日本作物学会紀事
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生長, 光合成, 窒素吸収及ぴ遊離アミノ酸蓄積からみた茶樹の適正窒素施用量
岡野 邦夫忠谷 浩司松尾 喜義
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1997 年 66 巻 2 号 p. 279-287

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抄録
新芽品質向上に有効な窒素施用量の限界値や生理障害が発現する施用量を明らかにする目的で, 様々な窒素施用条件下における幼茶樹の生理反応を調べた. ポット当たり年間200mgの窒素施用量を基準の1N区 (10a当たり年間10kgNに相当) とし, 0N~27N区までの処理区を硫安を用いて設定した. 3N区以下では窒素欠乏症状が見られたが, 6N区~12N区にかけては光合成活性は高く, 個体や新芽の生育は良好であった. 葉の褐変や光合成活性の低下は15N区以上で発現した. 18N区以上では落葉, 根の呼吸活性低下, 一部個体の枯死等が観察された. これらより生長や収量からみた最適レベル (critical level) は6N区と判断された. 茶樹による窒素吸収量は施用量の増大につれて増加したが, 吸収能力は次第に飽和した. 施用窒素の吸収率は施用量の増大につれて直線的に低下した. 一番茶新芽の遊離アミノ酸濃度は, 窒素施用量の増大に伴って上昇を続けた. しかし窒素多肥区では新芽生育が阻害されたため, 新芽中に蓄積した遊離アミノ酸量は9N区~15N区で最高となった. これらより新芽品質からみた最適レベルは12N区前後と判断された. 新芽中のテアニン濃度は9N区まで上昇したが, それ以上の多肥区では大量のアルギニンが集積し, 窒素代謝の異常が推察された. 以上より, 新芽品質からみた窒素の最適レベルは樹体に生理障害が発現する直前のレベルであり, 生長や収量からみた最適レベルの2倍近い値であると考えられる.
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