日本作物学会紀事
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低温・湛水土壌中下でのイネの出芽速度と胚重の関係
秋田 重誠尹 炳星椛木 信幸
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1998 年 67 巻 3 号 p. 318-322

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抄録

温帯北限地帯の水稲直播栽培を安定化するうえで不可欠な条件となる低温下かつ湛水土壌中での出芽性の品種による変異の大きさとその変異の機構を検討した.供試した158品種中18℃の湛水土壌中条件下で25%出芽率に達した品種は102であった.2%まで出芽しなかった56品種の大半はインド型品種および陸稲品種であった.インド型品種と日本型品種の出芽係数の頻度分布はインド型品種の場合は平均0.8と低い値であったのに対し, 日本型品種の場合は5.5であった.胚重の頻度分布は, インド型品種では最小0.28mg, 最大0.76mg, 平均は0.47mgであったのに対して日本型品種では最小0.41mg, 最大0.81mg, 平均0.60mgであった.18℃の湛水土壌中条件下での胚重と出芽係数の間には品種群ごとにみると正の相関が見られる場合もあったが, すべての品種を対象にすると胚重と出芽係数の間にほとんど相関が見られなかった.また, 農林6号, 上州などは胚がちいさいにもかかわらず高い出芽係数を示し搗精部分を低下させずに出芽を改良するという実用上の技術に未知を拓くものと考えられた.一方, 作期移動および再生稲を利用したコシヒカリ種子について胚重と低温・湛水土壌中からの出芽性の品種内変動について検討したところ胚重の変異は0.53-0.71mgの間にあったが出芽係数との相関は認められなかった.これらの結果から出芽は胚重以外の初期生長速度の差をもたらす要因による支配をかなり強く受けることが明らかとなった.

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