日本作物学会紀事
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北部九州における水稲湛水直播栽培に関する研究 : 良食味品種の耐倒伏性に関する指標形質の評価
尾形 武文松江 勇次
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1998 年 67 巻 2 号 p. 159-164

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抄録
北部九州における水稲の湛水直播栽培用良食味食品種の育成・選定上の基礎的知見を得る目的で, 現在, 栽培されている良食味品種を用いて, 湛水直播栽培条件下での耐倒伏性に関与する指標形質について検討, 評価を行った.日本の良食味品種の倒伏関連形質は, 耐倒伏性が優れる日本品種およびアメリカ品種に比較して, 挫折重は小さく, 稈の太さおよび冠根の太さはやや細い傾向にあった.日本の良食味品種において, 1穂生体重と稈長および挫折重との間に, 稈の太さと挫折重との間にはそれぞれ正の有意な相関関係が認められ, 1穂生体重が重い品種では稈長が長く, 稈の強さを表す挫折重が大きいことを示した.一方, 稈長が長い品種では稈の太さが細く, 稈が太い品種では稈の強さを表す挫折重は大きいことを示した.6つの倒伏関連形質で主成分分析を行った結果, 第1主成分は稈の太さ, 挫折重および冠根の太さに関連するshape factor, 第2主成分は稈長や1穂生体重に関連するsize factorと考えられた.この第1主成分スコアと湛水直播栽培における倒伏程度との間には負の相関関係が認められたが, 第2主成分スコアと倒伏程度との間には相関関係は認められなかった.これらのことから, 北部九州において耐倒伏性を付与した湛水直播専用の良食味品種を育成・選定する場合において, 耐倒伏性を評価する指標形質として, 稈の太さ, 挫折重および冠根の太さが有効であることが明らかとなった.
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