日本作物学会紀事
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出芽器内育苗法における乳苗の生長に及ぼす温度の影響
斎藤 満保後藤 雄佐
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1998 年 67 巻 3 号 p. 284-288

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抄録

乳苗を厳密に温度管理した出芽器内で育て, 育苗温度と苗生育との関係を調べ, 出芽器内育苗法の基準となる苗の生長を描いた.また, 低温条件から高温条件に変温する区を設け, 育苗初期に温度管理が不完全であった場合の対応を考察した.水稲品種ササニシキの芽の長さ0.3~1.0mmの催芽籾を, 粒状培土を詰めた塩化プロピレン製のカップ(直径7cm, 深さ3.7cm)に1ポット当たり20粒播種し, 十分な湿度を保った暗黒条件の蒸気出芽器で育苗した.吸水させた床土はあらかじめ暖めておき, 播種直後から設定温度となるようにした.出芽器内の温度を31℃に保つH区, 28℃のM区, 25℃のL区と, L区で2日間育苗した後H区に移すL2H区, およびL区で3日間育苗した後H区に移すL3H区との5区を設けた.草丈の伸長は温度が高い区ほど速く, H区では4日間で7.0cmとなり, 機械移植に必要な草丈6~7cmを越した.また, 播種後積算温度(CAT)と苗の生長の関係を調べた.CATが同じでも設定温度の高い区の方が草丈が高く, また葉の抽出も速く, 温度条件が異なる場合, 時間軸をCATに置き換えるだけで乳苗の生育を比較するのは適切ではないことが示された.育苗の途中でH区に移した場合の変温度の草丈は, 最初からH区で育苗した場合の伸び方とほぼ同様であることが示され, 変温前の低い温度の影響はほとんどないことが明かとなった.

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