コシヒカリとは違った味が良く総合評価の優れる品種の育成・選定および味に対する品質評価技術を確立するために, 水稲の主要な新旧品種を供試して, 粘り以外の味に着目して食味特性を比較検討した.新旧品種における総合評価は年次, 施肥量およびパネルが異なっても傾向は同じであったが, 数品種においてはパネルの違いによって総合評価が異なった.これはパネルの違いによる総合評価の良否に対する味の寄与度が違ったためと考えられた.全体として旧品種は新品種に比べて外観, 味が劣り, 粘りが弱く, 総合評価は劣った.しかし, 旧品種の中にも陸羽132号, 朝日のように味が良く, 総合評価の優れる品種が認められた.新旧品種をとおしてコシヒカリとの近縁係数と総合評価との間には有意な正の相関関係が認められ, コシヒカリと血縁関係が強い品種ほど総合評価は優れた.一方, コシヒカリと血縁関係が弱い品種(近縁係数0.5以下)のなかでも味が良く, 総合評価の優れる品種, 陸羽132号, 朝日, ササニシキ, どまんなか, チヨニシキ, 中生新千本, 吉備の華, 金南風が認められた.これらの知見は今後嗜好性を考慮したコシヒカリとは違った味の優れる水稲品種育成のための交配母本の選定にあたり有効な情報となりうるとともに, 味に関する成分の品質評価技術の確立のための有効な材料としての可能性を示唆するものであった.