抄録
中生品種タチスズナリを供試して圃場栽培を行った.開花前後の8週間について, 1週間ずつの短期遮光処理(遮光率89%)を行い, 各処理区の花蕾数と結莢率を調査した.開花前28~15日の遮光は低次位(0・1次花房)花蕾数を減少させ, 開花後1~21日の遮光は高次位(2次以上の花房)花蕾数を減少させた.したがって, 低次位花蕾数は生育初期の比較的短期間に決まるのに対し, 高次位花蕾数は開花後の栄養条件に応じて, シンク容量を調節する役割をもつと考えられた.結莢率は高次位花房の花蕾に比べ, 低次位花房で高かった.生育初期の遮光処理(開花前28~15日)では花蕾数の減少を補償するため結莢率は高まったのに対し, それ以降の遮光はいずれの時期でも脱落を促進し, 低次位・高次位花房ともに結莢率を低下させた.すなわち, 開花後のみならず開花前の栄養条件は開花後の花器脱落に影響することがわかった.さらに, 開花前30~10日と開花後20日間に3段階の遮光処理を行い, 花蕾数と乾物生産の関係を検討した.遮光率が高くなるに従って, 開花前の処理は低次位花房花蕾数を, 開花後の処理は高次位花房花蕾数を減少させた.NARと花蕾数の間には密接な正の相関関係が認められ, NARの低下に従って花蕾数が減少したことが推察された.花蕾数をより多く確保するためには, 初期生育を旺盛にして低次位花房花蕾数を増加させ, 開花期以降も高いNARを維持することにより高次位花器の分化・発育を促進することが重要と考えられた.