日本作物学会紀事
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66 巻, 2 号
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  • 松崎 守夫, 豊田 政一
    1997 年66 巻2 号 p. 177-182
    発行日: 1997/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    北海道十勝地方におけるコムギ品質の登熟にともなう推移を検討する一環として,本報告では1992年および1993年に秋播きコムギ2品種, 春播きコムギ2品種の一粒重, 子実含水量および子実含水率の推移を検討した. 開花後日数にともなう一粒重の推移は, 品種や年次によって異なった. 一粒重が最大値と有意差がなくなった時期(最大粒重到達期)は, 秋播きコムギ, 1992年産春播きコムギでは開花後30~36日であったのに対し, 1993年産春播きコムギでは開花後42~45日であった. このような最大粒重到達期の遅延は, 登熟期における低温によると考えられた. 最大粒重到達期以降, 1993年産春播きコムギの場合を除き一粒重の大きな増加は観察されなかった. また, 子実含水量は最大粒重到達期付近まで一定の値を保った後, 急速に減少し始めた. コムギにおいて, 子実含水量の急速な減少は子実の乾物集積停止と同時に起こるため, 今回推定した最犬粒重到達期は, 子実の乾物集積が停止する時期に相当すると考えられた. 子実含水率は供試品種, 栽培年次にかかわらず, 最大粒重到達期付近に約40%まで減少し, その後減少速度を増加させた.
  • 松崎 守夫, 豊田 政一
    1997 年66 巻2 号 p. 183-188
    発行日: 1997/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    本報告では, コムギ品質形成過程についての基礎的知見を得るために, 登熟にともなうコムギ粉の物理的特性, タンパク特性, デンプン特性の推移を検討した. 1992年および1993年に秋播きコムギ2品種, 春播きコムギ2品種を開花後3日から3日毎に収穫し, その子実から調整された60%粉を用いて上記特性を測定した. 粉ぺーストの反射率から測定した粉の白さ, 明るさは一粒重の増加にともなって最大粒重到達期まで増加した. タンパク質に関係する特性と考えられる比表面積, 沈降価の推移には品種間差が観察された. 春播きコムギ品種のハルユタカ, ハルヒカリでは, 比表面積は登熟期間中ほとんど変化しなかったが, 沈降価は最大粒重到達期まで増加した. しかし, 秋播きコムギ品種のチホクコムギ, タクネコムギでは比表面積, 沈降価とも登熟にともない減少する傾向を示した. アミログラム最高粘度は品種, 年次によって異なった推移を示した. 今回の結果において, 子実含水率が約40%である最大粒重到達期以降, コムギ粉の品質特性が大きく向上することはなかった. 立毛コムギの品質特性から考えた場合, 子実含水率が40%以下の時期にはコムギは収穫可能であると考えられた.
  • 松江 勇次, 小田原 孝治, 比良松 道一
    1997 年66 巻2 号 p. 189-194
    発行日: 1997/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    黒ボク土産米の食味向上を目的とし, 黒ボク土における稲体の窒素過剰吸収を制御するという視点から, 適切な窒素施肥法およびゼオライトの施用による食味改善効果を検討した. 黒ボク土においては, 慣行施肥法の第2回穂肥の省略, もしくはゼオライト1 kgm-2施用後の標準施肥栽培により, 収量は慣行施肥法と同程度かそれ以上の増収効果を示し, 食味は食味評価が高い褐色低地土産米と同程度となり, 食味向上の効果が認められた. また, 同じ試験区において精米中のタンパク質含有率が低下し, 精米中のタンパク質蓄積に対する制御の効果も認められた. したがってこの食味向上効果は, 前述した穂肥の省略による窒素施肥量の減肥もしくは標準施肥+ゼオライト施用によるタンパク質含有率の低下によるものと判断された.
  • 森田 茂紀, 萩沢 芳和, 阿部 淳
    1997 年66 巻2 号 p. 195-201
    発行日: 1997/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    イネの体はファイトマーという形態的単位 (1枚の葉と1つの分げつ芽を側生する茎の断片) が積み重なったものと理解できる. 根系の骨格を構成する1次根は, このファイトマーの茎部分から出現するため, ファイトマーの数や大きさが根系形態にも影響することが予想される. そこで, 本研究では個体全体の生育の中で根系形成を理解する目的で,ファイトマーの形成に着目しながら, とくに根量の品種間差を解析し, 考察を行なった.根系形態が異なる水稲品種IR 36, Lemont, コシヒカリをポット栽培し, 播種後60日目まで経時的に, すべての茎の葉齢のデータをもとに個体全体を構成している総ファイトマー数, および1次根を出根している出根ファイトマー数, また, 茎葉部の乾物重を総ファイトマー数で割って「ファイトマーの大きさ」を推定した. さらに, 根量の指標として総根長と総根重, 根量の構成要素として総1次根数と「平均根長」を調査した. 根量はいずれの品種も生育とともに曲線的に増加したが, 出根ファイトマー数との間には品種固有の直線的な関係が認められた. 出根ファイトマー数と総1次根数との間には3品種に共通した正の相関関係が, まだ, 「ファイトマーの大きさ」と「平均根長」との間にも正の相関関係が認められた. これらの結果から, 茎葉部の形態を規定すると考えられるファイトマーの数と大きさが, 1次根の数と大きさを介して根系の形態にも影響を及ぼしていること, およびファイトマーの数および大きさに現われる品種の特徴が, 根系形質の特徴をもたらしていることが示唆された.
  • 福嶌 陽, 秋田 重誠
    1997 年66 巻2 号 p. 202-207
    発行日: 1997/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    日本型品種のむさしこがね, Lemont とインド型品種の IR36, タカナリを用いて,イネにおける分げつ芽の葉の分化, および分げつ芽の幅の品種間差異を検討した. 主茎および分げつ芽の茎頂における葉の分化の様相から分化葉数を定義した. また, 分げつ芽の分化葉数の変化を主茎の分化葉数に対する相対的な関係から解析するために, 同伸葉理論から予測される分げつ芽と主茎の分化葉数の関係からの差(分化葉数差)を求めた. 主茎の第 N 葉腋部の分げつ芽 (第 N 分げつ芽) の分化葉数差は, 主茎の葉齢が (N+0.5) から (N+1.5) の間に大きくなり, しだいに一定値に近づいていった. 品種間を比較すると, 第 N 分げつ芽の分化葉数差は, 主茎の葉齢が (N+0.5) から (N+2.5) の間を通じて, 日本型品種よりもインド型品種の方が大きかった. また, 主茎の葉齢が N の時における分げつ芽着生部の茎の直径に対する第 N 分げつ芽の幅も, 日本型品種よりもインド型品種の方が大きかった. 以上の結果から, 日本型品種と比較してインド型品種は, 主茎の発育に対する分げつの発育が進行していること, およびこのような分げつ芽の発育様式の品種間差異は, 分げつ芽の発育の初期過程に生じることが示唆された.
  • 島村 聡, 望月 俊宏, 井之上 準
    1997 年66 巻2 号 p. 208-213
    発行日: 1997/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    9種19品種・系統のマメ科幼植物を畑および過湿条件下で約2週間育成し, 胚軸根における破生細胞間隙の形成について検討した. 5cm 以上に発根・伸長した胚軸根の基部から1~2cmの部位を採取して FAA で固定し, 常法に従って厚さ 12μm のパラフィン横断切片を作成し検鏡した. その結果, 畑条件下では供試したすべての品種・系統において, 胚軸根の皮層に明瞭な破生細胞間隙は認められなかった. 一方, 過湿条件下ではダイズ, ツルマメ, アズキ, ケツルアズキ, リョクトウおよびタケアズキの6種14品種・系統の胚軸根の皮層に, 明瞭な破生細胞間隙が認められた. しかし, フジマメ, インゲンマメおよびササゲの3種5品種には, 破生細胞間隙は認められなかった. 破生細胞間隙が認められた作物の中, ダイズ, ケツルアズキおよびタケアズキの3種7品種ではすべての胚軸根で破生細胞間隙が認められ, かつ, その発達程度が大きかった. ところが, ツルマメとアズキおよびリョクトウの3種5品種・系統では, 破生細胞間隙が認められる胚軸根と認められない胚軸根が混在していた.
  • 尾形 武文, 松江 勇次
    1997 年66 巻2 号 p. 214-220
    発行日: 1997/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    北部九州における水稲の湛水直播栽培用良食味品種の育成・選定上の基礎的知見を得る目的で, 苗立ち本数がm2当たり100本の湛水直播栽培における米の食味と理化学的特性について登熟期間がほぼ同じである移植栽培と比較して検討を行った. 移植栽培で米の食味が優れた品種は湛水直播栽培 (移植栽培とほぼ登熟期間が同じ) でも優れ, 湛水直播栽培における米の食味は移植栽培に比較して優れた. 食味に関連した精米のタンパク質含有率やアミロース含有率およびアミログラム特性等の理化学的特性値においても, 移植栽培で高い特性値をもつ品種は, 湛水直播栽培でも高い値を示した. また, 湛水直播栽培での理化学的特性値は, 移植栽培に比較してタンパク質含有率はやや高くなるもののアミロース含有率は低く, 最高粘度は高く, ブレークダウンは大きかった. 湛水直播栽培の収量性は, 移植栽培に比較して, m2当たり籾数が減少して低かったが, 1次枝梗着生籾数が多くなり, 千粒重が重く, 登熟歩合が高かった. したがって, 湛水直播栽培において米の食味が優れたのは, 米粒の充実度が向上したことによるアミロース含有率の低下, 最高粘度およびブレークダウンの増大によるためと考えられた.
  • 村田 孝雄, 保坂 優子, 平野 貢, 黒田 栄喜
    1997 年66 巻2 号 p. 221-228
    発行日: 1997/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水稲あきたこまちを圃場で栽培し, 出穂前に葉身摘除処理, 出穂直後に穂の部分摘除処理を行い, 登熟期におけるソース・シンク関係の変化が出穂前に蓄積した炭水化物の転流や出穂後の光合成産物の蓄積・転流に及ぼす影響について検討した. 水稲葉身では,デンプンの蓄積が極めて小さく, 炭水化物含有率が大きくなるほどショ糖の占める比率が大きくなった. 茎 (葉鞘を含む) においても基本的には同様の傾向がみられたが, デンプンの蓄積も著しかった. 穂重が急激に増加する登熟初期には, 葉身, 茎とも炭水化物, とくに, ショ糖の含有率が低下したが, 茎での低下が一層著しかった. この時期は, シンク能が非常に高く, 貯蔵炭水化物や新生光合成産物によるソースの供給能力が, 登熟歩合や子実収量を決定する重要要因と考えられた. また, 穂重の増加が緩やかになる登熟中期から後期にかけては, 穂への転流が停滞し光合成産物のソース器宮での再蓄積が観察された. とくに, 転流型のショ糖の蓄積が非常に大きいことから, この時期には, ソース能よりもシンク能の大きさや活性が, 光合成産物の転流を制限していると考えられた. 葉身におけるショ糖の転流・蓄積と関係の深いショ糖リン酸合成酵素の登熟期止葉における活性は, 葉身の老化とほぼ平行して低下した.
  • 山下 正隆, 武弓 利雄, 佐波 哲次
    1997 年66 巻2 号 p. 229-234
    発行日: 1997/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    樹齢18年の成木茶樹を用い, 断根処理の時期, 強度, 頻度, 処理時の窒素施用, 有機物施用等根の再生を左右する処理条件を組み合わせて1990年に断根処理を行った. その後, 1991年から1995年にかけて一番茶の新芽生育と収量に及ぼす処理の影響を検討した.処理区は対照区のほか, 弱い断根処理を毎年行う8月下旬I区(慣行区), 根の再生に適した条件を組み合わせた9月下旬I区, 断根と同時にせん枝処理を行う8月下旬II区および9月下旬II区を設けた. その結果, 8月下旬I区では処理による根の切除量が少なく, 処理1年目の新芽生育の抑制, 減収は生じなかった. しかし, 年次経過とともに新芽は最も小型化し, 収量も漸減傾向を示した. 強い断根処理を1回だけ行った9月下旬I区では1年目の収量はやや減少したが, 2年目以降は増収傾向を示し, 年次経過とともに対照区との収量差を拡大した. また, せん枝を行った8月下旬II区, 9月下旬II区の収量はいずれも対照区の水準に回復しなかった. これらのことから, 慣行的な断根処理方法は見直しの必要があるが,断根処理による根系の更新は一番茶の増収を図る樹勢更新手段の一つとして有効と結論された.
  • 川嶋 浩樹, 岩間 和人, 金子 正, 正木 庸子, 中世古 公男
    1997 年66 巻2 号 p. 235-241
    発行日: 1997/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水分ストレスがバレイショの生育と収量に及ぼす影響を明らかにする研究の一環として, 葉の拡散抵抗の日変化, 生育に伴う推移ならびに葉の表裏面間および葉位間の差異を圃場条件下で調査した. 拡散抵抗の日変化では, 午前中は低く, 午後になると増加し,タ方に最大となる推移を示した. また, 拡散抵抗は葉の表面と裏面では異なり, 一日中および生育期間を通じて, 裏面より表面の方が平均で約2~5倍ほど高い値を示した. さらに, 拡散抵抗は個体の生育が進むに伴い増加し, 同一の時期では上位の葉ほど低い値を示した. しかし, 降水後の土壌水分が十分な条件下では生育の後期でも拡散抵抗は低い値を示し, また低温年には高温年に比べ拡散抵抗が低く推移した. 以上のことから, 北海道のような寒冷地でも晴天日の午後にはバレイショに水分ストレスが起こっており, その程度は葉のエイジング, 気温および土壌水分条件により変化するものと推察した.
  • 川崎 通夫, 松田 智明, 長南 信雄
    1997 年66 巻2 号 p. 242-251
    発行日: 1997/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ヤマノイモ塊茎のプラスチド - アミロプラスト系におけるデンプンの蓄積過程とその微細構造的特徴を電子顕微鏡で観察した. 走査電子顕微鏡観察によると, プラスチドは肥大が進むにつれてストロマを局在させた突出部を形成した. 内部の大部分に単粒デンプンを含むアミロプラストは, この突出部に対して垂直方向に肥大伸長した. アミロプラストの肥大停止に伴い突出部は収縮した. 透過電子顕微鏡観察によると, 突出部に局在するストロマと接するデンプン粒の表面には, 溝あるいは凹みが認められた. また, ストロマとデンプン粒の間には低電子密度の部分が観察された. これらの観察から, ヤマノイモ塊茎のアミロプラストでは, デンプンの合成とデンプン粒の形成が突出部において限定的かつ集中的に行われていると推定した. また, ヤマノイモ塊茎のプラスチドとアミロプラスト中には, デンプン粒以外にも様々な構造物が認められた. 陥入した内膜系は, ストロマ中への同化産物の輸送に効率的な構造を有していた. プラスチドのストロマには限界膜をもつ高電子密度の含有体が認められ, デンプン粒の形成は常に含有体の近傍で行われていた. また, アミロプラストのストロマ内には限界膜のない結晶構造の含有体が認められ, これらの含有体には酵素タンパク質が存在すると考えられた. また, ストロマ内に認められた顆粒状の多糖類は, 糖の一時貯蔵形態と推定された.
  • 佐々木 良治, 星川 清親
    1997 年66 巻2 号 p. 252-258
    発行日: 1997/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水稲乳苗の発育に伴うエネルギーソースの変化, すなわち, 胚乳からの養分供給から光合成器宮からの養分供給への変化, ならびに苗形態の変化を調査した. 出芽後, 昼/夜温度を30/25℃, 24/19℃, 17/12℃に制御したガラス室で育苗し, このガラス室内の暗黒条件下で育苗した苗の生育と比較した. 胚乳消費量と茎葉乾物量との関係は, 自然光条件下では2本の直線で回帰されたが, 暗黒条件下では1本の直線で回帰された. また, 胚乳養分の74%が消費されたところ (葉齢で2.4) までは, 自然光条件下と暗黒条件下の回帰式の係数に有意な差は認められなかったが, その後は有意な差が認められた. すなわち, 自然光条件下での胚乳消費量に対する茎葉乾物量の増加割合は0.476から1.433へと約3倍に増加した. これは, 第3葉の抽出・展開とともに光合成器宮からの養分供給量が増大したためと推測された. 第3葉が抽出・展開する以前の光合成器宮からの養分供給量は極僅かであり, 苗の生長は胚乳からの養分供給に依存すると考えられた. また, 自然光条件下で育苗した場合, 温度条件に関わらず葉齢が2.4になると苗の草丈は機械移植技術に心要とされる7cmに達した.
  • 佐々木 良治, 星川 清親
    1997 年66 巻2 号 p. 259-267
    発行日: 1997/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水稲乳苗の活着における鞘葉節冠根の役割を評価するために, 乳苗の根系を構成する種子根および鞘葉節冠根に種々の断根処理を施したのち移植し, 7日間生育させ活着への影響を調査した. 根の基部から1.5cmあるいは3.0cmですべての根を切断して移植しても, 移植7日後の生育は, 断根処埋をしない無処理苗の生育と同様であった. しかし, 切断位置を根の基部から0.5cmにして移植すると, その生育は, 無処理苗の生育に比べて有意な低下を示した. また, 種子根と4本の鞘葉節冠根の根端を除去して移植しても, 第3葉の抽出速度および移植7日後の生育はほとんど影響を受けなかった. 一方, 種子根と最長の鞘葉節冠根とをその基部で切断して移植すると, 移植後の生育は明らかに抑制された. 移植7日後の総乾物重 (茎葉と根) および移植した苗に残存した根の総根長を, 無処理苗に対する処理苗の割合として表し両者の関係をみると, 総乾物重は残存した根の総根長と密接に関連し, 総根長の減少にともなって低下した. これらの結果は, 移植された乳苗の生育は, 苗に残存した根の総根長によって影響されることを示唆している. 移植された乳苗にとって, 鞘葉節冠根は養水分の吸収という点で大きな役割を担い, 第1節冠根を速やかに発根させることで活着すると推察される.
  • 上野 修, 東江 栄
    1997 年66 巻2 号 p. 268-278
    発行日: 1997/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    キャッサバ (Manihot esculenta Crantz) の光合成型については, C3-C4中間型という報告とC3型という報告とがある. 光呼吸の鍵酵素であるグリシンデカルボキシラーゼ (GDC) は, C3. C4中間型とC3型との間で葉における細胞間分布のパターンが異なることが知られている. 本研究ではこの点に着目して, キャッサバ3品種の葉内における GDC の分布を金コロイド免疫電子顕微鏡法により調査するとともに, 葉の解剖構造を観察することにより光合成型を検討した. キャッサバの葉は基本的には下面気孔葉の特徴をもち, 光合成組織は柵状葉肉細胞, 海綿状葉肉細胞および維管束鞘細胞から構成されていた. 維管束鞘細胞は遠心的に配列した葉緑体を含んでいたが, ミトコンドリアの密度の増加は観察されなかった. GDC の存在を表す金粒子の標識がこれらの光合成細胞のすべてのミトコンドリアに見出され, C3型の細胞間分布を示した. しかし, 柵状葉肉細胞のミトコンドリアにおける金粒子の標識密度は, 海綿状葉肉細胞や維管束鞘細胞のそれより高い値を示し, より濃密に GDC 蛋白質を蓄積しているものと考えられた. 水不足の下で形成された葉では, この細胞間の標識密度の差はより顕著となった. 以上の結果は, 少なくとも実験した3品種のキャッサバはC3・C4中間植物ではなく, むしろC3植物であることを示している. なお, 細胞間による GDC の蓄積量の違いについては, 葉内部における光呼吸活性の勾配の点からさらに調査する価値があるものと考えられる.
  • 岡野 邦夫, 忠谷 浩司, 松尾 喜義
    1997 年66 巻2 号 p. 279-287
    発行日: 1997/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    新芽品質向上に有効な窒素施用量の限界値や生理障害が発現する施用量を明らかにする目的で, 様々な窒素施用条件下における幼茶樹の生理反応を調べた. ポット当たり年間200mgの窒素施用量を基準の1N区 (10a当たり年間10kgNに相当) とし, 0N~27N区までの処理区を硫安を用いて設定した. 3N区以下では窒素欠乏症状が見られたが, 6N区~12N区にかけては光合成活性は高く, 個体や新芽の生育は良好であった. 葉の褐変や光合成活性の低下は15N区以上で発現した. 18N区以上では落葉, 根の呼吸活性低下, 一部個体の枯死等が観察された. これらより生長や収量からみた最適レベル (critical level) は6N区と判断された. 茶樹による窒素吸収量は施用量の増大につれて増加したが, 吸収能力は次第に飽和した. 施用窒素の吸収率は施用量の増大につれて直線的に低下した. 一番茶新芽の遊離アミノ酸濃度は, 窒素施用量の増大に伴って上昇を続けた. しかし窒素多肥区では新芽生育が阻害されたため, 新芽中に蓄積した遊離アミノ酸量は9N区~15N区で最高となった. これらより新芽品質からみた最適レベルは12N区前後と判断された. 新芽中のテアニン濃度は9N区まで上昇したが, それ以上の多肥区では大量のアルギニンが集積し, 窒素代謝の異常が推察された. 以上より, 新芽品質からみた窒素の最適レベルは樹体に生理障害が発現する直前のレベルであり, 生長や収量からみた最適レベルの2倍近い値であると考えられる.
  • 伊藤 治, 松永 亮一, 飛田 哲, RAO T.P., DEVI Gayatri, LEE KK.
    1997 年66 巻2 号 p. 288-292
    発行日: 1997/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    キマメ [Cajanus cajan (L.) Millsp.] の根の生長を土壌中に設置したガラス管に微小ビデオカメラを挿入することにより観察し, 湛水の影響を定量的にとらえることを試みた. 根長密度の日変化, 湛水処理区と対照区との根の生長の差異を根長密度の経時変化データを曲線回帰することにより計算した. 湛水処理を受けた根は回復過程においては対照区より高い日変化を示した. 湛水処理後根長密度は最初土壌表層部でより増加し, 徐々により深い部分でも増加した. 本研究により, 根の生長はミニリゾトロンによりガラス管を通して土壌 - 植物の接点を頻度高く観察することにより追跡することができ, この方法は湛水処理の影響を調査する上にでも有効であることがわかった.
  • 王 英典, 黒田 栄喜, 平野 貢, 村田 孝雄
    1997 年66 巻2 号 p. 293-299
    発行日: 1997/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    東北地方を対象に, 最近育成された多収性水稲品種・系統の生育および乾物生産特性と収量および収量構成要素について, 1994年および1995年の両年にわたって, 当地方の主要な普及品種であるひとめぼれおよびキヨニシキを対照として比較・検討した. 供試した各品種・系統の収量は, 650~815gm-2の範囲にあり, ふくひびき > 奥羽316号, キヨニシキ > 奥羽327号 > ひとめほれの順に多収であった. 短稈穂重型のふくひびきと奥羽316号は, 1穂籾数が多いことによリm2当たり籾数が多かった. 最も収量が多かったふくひびきは, 千粒重が大きい割には登熟歩合が高い傾向があった. 登熟歩合の程度は, 2次枝梗着生籾の登熟歩合と密接な関係が認められたが, ふくひびきは, 2次枝梗着生籾が多いにもかかわらず, それらの登熟歩合がかなり高かった. 大粒型の奥羽327号は, 穂数が少なく, m2当たり籾数も少なかったが, 千粒重が非常に大きく, 登熟歩合も高かった. ひとめほれに比べて, 草丈の低いふくひびきと奥羽316号は, 収穫期における全乾物重がわずかに大きかったが, それらの穂重は明らかに大きかった. この関係から, 両者の収穫指数は, ひとめげれよりかなり高くなった. 以上の結果, ふくひびきと奥羽316号は, 乾物生産および分配において優れた性質を備えていることが推察された.
  • 渡会 真紀, 井之上 準
    1997 年66 巻2 号 p. 300-306
    発行日: 1997/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    不良環境に強いとされているアフリカ稲の生態的特徴を明らかにする目的で, アフリカ稲とアジア稲の浮稲を深水条件下と非深水条件下で栽培し, 伸長最低節間 (LEI) の位置とその伸長程度について比較を行った. 供試した各40品種の深水条件下におけるLEIの位置は, アフリカ稲, アジア稲ともに第8~13節間に変異し, 平均値は前者が第8.9節間, 後者が第9.8節間で, LEIの長さの全品種平均値は両種稲でほぼ同じであった. ところが, 非深水条件下ではアフリカ稲, アジア稲ともに深水条件下よりLEIの位置が高くなっており, その差はアジア稲では1節間以内であったのに対し, アフリカ稲では1.1~3.0節間であった. また, アフリカ稲ではLEIの伸長程度がアジア稲より小さく, 全品種の平均値はアジア稲の約1/3で, さらにLEIの上位の節間も短かった. 以上の結果から, アフリカ稲の浮稲はアジア稲の浮稲より水条件に対する適応性が大きいことが示唆された.
  • 前田 英三, 三宅 博
    1997 年66 巻2 号 p. 307-317
    発行日: 1997/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    パチョリの若い葉の組織と腺器官を, 光学顕微鏡と透過型電子顕微鏡で研究した.葉の向軸側と背軸側の表面に分泌腺毛が観察された. 柵状組織内の大きい細胞間隙に, 分泌細胞や分泌物などをもった特殊な形態の腺器官が見られた. この腺器官の近くに維管束鞘や導管細胞, 篩管細胞, 形態的に特異な構造をもった異形細胞などを確認した. この異形細胞は多数のミトコンドリアを含むが, 大きな液胞を含まず, その細胞壁の一部に著しく分枝した原形質連絡が局在していた. この原形質連絡は篩管細胞や維管束鞘細胞の細胞壁内を通過していた. これらの観察結果に基づき, 葉肉組織内分泌腺と小維管束の維管束鞘細胞や異形細胞との関係を, その配置と機能に着目して論議した.
  • 渡邊 肇, 高橋 清
    1997 年66 巻2 号 p. 318-324
    発行日: 1997/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    「MC個体」とはその苗条が鞘葉と中茎からなり第1葉以降の葉が鞘葉内に包まれて出葉せず, その後の発育が外見上停止する生育型である. MC個体と非MC個体の出現に及ぼす各種植物生長調節剤の影響を調査した. 使用した生長調節剤は, ジベレリンA3 (GA3), オーキシン(IAA), アブシジン酸 (ABA), エチレン (ET), カイネチン (KIN), ブラシノライド (BR), フルリドン (Flu) の7種である. 種子を消毒後, 生長調節剤を含む0.8%寒天培地に置床し, 30℃, 完全暗条件下で14日間無菌培養した. 使用した生長調節剤の中で, ABAとBRがMC個体の出現を促した. 一方, カロチノイドの生合成を阻害することによってABAの生合成を阻害するFluはMC個体の出現を顕著に抑制した. Flu処理により, 葉の伸長が促進され, 逆に中茎の伸長は阻害された. さらに, ABAとFluを併用処理した場合, ABAの作用が打ち消された. 以上の結果, MC個体の出現は内生ABAレベルによって調節されると考えられ, さらにFluはABAの生合成のみならずその作用に影響を及ぼしてMC個体の出現を抑制するものと考えられる.
  • 宮崎 彰, 徳田 眞二, 懸 和一, 窪田 文武, 宋 祥甫
    1997 年66 巻2 号 p. 325-326
    発行日: 1997/06/05
    公開日: 2008/02/14
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  • 山下 正隆, 武弓 利雄, 佐波 哲治
    1997 年66 巻2 号 p. 327-328
    発行日: 1997/06/05
    公開日: 2008/02/14
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  • 江原 宏, 駒田 周昌, 後藤 正和, 森田 脩
    1997 年66 巻2 号 p. 329-330
    発行日: 1997/06/05
    公開日: 2008/02/14
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  • 中元 朋実
    1997 年66 巻2 号 p. 331-332
    発行日: 1997/06/05
    公開日: 2008/02/14
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  • 孫 太権, TOTOK Agung Dwi Haryanto, 吉田 智彦
    1997 年66 巻2 号 p. 333-334
    発行日: 1997/06/05
    公開日: 2008/02/14
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  • 井上 吉雄
    1997 年66 巻2 号 p. 335-344
    発行日: 1997/06/05
    公開日: 2008/02/14
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