2009 年 24 巻 2 号 p. 235-239
[目的]立位への杖が与える影響を解析するための基礎的研究として,高齢者疑似体験装具による重心動揺の変化を検討した。[対象]健常成人15名,男性10名・女性5名,平均年齢40.4±5.9歳(31~51歳)であった。[方法]重心動揺測定には,酒井医療株式会社製平衡機能計Active Balancerを用い,装具なし杖なし条件,装具あり杖なし条件,装具あり杖あり条件の3条件で測定した。[結果]装具装着により,総軌跡長・単位軌跡長・外周面積・矩形面積の増大,前後の動揺平均中心変位・左右および前後動揺標準偏差の増大が認められた。さらに,杖を使用することによって,重心動揺位置を前方に維持した状態で,重心動揺を減少する結果が得られた。[結語]これらの結果,体幹および股・膝屈曲を呈した高齢者の立位における重心動揺は,非高齢健常者より前方に重心が変位し,動揺が速く大きくなるが,杖を使用すると動揺は非高齢健常者と同程度に減少することが示唆された。