移植時期が水稲品種キヌヒカリの収量および食味に及ぼす影響を気象要因との関係から検討するとともに, 収量と食味の両面より最適移植期の推定を試みた.収量は, m2あたり総籾数と有意な正の相関関係を示した.m2あたり総籾数と出穂期前の日平均気温との間に有意な負の相関関係が認められた.収量(Y)と移植期から出穂期まで日平均気温(T1), 登熟期間の日平均気温(T2)および日平均日射量(S1)の3つの気象要因との間に次の式が成立した.Y=[-0.483(T2-22.936)2+74.838]S1-1.329T1・S1 また, この関係式より求めた推定収量と収量の実測値は近似した.アミロース含有率およびタンパク質含有率と登熟期間の日平均気温との間には, それぞれ有意な負の相関関係が認められた.これらの関係から, 平年における移植時期別収量と食味特性を推定した.その結果, 収量は4月上~中旬の移植で最高となり, 食味特性は5月中旬までの移植では大差は無いとみられたが, その後の移植では収量, 食味特性とも急激に低下していくと予想された.以上の結果と前報での安全移植時期(5月上旬)とを総合的に検討し, 香川県におけるキヌヒカリの最適移植期は5月上旬と判断した.