日本作物学会紀事
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米の理化学的特性における年次間および産地間変動
今林 惣一郎尾形 武文松江 勇次
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1998 年 67 巻 1 号 p. 30-35

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抄録
米の理化学的特性値の年次間および産地間変動を明らかにし, その変動要因を検討した.年次間と品種間の分散成分の値を比較するとアミロース含有率, 最高粘度およびH/A3では年次間の分散の方が品種間の分散より小さく, 逆に, タンパク質含有率, ブレークダウンおよびH/-Hは年次間の分散が品種間の分散より大きかった.年次間の変動は, アミログラム特性およびアミロース含有率は登熟温度の影響が大きかったが, テクスチャー特性は登熟温度以外の影響が考えられた.理化学的特性値からは1994年の食味が良かったと推察された.また, 米の理化学的特性の年次間変動の大小には品種間差が認められた.同一品種を用いて理化学的特性における産地間の変動をみると, テクスチャー特性のH/A3, H/-Hとタンパク質含有率は産地による変動が大きかった.一方, アミロース含有率およびアミログラム特性は, 産地による変動が小さかった.テクスチャー特性の変動が大きかった要因として, 窒素施用量の違いによるタンパク質含有率の変動によってテクスチャー特性が大きく影響を受けたことが考えられた.アミロース含有率およびアミログラム特性の産地間の変動が小さかった要因としては, これらの形質が作期が大きく異ならない場合においては栽培環境受験よりも品種固有の遺伝的特性に強く支配されているためと考えられた.
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