抄録
パチョリの若い葉の組織と腺器官を, 光学顕微鏡と透過型電子顕微鏡で研究した.葉の向軸側と背軸側の表面に分泌腺毛が観察された. 柵状組織内の大きい細胞間隙に, 分泌細胞や分泌物などをもった特殊な形態の腺器官が見られた. この腺器官の近くに維管束鞘や導管細胞, 篩管細胞, 形態的に特異な構造をもった異形細胞などを確認した. この異形細胞は多数のミトコンドリアを含むが, 大きな液胞を含まず, その細胞壁の一部に著しく分枝した原形質連絡が局在していた. この原形質連絡は篩管細胞や維管束鞘細胞の細胞壁内を通過していた. これらの観察結果に基づき, 葉肉組織内分泌腺と小維管束の維管束鞘細胞や異形細胞との関係を, その配置と機能に着目して論議した.