抄録
水稲乳苗の発育に伴うエネルギーソースの変化, すなわち, 胚乳からの養分供給から光合成器宮からの養分供給への変化, ならびに苗形態の変化を調査した. 出芽後, 昼/夜温度を30/25℃, 24/19℃, 17/12℃に制御したガラス室で育苗し, このガラス室内の暗黒条件下で育苗した苗の生育と比較した. 胚乳消費量と茎葉乾物量との関係は, 自然光条件下では2本の直線で回帰されたが, 暗黒条件下では1本の直線で回帰された. また, 胚乳養分の74%が消費されたところ (葉齢で2.4) までは, 自然光条件下と暗黒条件下の回帰式の係数に有意な差は認められなかったが, その後は有意な差が認められた. すなわち, 自然光条件下での胚乳消費量に対する茎葉乾物量の増加割合は0.476から1.433へと約3倍に増加した. これは, 第3葉の抽出・展開とともに光合成器宮からの養分供給量が増大したためと推測された. 第3葉が抽出・展開する以前の光合成器宮からの養分供給量は極僅かであり, 苗の生長は胚乳からの養分供給に依存すると考えられた. また, 自然光条件下で育苗した場合, 温度条件に関わらず葉齢が2.4になると苗の草丈は機械移植技術に心要とされる7cmに達した.