化日のずれを個体別に計測し, 最大の日差の平均では, 主稈・4次分げつ間で10日間, 主稈・3次分げつ間で8日間という結果をえた. (5)第1苞原基分化期の前後には, 抽出開始葉の直下の節間が「伸長刺激」に感受性となっている. 以上のうち, (1), (2)と(5)は再確認の事実である. 総合考察の結果, 節間伸長の開始機構は, 止葉原基分化後から第1苞原基分化直前までの間に発動される「伸長刺激」と, この刺激に感受性となった節間原基との相互関係で説明できた. この場合, 抽出開始葉の内側にある幼葉と葉原基が合計4枚である事実に上述の(5)を併せ考えると, 伸長節間数が基本的に5または6に限定されてくる意味が理解される.
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