日本作物学会紀事
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普通ソバ(Fagopyrum esculentum Moench)の生長および発育における夏型品種と秋型品種の違い
道山 弘康林 久喜
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1998 年 67 巻 3 号 p. 323-330

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抄録

普通ソバの夏型品種と秋型品種を夏および秋の2時期に栽培して, 茎葉の発育および開花の進行の品種間差を調査した.いずれの品種も主茎の伸長は主茎本葉数3~4枚の出蕾期以降に盛んになり, 開花始頃が伸長の最盛期であった.開花始は秋型品種が夏型品種より, 夏栽培が秋栽培より遅かったが, あまり大きな違いではなかった.初花節位は宮崎在来の夏栽培が約2節高かった以外は品種, 栽培時期によって変化しなかった.夏型品種と秋型品種の生体の違いで最も顕著な点は, 開花始以降に起こる茎葉および花房の発育経過の違いであった.すなわち, 夏型品種は茎葉の生長および花房の発達が栽培時期にかかわず開花始後2週間程度で終了した.一方, 秋型品種は秋栽培では夏型品種と同様であるものの, 夏栽培では長期間継続した.このため, 秋型品種は夏栽培で茎長が著しく長く, 葉数および花房数が著しく多くなった.さらに, 生長が長期間継続する場合には上位花房への咲き上がりは2日に1花房で, 出葉も約2日に1枚の割合であり, 花房と葉の生長が同調的であった.しかし, 速やかに生長を終了する場合には, 花房の咲き上がりが1日に1花房の速度で出葉より速く, 生殖生長が栄養生長より速やかに進行することが明らかになった.

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