日本作物学会紀事
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67 巻, 3 号
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  • 桃木 芳枝
    1998 年 67 巻 3 号 p. 273-283
    発行日: 1998/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
  • 斎藤 満保, 後藤 雄佐
    1998 年 67 巻 3 号 p. 284-288
    発行日: 1998/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    乳苗を厳密に温度管理した出芽器内で育て, 育苗温度と苗生育との関係を調べ, 出芽器内育苗法の基準となる苗の生長を描いた.また, 低温条件から高温条件に変温する区を設け, 育苗初期に温度管理が不完全であった場合の対応を考察した.水稲品種ササニシキの芽の長さ0.3~1.0mmの催芽籾を, 粒状培土を詰めた塩化プロピレン製のカップ(直径7cm, 深さ3.7cm)に1ポット当たり20粒播種し, 十分な湿度を保った暗黒条件の蒸気出芽器で育苗した.吸水させた床土はあらかじめ暖めておき, 播種直後から設定温度となるようにした.出芽器内の温度を31℃に保つH区, 28℃のM区, 25℃のL区と, L区で2日間育苗した後H区に移すL2H区, およびL区で3日間育苗した後H区に移すL3H区との5区を設けた.草丈の伸長は温度が高い区ほど速く, H区では4日間で7.0cmとなり, 機械移植に必要な草丈6~7cmを越した.また, 播種後積算温度(CAT)と苗の生長の関係を調べた.CATが同じでも設定温度の高い区の方が草丈が高く, また葉の抽出も速く, 温度条件が異なる場合, 時間軸をCATに置き換えるだけで乳苗の生育を比較するのは適切ではないことが示された.育苗の途中でH区に移した場合の変温度の草丈は, 最初からH区で育苗した場合の伸び方とほぼ同様であることが示され, 変温前の低い温度の影響はほとんどないことが明かとなった.
  • 上田 一好, 楠谷 彰人, 浅沼 興一郎, 一井 眞比古
    1998 年 67 巻 3 号 p. 289-296
    発行日: 1998/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    移植時期が水稲品種キヌヒカリの収量および食味に及ぼす影響を気象要因との関係から検討するとともに, 収量と食味の両面より最適移植期の推定を試みた.収量は, m2あたり総籾数と有意な正の相関関係を示した.m2あたり総籾数と出穂期前の日平均気温との間に有意な負の相関関係が認められた.収量(Y)と移植期から出穂期まで日平均気温(T1), 登熟期間の日平均気温(T2)および日平均日射量(S1)の3つの気象要因との間に次の式が成立した.Y=[-0.483(T2-22.936)2+74.838]S1-1.329T1・S1 また, この関係式より求めた推定収量と収量の実測値は近似した.アミロース含有率およびタンパク質含有率と登熟期間の日平均気温との間には, それぞれ有意な負の相関関係が認められた.これらの関係から, 平年における移植時期別収量と食味特性を推定した.その結果, 収量は4月上~中旬の移植で最高となり, 食味特性は5月中旬までの移植では大差は無いとみられたが, その後の移植では収量, 食味特性とも急激に低下していくと予想された.以上の結果と前報での安全移植時期(5月上旬)とを総合的に検討し, 香川県におけるキヌヒカリの最適移植期は5月上旬と判断した.
  • 磯部 勝孝, 浅野 紘臣, 坪木 良雄
    1998 年 67 巻 3 号 p. 297-301
    発行日: 1998/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    アイガモの放飼による除草効果や水稲の収量への影響を検討するとともに, 水稲の稈に対する影響を明らかにするため, 1994年と1996年に試験を行った.試験区は無処理区, アイガモ区, 慣行区の3区を設けた.アイガモ区は, 有機質肥料のみを施用し, アイガモを放飼した.無処理区は, アイガモ区の一部に金網を張ってアイガモの侵入を防止した.慣行区は, 化学肥料や農薬を使用して水稲栽培を行った.アイガモの放飼による除草効果は極めて大きく, 慣行区とほぼ同様の収量を得た.アイガモの放飼による除草効果が顕著であった理由は, アイガモの雑草摂食と水掻きにより土壌表面を撹拌したことと濁り水の効果によると思われた.1994年の結果では, 無処理区はアイガモ区に比べ雑草の発生が多く, 収量の低下が認められた.しかし, 1996年の結果では, 雑草の発生が少なくアイガモ区と慣行区では収量に差がなかった.このことからアイガモの放飼を続けると土壌中の雑草種子数の減少にともなって, 雑草の発生個体数が減少し水稲と雑草の競合が小さくなるものと考えられる.アイガモの放飼は, 水稲の稈の形質には影響をおよぼさなかった.しかし, 無処理区やアイガモ区の稈は, 肥料として有機質肥料を使用しているため, 慣行区に比べ第4, 第5節間が短く, 第3節間の短径が大く, 葉鞘付挫折モーメントや倒状指数も小さくなり, 慣行区に比べて耐倒状性が高まったものと思われた.
  • 山岸 順子, 松崎 昭夫
    1998 年 67 巻 3 号 p. 302-306
    発行日: 1998/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    東京大学農学部附属農場において, 1980年より, 瘠薄な心土を用いて造成された畑地の肥沃化過程に関する研究を, 表土(黒ボク土)との比較のもとに開始した.化学肥料の施用の有無と, それぞれに堆厩肥施用2段階および堆厩肥無施用区の計6処理区を表土区と心土区に設け, トウモロコシ-オオムギ-ダイズ-オオムギの2年4作の作付けを行った.化学肥料のみを施用した表土区を標準区として, 乾物収量の比較を行った.その結果, 化学肥料を施用した区においては, 表土区では収量に対する堆厩肥施用の効果は認められなかった.また, 心土区においてはトウモロコシの収量にはやや相加的な効果が認められたが, オオムギ・ダイズでは認められなかった.このことは, 堆厩肥の連用に伴う土壌中の有機物含量の増加が収量の増加に結びつき難いことを示しており, 堆厩肥の収量に対する効果という観点と環境負荷という観点からさらに検討する必要があると考えられた.また, 堆厩肥のみを施用した場合には, 表土区においても標準区と比較して低収量であり, 心土区においてはさらに低い収量であった.しかし, 試験の継続に伴って徐々に上昇し, 15年程度の連用で, 表土区においては堆厩肥少量施用でも, また, 瘠薄な心土区では多量施用により化学肥料施用区に匹敵する収量が得られるようになり, 心土区と表土区との差異が認められなくなることが明かとなった.
  • 王 桂云, 阿部 利徳, 笹原 健夫
    1998 年 67 巻 3 号 p. 307-311
    発行日: 1998/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    無農薬・無化学肥料栽培(有機栽培)および慣行栽培した水稲白米の全窒素・アミロース含量およびアミノ酸含量・組成を検討した.白米の全窒素含量は供試した2品種(コシヒカリ, ひとめぼれ)とも無農薬・無化学肥料栽培に比較して, 慣行栽培で有意に高くなった.しかし, アミロース含量は無農薬・無化学肥料栽培米と慣行栽培米とで2品種間に有意の差異が見られなかった.一方, 白米粉末のアミノ酸含量についてみると加水分解アミノ酸は, 慣行栽培の場合の全窒素含量の増加傾向を反映して, 検出できた16のアミノ酸はむしろ慣行栽培で高まる傾向を示した.遊離アミノ酸含量は加水分解アミノ酸含量の1/100ないしそれ以下であった.しかし, 遊離アミノ酸のうちアスパラギン酸, グルタミン酸, アスパラギン, グルタミンがコシヒカリおよびひとめぼれ2品種とも, 慣行栽培に比較して無農薬・無化学肥料栽培で有意に高くなった.以上の結果は, 無農薬・無化学肥料栽培で白米の窒素含量が低下し, 遊離のグルタミン酸, アスパラギン, グルタミン含量が増加することを示している.今後, これらの結果と炊飯米の食味との関係を検討する必要がある.
  • 松江 勇次, 尾形 武文
    1998 年 67 巻 3 号 p. 312-317
    発行日: 1998/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    コシヒカリとは違った味が良く総合評価の優れる品種の育成・選定および味に対する品質評価技術を確立するために, 水稲の主要な新旧品種を供試して, 粘り以外の味に着目して食味特性を比較検討した.新旧品種における総合評価は年次, 施肥量およびパネルが異なっても傾向は同じであったが, 数品種においてはパネルの違いによって総合評価が異なった.これはパネルの違いによる総合評価の良否に対する味の寄与度が違ったためと考えられた.全体として旧品種は新品種に比べて外観, 味が劣り, 粘りが弱く, 総合評価は劣った.しかし, 旧品種の中にも陸羽132号, 朝日のように味が良く, 総合評価の優れる品種が認められた.新旧品種をとおしてコシヒカリとの近縁係数と総合評価との間には有意な正の相関関係が認められ, コシヒカリと血縁関係が強い品種ほど総合評価は優れた.一方, コシヒカリと血縁関係が弱い品種(近縁係数0.5以下)のなかでも味が良く, 総合評価の優れる品種, 陸羽132号, 朝日, ササニシキ, どまんなか, チヨニシキ, 中生新千本, 吉備の華, 金南風が認められた.これらの知見は今後嗜好性を考慮したコシヒカリとは違った味の優れる水稲品種育成のための交配母本の選定にあたり有効な情報となりうるとともに, 味に関する成分の品質評価技術の確立のための有効な材料としての可能性を示唆するものであった.
  • 秋田 重誠, 尹 炳星, 椛木 信幸
    1998 年 67 巻 3 号 p. 318-322
    発行日: 1998/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    温帯北限地帯の水稲直播栽培を安定化するうえで不可欠な条件となる低温下かつ湛水土壌中での出芽性の品種による変異の大きさとその変異の機構を検討した.供試した158品種中18℃の湛水土壌中条件下で25%出芽率に達した品種は102であった.2%まで出芽しなかった56品種の大半はインド型品種および陸稲品種であった.インド型品種と日本型品種の出芽係数の頻度分布はインド型品種の場合は平均0.8と低い値であったのに対し, 日本型品種の場合は5.5であった.胚重の頻度分布は, インド型品種では最小0.28mg, 最大0.76mg, 平均は0.47mgであったのに対して日本型品種では最小0.41mg, 最大0.81mg, 平均0.60mgであった.18℃の湛水土壌中条件下での胚重と出芽係数の間には品種群ごとにみると正の相関が見られる場合もあったが, すべての品種を対象にすると胚重と出芽係数の間にほとんど相関が見られなかった.また, 農林6号, 上州などは胚がちいさいにもかかわらず高い出芽係数を示し搗精部分を低下させずに出芽を改良するという実用上の技術に未知を拓くものと考えられた.一方, 作期移動および再生稲を利用したコシヒカリ種子について胚重と低温・湛水土壌中からの出芽性の品種内変動について検討したところ胚重の変異は0.53-0.71mgの間にあったが出芽係数との相関は認められなかった.これらの結果から出芽は胚重以外の初期生長速度の差をもたらす要因による支配をかなり強く受けることが明らかとなった.
  • 道山 弘康, 林 久喜
    1998 年 67 巻 3 号 p. 323-330
    発行日: 1998/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    普通ソバの夏型品種と秋型品種を夏および秋の2時期に栽培して, 茎葉の発育および開花の進行の品種間差を調査した.いずれの品種も主茎の伸長は主茎本葉数3~4枚の出蕾期以降に盛んになり, 開花始頃が伸長の最盛期であった.開花始は秋型品種が夏型品種より, 夏栽培が秋栽培より遅かったが, あまり大きな違いではなかった.初花節位は宮崎在来の夏栽培が約2節高かった以外は品種, 栽培時期によって変化しなかった.夏型品種と秋型品種の生体の違いで最も顕著な点は, 開花始以降に起こる茎葉および花房の発育経過の違いであった.すなわち, 夏型品種は茎葉の生長および花房の発達が栽培時期にかかわず開花始後2週間程度で終了した.一方, 秋型品種は秋栽培では夏型品種と同様であるものの, 夏栽培では長期間継続した.このため, 秋型品種は夏栽培で茎長が著しく長く, 葉数および花房数が著しく多くなった.さらに, 生長が長期間継続する場合には上位花房への咲き上がりは2日に1花房で, 出葉も約2日に1枚の割合であり, 花房と葉の生長が同調的であった.しかし, 速やかに生長を終了する場合には, 花房の咲き上がりが1日に1花房の速度で出葉より速く, 生殖生長が栄養生長より速やかに進行することが明らかになった.
  • 中野 敬之, 大場 正明
    1998 年 67 巻 3 号 p. 331-336
    発行日: 1998/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    中, 低級茶の価格が低迷しているため, 上級茶の原材料である一番茶の良質・多収化が益々重要になっている.そこで, 一番茶を多収にする前年二番茶の収穫方法を明らかにするため, 二番茶収穫の時期と摘採位置が翌年一番茶に及ぼす影響を三番茶不摘採園において調査した.その結果, 二番茶を早期に収穫すると, 翌年一番茶は新芽数が減少し, 減収した.また二番茶の摘採位置が高いと.翌年一番茶は新芽数が少なく, 生育が遅れて減収した.収穫時期および摘採位置の交互作用については, 早期に摘採位置を上げて二番茶を収穫すると秋に徒長枝と着蕾数が増加したが, 翌年一番茶への影響は認められなかった.三番茶不摘採園では, 新芽数が少ないことが一番茶の減収要因になりやすいので, 二番茶を晩期に摘採位置を低く収穫した方が翌年一番茶の増収をもたらすと結論された.
  • 齊藤 邦行, 木村 麻奈, 黒田 俊郎
    1998 年 67 巻 3 号 p. 337-341
    発行日: 1998/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ダイズのシンク形成過程における花蕾数と結莢率の変動を明らかにするため, 圃場栽培した個体の特定節位に着目して(主茎第12節), 開花始に第12節直上で摘心し, 第11節以下すべての複葉, 葉柄, 花器を切除した孤立区を設け, その後の開花・結実課程を対照区と比較した.孤立処理により花蕾の分化・発育が助長されて開花時間は延長し, 花蕾数は対照区の10に対して, 36と多くなった.花蕾数の増加は, 孤立区で7次花房まで花蕾の分化・発育が促進されたことに加えて, 高次位花房のうち複葉を伴う椏枝の節数が増加したことに起因した.結莢率は処理直後に開花した1次花房で対照区48%に比べて孤立区76%と高くなったが, 高次位花房では明かな相違は認められなかった.その結果, 孤立区では莢数, 100粒重が大きくなり, 子実収量は対照区の3倍近くになった.以上の結果, 各節は潜在的に通常栽培条件下の3倍以上の花蕾を着生する能力をもち, これには椏枝の発生が重要な役割をもつこと, さらに, 開花数が決定している1次花房では結莢率の向上により莢数が増加したが, 高次位花房の結莢率は顕著には高まらなかったことから, ダイズのシンク調節機能においては結莢率よりも花蕾数の方が優先することが明らかになった.
  • 山田 克彦
    1998 年 67 巻 3 号 p. 342-346
    発行日: 1998/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    正常な外観と発芽能力を有しているにもかかわらず, 麦芽にした場合品質が劣るビール大麦が散見される場合がある.その様な大麦の中に, 殻皮を硫酸処理により除去し, アミドブラック溶液に浸すことにより, 糊粉層が青黒く染色されるものがある.同染色部位は, 走査型電子顕微鏡で観察すると, 糊粉層細胞表層が剥ぎ取られハニカム構造をしており, この様な大麦の糊粉層はジベレリンに対する感受性が低下していた.このことから, アミドブラックによる染色法が糊粉層異常粒の検出法として利用できるものと考えられた.
  • 磯部 勝孝, 坪木 良雄
    1998 年 67 巻 3 号 p. 347-352
    発行日: 1998/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    種々のイネ科・マメ科作物のアーバスキュラー菌根菌接種による生育促進について比較検討を行うとともに, 根の形態およびリン吸収の関係について考察した.実験に供試した作物は, オカボ, コムギ, ソルゴー, オオムギ, シコクビエ, インゲンマメ, シロクローバー, ササゲ, アズキ, ダイズの10種である.調査項目は, 1.アーバスキュラー菌根菌の宿主作物への生育促進効果の違い, 2.根の形態, 3.生育に必要な土壌中の有効態リン含有量である.アーバスキュラー菌根菌の接種による宿主への生育促進効果は, イネ科作物よりマメ科作物のほうが顕著であった.また, イネ科作物はマメ科に作物に比べ, 土壌有効態リン含有量が低くても十分な生育を示した.これは, イネ科作物が, マメ科作物に比べ根毛が発達し, 地上部乾物重に対する根長が大きくリン吸収に有利な根系を有し, 低リン下でも高いリン吸収能を示すため, アーバスキュラー菌根菌の感染による宿主作物の生育促進が小さかったと考えられる.又, マメ科作物のほうがアーバスキュラー菌根菌による生育促進効果が著しいのは, アーバスキュラー菌根菌感染率が高いこともひとつの理由と推察された.これらのことから, イネ科作物とマメ科作物を比較した場合, マメ科作物のほうがアーバスキュラー菌根菌の利用価値が高いと言える.
  • 森田 茂紀, 豊田 正範
    1998 年 67 巻 3 号 p. 353-357
    発行日: 1998/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    メキシコ合衆国バハ・カリフォルニア州のゲレロ・ネグロにおいて, 日本政府とメキシコ政府の共同事業としてメキシコ沙漠地域農業開発プロジェクト(以下, プロジェクト)が実施されている.プロジェクトの目的は, 沙漠地域において点滴灌漑を用いて野菜および果樹を栽培するための技術の開発および移転にある.この目的を十分に達成するために, プロジェクトで最も重要な作物であるトウガラシとメロンの根系の形態を, 収穫期に調査した.その結果, 露地栽培のトウガラシの場合は, 根長密度が土壌表面から深くなるにつれて緩やかに減少し, 深さ20cm以下で急激に小さくなっていたが, 条直下と条間の根長密度の差は小さかった.畝立マルチ栽培のメロンの場合は, 畝の中の根長密度がかなり大きく, 畝の外では小さかった.主根から形成された側根には, 線虫の被害と考えられる多数のコブが認められた.次に, 根系形態に及ぼす点滴灌漑の影響を検討するため, 点滴チューブが配置された側と反対側における根長密度を比較した。その結果, トウガラシでは, 条の左右のいくつかの地点で, 根長密度に統計的に有意な差が認められた.一方, メロンではどの地点についても有意な差は認められなかったが, 根長密度の分布が部分的に非対称であった.以上のような根系分布の非対称性は, 点滴チューブの有無によるものと考えられる.なお, 予備調査の結果, 根長密度が高い部分で側根の形成が発達していること, とくに側根が長いことが示唆された.
  • 柏葉 晃一, 松田 智明, 大石 秀夫, 長南 信雄
    1998 年 67 巻 3 号 p. 358-365
    発行日: 1998/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    種子の発芽に伴う貯蔵物質の消費動態に関する微細構造的特徴を検討するため, 発芽器のインゲンマメ子葉柔細胞を走査電子顕微鏡と透過電子顕微鏡を併用して観察した.吸水に伴って最初に認められた微細構造的変化はタンパク顆粒からの液胞の形成であった.発芽初期の子葉柔細胞では直径5μm前後のタンパク顆粒の急速な減少に伴い多数の液胞が認められた.これらの液胞は互いに融合し, 大型の液胞を形成した.液胞の周囲には粗面小胞体(RER)の発達の電子密度の高い小胞が観察された.液胞の形成が進行した子葉柔細胞では, 電子密度の高い小胞の増加と中空な小胞が認められた.また, 発芽中期の子葉柔細胞ではアミロプラストの急速な小型化とともに, 新たなプラスチドの形成が認められた.プラスチドは小型のデンプン粒と内膜系を有していた.発芽後期になるとプラスチドのデンプン粒は消失し内膜系が発達した.以上の観察結果から, 発芽初期から発芽中期にタンパク質の消費が集中的に行われること, 大型の液胞の形成とRERの発達および中空の小胞の増加とが密接に関係していること, また, デンプンの消費は発芽中期から後期にかけて行われ, 新たなプラスチドの形成が認められることが明らかになった.
  • 佐川 了
    1998 年 67 巻 3 号 p. 366-372
    発行日: 1998/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ダイズの子実収量と中・下位葉の光合成速度に及ぼす反射光の影響について, 異なる栽植密度で検討した.品種は「スズカリ」を用いた.栽植密度は14.3本m-2(10cm区), 9.5本m-2(15cm), 5.7本m-2(25cm)の3段階とした.反射光処理は畦間をりんごの着色管理用反射シートで覆うことによって行った.子実収量は15cm区および25cm区の反射光処理において増大した.それは下位節の莢数および粒数が反射光処理により有意に増加したことによるものであった.10cm区でも下位節は同様の傾向であったが, 明かな収量の増加は認められなかった.反射光処理による葉群中層の光環境の変化は, 各栽植密度とも株間では, 晴天日には認められなかったが, 曇天日にはわずかに反射光処理の光強度が大きかった.畦間では, 反射光処理によって晴天日, 曇天日とも光強度が増し, 栽植密度が小さいほど大きかった.反射光処理によって中・下位葉の光合成速度は老化による低下が抑制され, 栽植密度が小さいほどその効果が大きかった.反射光処理によって開花期-着莢期および着莢期-子実肥大期のCGRは大きくなる傾向が認められ, CGRの増加は主として開花期-着莢期はLAIに, 着莢期-子実肥大期はNARにそれぞれ関連していた.反射光処理による下位節の子実収量の増加は, 着莢期のLAIの確保と, その後のNARの低下を抑制したことが要因であると推察した.
  • 長屋 祐一, 安尾 正和, 谷山 鉄郎
    1998 年 67 巻 3 号 p. 373-378
    発行日: 1998/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    大気汚染の作物に対する不可視障害は, 見かけの光合成速度を低下させ, これが中心的な役割となり減収へ結びつくと考えられている.そこで, ムギ類4種合計67品種を供試し, 二酸化硫黄処理が見かけの光合成速度に及ぼす影響を種類別に評価した.穂ばらみ期後期の個体に二酸化硫黄を約2.6mg SO2m13(約1.0ppm)を含む空気で30分処理し, その後約30分間清浄な空気で置換した.この一連の操作における二酸化硫黄処理前, 処理中および処理後の光合成速度を連続測定した.二酸化硫黄によりすべてムギ類の光合成速度は低下し, その割合を示す阻害率はハダカムギ45.6%>コムギ38.6%>六条オオムギ31.5%>二条オオムギ28.4%の順に大きくなった.処理後光合成速度は徐々に増加したが, 処理前の値までは回復しなかった.処理前光合成速度に対する割合で示される回復率は, 種類, 品種による相違は小さく90%前後の値を示した.以上より二酸化硫黄の影響はムギ類の種類ごとに異なり, 特にハダカムギ光合成速度の阻害が著しいことがわかった.今後は二酸化硫黄に対する耐性がムギの種類や品種により異なる要因を解析する必要がある.
  • 尹 榮煥, 礒田 昭弘, 野島 博, 高崎 康夫
    1998 年 67 巻 3 号 p. 379-383
    発行日: 1998/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    Oryza glaberrima Steud.(アフリカイネ)とOryza sativa L.(アジアイネ)の出穂期以降の生育と転流の様相の違いを知ろうとした.O.glaberrima2系統とO.sativa2品種をポット栽培し, 出穂前から生育を調査した.出穂期から1週間ごとに45klux, 30℃に設定したグロースキャビネット内の同化箱で13CO2を1時間同化処理し, 植物体各部への13C分布割合を調べた.O.glaberrima2系統とO.sativa2品種の出穂期以降の生育で明かな違いは, O.glaberrimaの方が出穂期間が長いこと, 同じ葉位ではO.glaberrimaの方が葉の老化が速いこと, O.glaberrimaの方が出穂後の早い時期に穂への乾物の集積を終えることであった.穂への13C分布割合はO.glaberrimaでは出穂後1週目, O.sativaでは出穂後3~4週目に最高になり, 以降は成熟に向かうに従って低下した.このことはO.glaberrimaでは登熟の早い時期に穂重の増加が大きく, 以降は微増しかしないのに対し, O.sativaではもっと遅い時期まで穂重が増加するという穂への乾物集積の傾向をよく説明し, O.glaberrimaとO.sativaの穂への乾物集積の経過の違いを転流の面から裏付けているものと考えられた.
  • 荒瀬 輝夫, 井上 直人
    1998 年 67 巻 3 号 p. 384-391
    発行日: 1998/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    地下結実性を有する食用資源マメ科草本であるヤブマメを本邦各地から収集, 栽培して, その開花・結実習性の地理的変異について調べた.高緯度系統ほど開花まで日数は短かった.開花期間は高緯度地方産の系統で長く, 系統間の変異も大きかった.開花まで日数と開花期間長との間には高い負の相関が見られた.地上種子の千粒重は全系統平均22g, 地下種子では143gであり, 地上種子は種皮を傷つけると高い発芽率が得られたことから硬実であるのに対し, 地下種子は何ら処理を行わなくても高い発芽率であった.生育地の緯度と千粒重との関係は認められなかった.地下閉鎖果は高い確率で1莢当たり2粒となり, 千粒重が増大するとその出現率は上昇した.種子数および種子重で見た場合の地下種子の占める割合は, 生育地の緯度との相関が低く, その系統間のばらつきは低緯度系統ほど大きかった.
  • 荒瀬 輝夫, 井上 直人
    1998 年 67 巻 3 号 p. 392-400
    発行日: 1998/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ヤブマメの種子生産と生育地のミクロな環境との関係を調べるため, ミクロな環境を間接的に表すものとして植生と葉の外部形態(葉色, 葉面積, 毛茸の量, および葉枕の色)を取り上げた.葉の形態は変種分類の基準であるので, おわせて分類と種子生産との関連を調査した.生活型組成をもとに, 生育地のスタンドを序列化して分析し, 休眠型の組成からスタンドの遷移度(DS)を求めた.ヤブマメの生育地はDS=5~10というやや強度の撹乱状態に集中していた.生育型組成をもとに, スタンドのロゼット率を求めると, 0.15~0.30のスタンド多かった.ロゼット率と, 地上, 地下種子の千粒重との間には有意な負の相関が認められた.葉の色と形態と植生や種子生産との関連はほとんどなかった.葉の裏側は灰緑色で.毛茸の量が少なく, 葉枕が黒紫色の系統の地理的な偏在が認められ, これはウスバヤブマメの分布域に類似していた.したがって, 葉の形質は変種分類の基準となることが確かめられたが, 種子生産との関連が認められなかったので, 地下結実性の差異が2変種の特性である可能性は低いと考えられた.
  • 山本 晴彦, 本条 均, 鴨田 副也, 鈴木 義久, 早川 誠而
    1998 年 67 巻 3 号 p. 401-406
    発行日: 1998/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    紅藻類の葉緑体から抽出したフィコビリン色素蛋白質の一種であるフィコエリトリンを用いて, 感光によるフィコエリトリンの透過率の変化から作物個体群内の透過日射量を簡易に測定する方法について検討した.フィコエリトリン色素溶液は, 光合成有効放射域内の550~560nm付近に感光波長帯の最大域が認められた.外径22mm, 長さ100cmのアクリルパイプに幅15mmの受光窓を設け, これ以外は白色塗料で遮光処理を施し, フィコエリトリンを封入した.屋外での夏季と冬季の測定結果から, 管型日射計により測定した積算日射量の実測値とフィコエリトリンの透過率の間には高い正の相関関係が認められたが, 季節間で直線の傾きに大きな差異が生じた.人工光気象室で室内気温を10℃から5℃間隔で30℃まで設定し, フィコエリトリンの温度依存性について検討した結果, フィコエリトリンの透過率と積算日射量の関係は各温度ごとに2次曲線で近似でき, フィコエリトリン色素溶液の透過率と測定時間帯の気温の平均値を説明変数に用いて積算日射量を推定できることが明らかになった.この関係式を用いて屋外における作物個体群内に透過された日射量の積算値を推定したところ, 実測値と推定値はほぼ1:1のライン上に分布しており, 両者の間には高い相関関係が認められることが明らかになった.
  • 山田 良雄, 矢吹 駿一, 郷間 光安
    1998 年 67 巻 3 号 p. 407-409
    発行日: 1998/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水稲の育苗に先立って行う種子消毒の廃液が環境汚染の観点から問題となっている.そこで, 著者らは種子消毒を行ったフェニトロチオン(1000倍液)およびペフラゾエート・オキソリニック酸(200倍液)を含む廃液の希釈率を0, 2, 5, 10, 20倍(対照区は井戸水)として, 育苗箱床土に散布して処理する方法を検討した.出芽ユニットから出した際, 移植の際, およびポットならびに本田で栽培した際の生育と収量に関わる形質を比較したところ, 出芽には何ら影響は認められなかったが, 移植時までの生育において, 特に根の伸長抑制があり, 10倍以上の希釈が必要であった.実際の田植え機利用を考慮すると, 根のマットが十分に形成される20倍以上の希釈が好ましかった.また, 廃液による苗床時の悪影響は移植以降には解消した.さらに, 環境基本法での要監視項目にあるフェニトロチオンの濃度も基準値より十分に低くなることが推察された.
  • 平 俊雄
    1998 年 67 巻 3 号 p. 410-412
    発行日: 1998/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    米の食味評価の基準的な方法として食味官能検査があるが, パネルとして多くの人数を必要とし, 多数の試料の検査は難しく, 簡便で迅速に分析できる米の食味評価法が望まれている.水温70℃での炊飯特性および糊化特性における水温85℃での粘度は米の食味と関係があるとされ, これらの特性はこれまでより迅速な分析が可能であるが, 搗精歩合がこれらの特性に与える影響き明かではない.このため, イネ品種ひとめぼれを用い, 89%から93%までの搗精歩合において, 搗精歩合が水温70℃での炊飯特性および水温85℃での粘度の分析精度に与える影響を検討した.水温70℃での炊飯特性においては各搗精歩合の試料間に有意差がみられたが, 搗精歩合90%と91%との試料間差は小さく, 搗精歩合90%から91%の試料を用いることで精度よく分析できると考えられた.一方, 水温80℃での粘度においては搗精歩合89%から93%の試料間差は小さく, 分析精度へ与える搗精歩合の影響を考慮する必要はないと考えられた.
  • 平 俊雄
    1998 年 67 巻 3 号 p. 413-415
    発行日: 1998/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    精米窒素含有率と吸収率および溶出固形物量との関係が明かな水温を検討した.品種と吸収率, 溶出固形物量などとの関係では水温が65℃から75℃で品種間差が明かであるとされるが, 精米窒素含有率と吸収率および溶出固形物量との関係では80℃の水温で明かな関係がみられ, 品種と精米窒素含有率では吸水率や溶出固形物量と関係のある水温と異なった.
  • 津田 秀樹, 上松 淳一
    1998 年 67 巻 3 号 p. 416-418
    発行日: 1998/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    硫酸処理により剥皮した大麦粒をアミドブラック溶液に浸すことで, 簡単に糊粉層異常粒を判定できる方法が開発された.著者らは, 国産ビール大麦を栽培契約に基づき購入し, 製麦(麦芽製造)を行ってビール原料として使用しているが, 大麦外観による検査では, 糊粉層の異常までを検出することは困難である.このため, 時として食糧事務所による農産物検査で合格したビール大麦の中に, 製麦工程で胚乳内容物の分解不足を生じる大麦が見受けられる.1995年栃木県産大麦の中で, 殻皮の一部が剥がれた粒が散見されたが, 発芽試験には問題のなかった大麦について, アミドブラック染色法により糊粉層異常を検出したところ, 青黒く染色される粒が多量に見受けられた.著者らは現在, 同方法を実際のビール大麦受入業務に組み入れ, より良質のビール原料を入手するための手段として活用している.
  • 田辺 安一
    1998 年 67 巻 3 号 p. 419-424
    発行日: 1998/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
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