水稲幼植物を, 第3葉期から10日間, 気温28/24℃(昼/夜), 大気湿度を明条件(12時間)では75%, 暗条件(12時間)では60, 75, 90%として生育させた.暗条件を高湿度で経過した水稲は, 低湿度で経過したものより乾物生産量が大きく, 葉齢の進行, 草丈の伸長, 葉面積の増加が促進された.そこで, その原因を,
13Cトレーサ法を用い, 光合成量, 光合成産物の転流ならびに呼吸量から検討した.その結果, 高湿度の暗条件では, 光合成産物の最頂葉への転流量が多いこと, 暗条件を高湿度で経過すると体内水分含量が増加して光合成量が増加すること, 暗条件の湿度の違いによって個体当たり呼吸量には差が認められないことが明らかになった.したがって, 高湿度の暗条件での葉齢の進行, 草丈の伸長, 葉面積の増加の促進は, 個体当たりの光合成量が多くなることに加えて, 最頂葉への光合成産物の転流量が多いことに起因することが示唆された.以上の結果は, 暗条件の大気湿度が水稲の生育や発育に重要な役割を果たしていることを示している.
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