日本作物学会紀事
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イネの「MC個体」の出現に及ぼす各種生長調節物質の影響
渡邊 肇高橋 清
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1997 年 66 巻 2 号 p. 318-324

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抄録

「MC個体」とはその苗条が鞘葉と中茎からなり第1葉以降の葉が鞘葉内に包まれて出葉せず, その後の発育が外見上停止する生育型である. MC個体と非MC個体の出現に及ぼす各種植物生長調節剤の影響を調査した. 使用した生長調節剤は, ジベレリンA3 (GA3), オーキシン(IAA), アブシジン酸 (ABA), エチレン (ET), カイネチン (KIN), ブラシノライド (BR), フルリドン (Flu) の7種である. 種子を消毒後, 生長調節剤を含む0.8%寒天培地に置床し, 30℃, 完全暗条件下で14日間無菌培養した. 使用した生長調節剤の中で, ABAとBRがMC個体の出現を促した. 一方, カロチノイドの生合成を阻害することによってABAの生合成を阻害するFluはMC個体の出現を顕著に抑制した. Flu処理により, 葉の伸長が促進され, 逆に中茎の伸長は阻害された. さらに, ABAとFluを併用処理した場合, ABAの作用が打ち消された. 以上の結果, MC個体の出現は内生ABAレベルによって調節されると考えられ, さらにFluはABAの生合成のみならずその作用に影響を及ぼしてMC個体の出現を抑制するものと考えられる.

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