日本作物学会紀事
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67 巻, 2 号
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  • 広瀬 竜郎, 大杉 立
    1998 年 67 巻 2 号 p. 129-135
    発行日: 1998/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    光合成産物の主要な輸送形態であるショ糖の転流機構に関わる研究は, 近年の分子生物学の発展とともに急速な進展をみせている.本稿ではショ糖転流の場である師部にショ糖が入る過程(ローディング), 師部から出る過程(アンローディング)およびその後のシンク細胞までの移動経路と, それぞれの過程で働く酵素, 輸送タンパク等に関して最近の知見をもとに概説した.
  • 上田 一好, 楠谷 彰人, 浅沼 興一郎, 一井 眞比古
    1998 年 67 巻 2 号 p. 136-142
    発行日: 1998/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    香川県における水稲の移植時期が生育に及ぼす影響を明らかにするために, 1992年から1995年にかけてキヌヒカリを3~4回の異なる時期に移植し, 初発分げつ迄日数, 出穂迄日数および登熟日数と気温との関係を検討した.初発分げつ迄日数(Y1)と移植後5日間の平均気温(X1)との間に次の式が成立した.Y1=197.35×e&lt:-0.170&gtl:X1(1)本式より, 移植後5日間の平均気温が16~17℃以下になると初発分げつ迄日数は急激に延長し, 12日以上を要するようになると予測された.この温度を香川県の平年値にあてはめると, 5月2半旬であった.出穂迄日数(Y2)と移植後30日間の平均気温(X2)および初発分げつ迄日数(X3)との間には次の式が成立した.Y2=-2.56X2+0.76X3+118.86(2)登熟日数(Y3)と出穂期後30日間の平均気温(X4)との間には次の式が成立した.Y3=-2.1X4+89.2(3)以上より, 香川県における安全移植時期は5月2半旬と推察された.また, 出穂期や成熟期はこれらの式[(2), (3)]を用いることにより, 簡単に予測できると考えられた.
  • 梅崎 輝尚, 津野 和宣
    1998 年 67 巻 2 号 p. 143-148
    発行日: 1998/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    近年, 環境保全や森林資源の保護を目的としたリサイクル活動が盛んである.回収された新聞古紙の利用方法の一つとして, 南九州地方の早期水稲栽培で新聞古紙によるマルチを試み, その効果について検討した.特に水田の地温の変化と雑草の防除に着目して, 1995年と1996年の2ヵ年にわたり宮崎大学農学部附属農場内の水田において, 品種コシヒカリを供試して栽培実験を行った.移植直後の水田では, 新聞古紙マルチ処理により昼間の地温上昇抑制効果と夜間の保温効果が認められた.また, 新聞古紙マルチ処理により雑草の発生は明らかに抑制され, 初期の除草剤との併用で全ての草種に対して充分な効果が見られた.新聞古紙マルチ処理により水稲の出穂期, 成熟期はやや遅れたが, 栄養生長量は増大して玄米収量は雑草の発生量が多かった対照区を約40%上回り, 慣行栽培と同程度かやや増収となった.これは, 分げつ数の確保ならびに個々の分げつの充実に伴う有効穂数の増加と一穂籾数の増加によるものと考えられた.なお, 水田表層の土壌窒素は新聞古紙マルチ処理により流失を押さえられることが推察され, 新聞古紙マルチ栽培体系の確立により効果的な水稲生産ができるものと考えられた.
  • 杜 冠華, 森 悦子, 寺尾 寛行, 続 栄治
    1998 年 67 巻 2 号 p. 149-152
    発行日: 1998/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    木酢液と木炭の混合物(木酢液1:木炭4, 以下サンネッカEと略称)の作物に対する作用機構を明らかにする目的のもとに, サツマイモ根の発達と地上部の生育に対するサンネッカEの影響を検討した.実検は1995年, 1996年の両年に行った.木酢液にサツマイモ幼苗を浸漬することによって発根が促進され, 根の乾物量が増大した.サンネッカEのサツマイモの生育に対する影響をポット栽培で検討したところ, サンネッカEの基肥施用はサツマイモの発根を増大させ, その活性を高め, チッソの吸収を促進させることが認められた.葉身のチッソ濃度および葉緑素含量が高まって, 光合成速度が増大し, その結果葉面積も拡大し, 地上部乾物重ならびに塊根重が増加した.以上の結果から, サンネッカEの作物に対する作用は作物の根の分化・発達を促し, チッソ吸収を促進し, 光合成速度と葉面積を増加させることによって基質(炭水化物)濃度を高め, 作物の生育に影響するものと考察した.
  • 大江 真道, 三本 弘乗
    1998 年 67 巻 2 号 p. 153-158
    発行日: 1998/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    深水処理は水稲の生育制御技術の一つとしておこなわれることがある.深水(30cm)処理を有効分げつ決定期から節間伸長開始期まで(A-1区), 出穂期まで(A-2区), 登熟中期まで(A-3区)と, 節間伸長始期から登熟中期まで(B区), 出穂期から登熟中期まで(C区)とした5処理区および常時5cmの水深とした対照区を設けて, 稈の生長と倒伏抵抗性に及ぼす影響を調査し, 生育制御に適した深水処理の時期と期間を検討した.A-1, A-2, A-3の各区では対照区と比較して穂数が減少することなく有効茎歩合の向上が認められ, また稈基部の伸長節間の直径の増大が認められた.しかし, 処理期間が長いA-2区, A-3区では, 破生通気腔の著しい発達と皮層繊維組織の薄くなったことが原因と思われる挫折強度の低下が認められた.B区では, 有効茎歩合, 収量構成要素に対照区との差は認められなかったが, 基部の節間において徒長と挫折強度の著しい低下が生じた.節間の挫折強度の低下は皮層繊維組織ならびに基本柔組織の厚さが対照区に比べて薄くなったこと, さらに基本柔組織内に破生通気腔の発達が著しかったことが原因と判断した.C区では草丈, 稈長, 穂長および稈の組織には処理による影響はみられなかった.これらの結果から, 有効分げつ決定期から節間伸長期までの深水処理は合理的な生育制御技術として導入できる可能性が高いと考えた.
  • 尾形 武文, 松江 勇次
    1998 年 67 巻 2 号 p. 159-164
    発行日: 1998/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    北部九州における水稲の湛水直播栽培用良食味食品種の育成・選定上の基礎的知見を得る目的で, 現在, 栽培されている良食味品種を用いて, 湛水直播栽培条件下での耐倒伏性に関与する指標形質について検討, 評価を行った.日本の良食味品種の倒伏関連形質は, 耐倒伏性が優れる日本品種およびアメリカ品種に比較して, 挫折重は小さく, 稈の太さおよび冠根の太さはやや細い傾向にあった.日本の良食味品種において, 1穂生体重と稈長および挫折重との間に, 稈の太さと挫折重との間にはそれぞれ正の有意な相関関係が認められ, 1穂生体重が重い品種では稈長が長く, 稈の強さを表す挫折重が大きいことを示した.一方, 稈長が長い品種では稈の太さが細く, 稈が太い品種では稈の強さを表す挫折重は大きいことを示した.6つの倒伏関連形質で主成分分析を行った結果, 第1主成分は稈の太さ, 挫折重および冠根の太さに関連するshape factor, 第2主成分は稈長や1穂生体重に関連するsize factorと考えられた.この第1主成分スコアと湛水直播栽培における倒伏程度との間には負の相関関係が認められたが, 第2主成分スコアと倒伏程度との間には相関関係は認められなかった.これらのことから, 北部九州において耐倒伏性を付与した湛水直播専用の良食味品種を育成・選定する場合において, 耐倒伏性を評価する指標形質として, 稈の太さ, 挫折重および冠根の太さが有効であることが明らかとなった.
  • 中津 智史
    1998 年 67 巻 2 号 p. 165-169
    発行日: 1998/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    チホクコムギ, ホロシリコムギ, 北系1354の休眠の消失した子実に, 吸水後の子実水分が20~45%に変異するように加水した.24時間および72時間後に, 発芽程度とα-アミラーゼ活性を調査した結果, 1)水分がおよそ25%以下では, 発芽およびα-アミラーゼの活性化はほとんど認められなかった.2)水分が25~30%でも発芽は認められなかったが, α-アミラーゼの活性化が認められた.3)子実水分30%以上においては, 吸水時間により反応は異なっていたが, 72時間吸水ではほとんどの子実が発芽し, 活性も高かった.4)一方, 24時間吸水では外見的な発芽が認められても, α-アミラーゼ活性が比較的低い子実が認められた.このように, 2), 4)においては発芽の有無とα-アミラーゼの活性化は必ずしも一致していなかったり, 4)の原因として, 子実は加水後急激に吸水するため, 発芽の兆候も早期から認められるのに対して, α-アミラーゼの生合成には時間を要するためと推測される.2)については, α-アミラーゼを活性化させる水分と発芽を誘導する水分に差があることが原因と推測される.最後に, 北系1354のα-アミラーゼ活性が他の2品種よりやや低い傾向が認められ, 吸水速度の品種間差の影響が示唆された.
  • 大里 久美, 浜地 勇次, 川村 富輝, 松江 勇次
    1998 年 67 巻 2 号 p. 170-173
    発行日: 1998/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    食味が日本晴以上の良食味水稲品種を対象とした食味試験の精度, 各パネル員ごとの識別能力や嗜好性解析した.16回行った食味試験ごとにパネル員を反復とみなした分散分析をすると, 総合評価と粘りはすべての試験において5%水準で品種間に有意な差が認められた.硬さは16回のうち6回は品種間に有意な差が認められず, 他の食味評価項目ほど品種間差を明確に識別できなかった.28名のパネル員ごとの分散分析によると, 食味の品種間差を5%, または10%の有意水準で識別できたのは15名, または19名であった.品種間差の識別能力が高いパネル員はコシヒカリと日本晴の判定の差が一般的に大きかった.各パネル員の総合評価値と全パネル員の総合評価値平均との間の相関係数をそのパネル員の嗜好性を表す指標とすると, 食味の識別能力が高いパネル員の嗜好性は全体での傾向と一致しており, 全体が平均的に良い, または不良と判定した品種を, 同様に良い, または不良と判定した.全体での傾向と異なる評価を高い精度で行うパネル員はいなかつた.
  • 浅野 紘臣, 磯部 勝孝, 坪木 良雄
    1998 年 67 巻 2 号 p. 174-177
    発行日: 1998/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    慣行栽培とアイガモ栽培(有機農法)により栽培された米の食味について官能試験により調査した.米の食味は, 総合評価ではアイガモ栽培米より慣行栽培米の食味が高いと判断された.その要因として, 慣行栽培米に比べてアイガモ栽培米はタンパク質含量が1%以上高いことが上げられる.しかし, 官能試験を行う前にアイガモ栽培米に関する幾つかの情報をパネルに伝えることによって, アイガモ栽培米の食味評価が若干高まった.言い換えれば, 米の情報を消費者に提供することによって, 消費者の米に対する評価が変化することを示唆していると思われた.
  • 吉田 智彦
    1998 年 67 巻 2 号 p. 178-182
    発行日: 1998/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    サツマイモ栽培上の問題の一つは種イモ貯蔵である.そこで種イモでなく, 真正種子集団由来の苗を利用することを想定し, それに適した栽培用の品種育成の可能性を探った.露地開花性を持つ真正種子集団の集団選抜をいくつかの農業形質について行った.低温発芽性, 苗の太さ, および直根肥大性について選抜したところ, 選抜集団ではこれらの形質の値は原集団より高く, 選抜による効果があることを認めた.真正種子集団由来の苗で栽培すると, 種イモ由来の苗の70~78%程度の塊根収量であった.また特定形質を持つ集団として, 蒸した塊根に甘みのないβ-アミラーゼ欠の集団を育成した.通常の畦立て栽培で, m2当たり144粒の採種ができた.農業形質について改良された真正種子集団は, 海外との遺伝資源交流を含めた育種材料としての利用のみならず, それを多量備蓄することにより救荒作物として利用する上でも有効と考えられる.
  • 林 高見, 鈴木 健策, 原 正紀
    1998 年 67 巻 2 号 p. 183-186
    発行日: 1998/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    開花期の低温条件が, ダイズの開花・結実に及ぼす影響を, 有限伸育型で成熟期群IVに属するエンレイ, オクシロメ, スズユタカについて検討した.開花始め4日後から2週間の低温処理(昼15℃, 夜13℃)を行い, 開花日別開花数および結莢率を調査した.エンレイでは, 低温処理による影響が顕著に現れ, 処理の開始とともに開花数が著しく減少し, 低温処理開始前後各2日間の花はほとんど結実しなかった.オクシロメでは, 低温処理の開始とともに開花数がやや減少する傾向を示したが, 結莢率は低下しなかった.スズユタカでは, 低温による影響はほとんどみられなかった.以上の結果から, エンレイはオクシロメやスズユタカよりも低温に弱いこと, 特に開花後に低温感受性の高まる時期のあることが示唆された.エンレイでは, 低温によって一時的に開花・結実が阻害されたが, その後, 低温処理期間中にもかかわらず結莢率が上昇した.
  • 梅崎 輝尚
    1998 年 67 巻 2 号 p. 187-192
    発行日: 1998/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    無限伸育型ダイズの節間の伸長経過と生育特性を明らかにするため, 宮崎大学農学部附属農場において3ヵ年にわたり栽培実験を行った.無限伸育型5品種を供試し, 有限伸育型品種と比較した.有限型伸育品種が開花後10日目までに主茎節間の伸長が止まったのに対して, 無限伸育型品種では開花後も約1ヶ月間にわたり主茎における出葉ならびに伸長が認められ, 主茎長, 主茎節数とも有限伸育型品種に比べて大きかった.主茎および主茎各節間はそれぞれS字カーブを描いて伸長し, 節間長は第1節間が比較的長く, 第3節間が短く, 第1節間を除く最長節間が主茎頂部から数節間となるパターンが無限伸育型品種においても確認された.また, 主茎節間には有限伸育型品種と同様に第N節間の伸長最盛期は第N+2葉期, 伸長停止期は弟N+4葉期で表される関係の存在することが明らかとなった.主茎の節間伸長に関する規則性や各器官と主茎の出葉との同伸性が伸育型にかかわらず普遍性を持つことから, ダイズの草型の制御には伸育型を問わずにこれらの規則性を活用することが可能であると考えられる.
  • 大段 秀記, 大門 弘幸
    1998 年 67 巻 2 号 p. 193-199
    発行日: 1998/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    マメ科緑肥作物として導入が試みられているCrotalaria junceaとC.pallidaの2種を供試して, 重窒素希釈法と差引法によって窒素固定量を試算し, さらに両種の地上部のすき込みならびに残存した地下部が後作コムギの窒素吸収に及ぼす影響を, 窒素分の少ない土壌を充填した1/5, 000aワグナーポットを用いた試験によって検討した.C.junceaの地上部の乾物重と全窒素含有量は, 播種後40日目には窒素無施用区(N-0区)と0.3gN/ポット施用区(N-3区)間で差異は認められなかったが, 播種後100日目ではN-3区で高かった.一方, C.pallidaでは, 播種後100日目では, 両区間に差異は認められず, 両種間における施肥窒素に対する反応性の違いが示された.全窒素含有量に占める固定窒素の割合は, 播種後100日目において, 両種ともに窒素施肥の有無に関わらず約90%と高く, 固定窒素への依存率が高いことが示された.両種の地上部をすき込んで生育させた後作コムギの窒素吸収量は, 窒素無施用区では, すき込みを行わなかった対照区よりも有意に高く, 両種間で比較するとC.pallida区がC.juncea区よりも高く, すき込み試料の特性の差異が示された.1.5gN/ポット施用区では, すき込み区と対照区との間に明確な差異は認められなかった.一方, 両種の地上部を刈り取り, 地下部のみが残存した土壌で栽培したコムギは, トウモロコシの地下部残存区に比べて高い窒素吸収量を示し, 両種間では地上部の生育が旺盛であったC.juncea区が明らかに優った.
  • 川崎 通夫, 松田 智明, 長南 信雄
    1998 年 67 巻 2 号 p. 200-207
    発行日: 1998/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    サトイモ球茎のプラスチドーアミロプラスト系におけるデンプンの蓄積過程とその微細構造的特徴を電子顕微鏡で観察した.走査電子顕微鏡観察によると, 肥大初期の球茎の髄部重柔細胞には, 伸長しているプラスチドやくびれ増殖中のプラスチドが数多く認められた.球茎の肥大に伴い, プラスチドは内部の大部分に複粒デンプンを含んでアミロプラスト化した.アミロプラストは部分的に肥大しながら次第に大型化し, その内部には小型で丸みのあるデンプン粒が集合して認められた.収穫期の球茎では, 長径20 μm前後のアミロプラストが数多く存在した.最大の長径40 μmのアミロプラストは, 推定4, 000個前後のデンプン粒を含有していた.個々のデンプン粒は極めて小さく, 直径1~3 μmであった.透過電子顕微鏡観察によると, プラスチド内部にはデンプン粒とデンプン粒周囲の低電子密度の部分から成る「デンプン領域」が形成された.ストロマはアミロプラスト内の周辺部に局在し, 収穫期に至るまでデンプン粒の形成はストロマ中で行われていた.これらのことから, サトイモのプラスチドーアミロプラスト系では, 個々のデンプン粒の全周囲がデンプン合成の「場」として機能していると推定された.また, アミロプラストは, アミロプラスト内周辺部のストロマにおいて継続的に新たなデンプン粒を形成し, 極めて数多くのデンプン粒を蓄積することが明らかになった.
  • 平野 貢, 杉山 美保子, 畠山 陽子, 黒田 栄喜, 村田 孝雄
    1998 年 67 巻 2 号 p. 208-215
    発行日: 1998/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    基肥窒素無施用・8葉期以降追肥と疎植の組合せ栽培に易分解性有機物として米糠を施用し, 水稲品種ひとめぼれの乾物重と葉身および茎における炭水化物代謝に及ぼす影響について, 標準栽培の対照区と比較検討した.収量は, 基肥窒素無施用-疎植区(BNo), 米糠120gm&lt:-2&gtl:施用区(RB1)および米糠240gm&lt:-2&gtl:施用区(RB2)とも650gm&lt:-2&gtl:以上の多収で, 対照区と変わり無かった.米糠施用区では面積当たり頴花数が増加したが, 登熟歩合は低下した.RB1における乾物重変化および葉身窒素含有量はBNoと大差なく, 米糠の影響は小さかった.RB2では幼穂形成期頃から葉身重および窒素含有量が大きくなり, 登熟期には窒素含有率および含有量とも対照区を上回った.全試験区において, 第II節間以上の茎上部とそれより下の茎下部では, 登熟期における乾物重の減少が茎下部で早かった.穂ばらみ期において, 対照区以外の疎植区では葉身および茎のショ糖含有率が大きかった.登熟期には葉身及び茎のショ糖含有率は登熟の進行とともに次第に大きくなり, 登熟中期に最大となった.可溶性全糖含有率の最大期はショ糖のそれより早かった.茎上部と茎下部のショ糖含有率は, 茎上部では区間差が小さく含有率の上昇も急であったが, 茎下部では区間差が大きく, 含有率が最大となる時期が茎上部より早かった.茎のデンプンは含有率および含有量とも対照区において他の区より明らかに小さかった.非構造性炭水化物の動きはデンプンのそれと類似していた.茎下部の非構造性炭水化物含有量は茎上部のそれより大きく, また動きも早かった.
  • 平井 源一, 奥村 俊勝, 竹内 史郎, 田中 修, 中條 博良
    1998 年 67 巻 2 号 p. 216-220
    発行日: 1998/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水稲幼植物を, 第3葉期から10日間, 気温28/24℃(昼/夜), 大気湿度を明条件(12時間)では75%, 暗条件(12時間)では60, 75, 90%として生育させた.暗条件を高湿度で経過した水稲は, 低湿度で経過したものより乾物生産量が大きく, 葉齢の進行, 草丈の伸長, 葉面積の増加が促進された.そこで, その原因を, 13Cトレーサ法を用い, 光合成量, 光合成産物の転流ならびに呼吸量から検討した.その結果, 高湿度の暗条件では, 光合成産物の最頂葉への転流量が多いこと, 暗条件を高湿度で経過すると体内水分含量が増加して光合成量が増加すること, 暗条件の湿度の違いによって個体当たり呼吸量には差が認められないことが明らかになった.したがって, 高湿度の暗条件での葉齢の進行, 草丈の伸長, 葉面積の増加の促進は, 個体当たりの光合成量が多くなることに加えて, 最頂葉への光合成産物の転流量が多いことに起因することが示唆された.以上の結果は, 暗条件の大気湿度が水稲の生育や発育に重要な役割を果たしていることを示している.
  • 佐川 了
    1998 年 67 巻 2 号 p. 221-225
    発行日: 1998/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ダイズ中・下位葉の光合成速度の品種間差異と子実収量について検討した.熟期の異なる16品種について, 主茎葉第5葉および第6葉の光合成速度を開花期, 着莢期および子実肥大期に團場の強日射条件下で測定した.各品種の中・下位葉の光合成速度は開花期で大きく, 着莢期から子実肥大期と次第に小さくなり, 熟期間では, 早生品種群, 中生品種群, 晩生品種群の順に大きかった.また, 早生品種群では着莢期および子実肥大期において, 中生品種群では着莢期において, 晩生品種群では開花期において有意な品種間差異が認められた.一方, 中・下位葉の光合成速度は個葉の葉面積とは負の, 比葉重とは正の相関を示したが, 葉色との関係は品種群あるいは測定時期によって異なり, 一定の傾向がみられなかった.また, 光合成速度と子実収量との間には, それぞれの品種群ではいずれの時期においても有意な相関は認められなかったが, 全品種をこみにしてみると, 着莢期および子実肥大期において負の相関が認められた.これは, 中・下位葉の光合成速度と茎葉繁茂量あるいは, 茎葉繁茂量と受光条件との関係が関与しているものと推察され, 中・下位葉の光合成速度と子実収量との関係を直接示したものではないと考察した.
  • 山本 晴彦, 早川 誠而, 岩谷 潔
    1998 年 67 巻 2 号 p. 226-232
    発行日: 1998/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    1997年台風9号に伴い山口県北部および島根県西部では7月26日から28日にかけて豪雨に見舞われた.むつみ村では, 7月26日~28日に582~782mmの降水を記録し, 7月27日の日降水量は429~547mmを観測した.本豪雨は, むつみ村の周辺に位置する気象庁の4カ所の観測地点を大きく上回る局地的豪雨であった.この影響により, むつみ村にある4カ所の農業用溜池が決壊して土砂災害が発生した.とくに, 麻生溜池では下流域に氾濫水や土砂が大量に流出して水田内に堆積したため, 水稲が埋没する被害が発生した.現地調査の結果, 土砂堆積深と地上部乾物重および玄米重との関係は2次曲線で近似でき, 地上部乾物重は土砂堆積深が50cm, 玄米重は35cmで重量がほぼ皆無になることが明らかになった.
  • 平 俊雄
    1998 年 67 巻 2 号 p. 233-235
    発行日: 1998/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水稲育種において少量の試料で迅速な分析による良食味系統選抜のため, 炊飯特性, 糊化特性および精米成分(アミロース, 精米窒素)と食味との関係, およびこれら理化学的形質の遺伝力について検討した.米の理化学的形質の中で70℃の水温での溶出固形物量および85℃の粘度は食味との相関が高く, 遺伝力も高かった.よって, これらの形質は水稲育種において良食味選抜のための有望な形質であると考えられる.
  • 今林 惣一郎, 尾形 武文
    1998 年 67 巻 2 号 p. 236-240
    発行日: 1998/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    極早生の水稲良食味品種を供し, 穂発芽性の品種間差異や栽培環境条件が異なる場合の穂発芽の発生程度, また試発芽とαーアミラーゼ活性と相関が高いとされるフォーリングナンバー値との関係を明らかにした.穂発芽性には明らかに品種間差がみられ, 各移植時期とも採穂時期にかかわらず, コシヒカリに比べてミネアサヒやキヌヒカリは穂発芽率が高く, 穂発芽性は'易'であった.穂発芽性'易'の両品種間にも差がみられ, ミネアサヒに比べてキヌヒカリは成熟期前の穂発芽率は低いが, 成熟期以降になると高くなる傾向がみられた.立毛中における穂発芽の発生は各品種とも普通期栽培に比べて早期栽培が, また倒伏程度が大きくなるほど多くなった.フォーリングナンバー値は浸漬による穂発芽処理が長くなるほど低くなる傾向がみられ, この値は水稲においても穂発芽程度を推定する尺度となることが示唆された.
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