抄録
イネの反足細胞は開花前に, 裂片状の部分をもつ大きな核と多くの細胞壁突起をもっている. 同心円環状の小胞体の存在が, その細胞質の特徴である. 同心円状小胞体の中心には, 細胞質の一部やプラスチドが見られる. また環状構造の内腔は, ときに小さな接合部で融合している. 開花後に小胞体が多くの小片となることから, 開花すなわち受精の前後で小胞体の構造が顕著に変化すると考えられる. 胚嚢内中心細胞に近い反足細胞の細胞質内, およびその細胞壁に接して内腔の肥大した小胞体切片の見られることから, 反足細胞から中心細胞への物質転流機構に対する小胞体の関与が推測された.