日本作物学会紀事
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コムギ子実吸水における吸水時間と子実水分が発芽およびα-アミラーゼ活性に及ぼす影響
中津 智史
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1998 年 67 巻 2 号 p. 165-169

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抄録

チホクコムギ, ホロシリコムギ, 北系1354の休眠の消失した子実に, 吸水後の子実水分が20~45%に変異するように加水した.24時間および72時間後に, 発芽程度とα-アミラーゼ活性を調査した結果, 1)水分がおよそ25%以下では, 発芽およびα-アミラーゼの活性化はほとんど認められなかった.2)水分が25~30%でも発芽は認められなかったが, α-アミラーゼの活性化が認められた.3)子実水分30%以上においては, 吸水時間により反応は異なっていたが, 72時間吸水ではほとんどの子実が発芽し, 活性も高かった.4)一方, 24時間吸水では外見的な発芽が認められても, α-アミラーゼ活性が比較的低い子実が認められた.このように, 2), 4)においては発芽の有無とα-アミラーゼの活性化は必ずしも一致していなかったり, 4)の原因として, 子実は加水後急激に吸水するため, 発芽の兆候も早期から認められるのに対して, α-アミラーゼの生合成には時間を要するためと推測される.2)については, α-アミラーゼを活性化させる水分と発芽を誘導する水分に差があることが原因と推測される.最後に, 北系1354のα-アミラーゼ活性が他の2品種よりやや低い傾向が認められ, 吸水速度の品種間差の影響が示唆された.

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